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グラスを置いた俺は、マスター…真吾(シンゴ)さんがビールをクイクイと飲み干していく様を眺める。
「ちょっと頼みがあって…」
「頼み?」
飲み干したグラスに、またビールをついでいく。
「商売さ、南区に絞ろうと思って」
その言葉に真吾さんの眉間にシワが寄り、グラスをテーブルにタンっ…と置いた。
「なんだ、東と西でトラブルか?」
俺は笑って、違うよと答える。
「ちょっと色々あってさ、しばらく回数減らそうと思って。
南区だけでやってけそうなんだ。この街上客多いし」
アンタもいるし?と笑うと、眉間のシワが取れる。
「それで前はそのまま家に帰れたんだけど、今日からはそうは行かなくなってさ。
できたら始発が動くまで、ここに居させて欲しいんだ」
まさか学園に深夜に帰るわけには行かない。
見舞いの時は朝方まで母についているから、帰るのは朝になると理事長にはお願いしてある。
学生が起き出す前には帰る、と約束させられたけど。
母が入院していることや、父親が居ないことはむやみに人に知られたくない、とお願いしてあるので、生徒が¨朝帰り¨をする現場を目撃されてはマズい。
もし目撃された場合は、事情を説明するように、と念押しされた。
身の上を話して同情されるのは、嫌だ。
だったら、¨朝帰り¨をするような奴として噂をされる方がマシ。
…まぁ、学園での俺の風貌から、そんな色づいた噂にはならないだろうが。
とりあえず理事長には、気をつけます、と答えておいた。
「それで出来たら、シャワーと寝床貸して?」
突然そんな事を頼みだす俺に、真吾さんは理由を問うこともせず…好きに使え、とそう言ってくれた。
ありがと、お礼を言って二回へ上がると、まず風呂にお湯をためるためにスイッチを押し、じーっとお湯の嵩が増していくのをただ眺める。
ほぼほぼたまった所で服を脱いで脱衣所に投げ、頭から暑いシャワーを浴びた。
ラブホで体を簡単にタオルで拭いただけ。まだ所々に残るこびりついた情事の後を、シャワーで流していく。
指を二本後ろに持っていき、そっとナカに埋めた。
「…っ…くっ…」
ローションがまだナカに残っているため、クチュ…っと音が鳴る。
ローションを掻き出し、シャワーで流す。
「…ふっ…ン…」
一通り洗い終わり、湯舟に身を沈めぼーっと天井を眺める。
シャワーだけで良かったのに、ちゃんと風呂に入れよ、と真吾さんに言われた。
疲れ取れないだろって。
俺はふいに、真吾さんと出会った瞬間を思い出す。
売春を初めて半月ぐらい経った頃だった。
俺はこの南区で客を取っていて、その日は朝からなんか気分がすぐれなかった。
だけど¨稼がなきゃ¨、と俺はいつものように客を待っていた。
八澤に言われたルールは、ゴムを1個一万で買わせること、だけだった。
だんだんと体調が悪化し、帰ろうか…と悩んでいると声をかけられる。
「君が…白夜だね?」
本名ではまずいと考え、自分で考えた¨白夜¨。
白川聖夜の一番上と、一番したをくっつけただけの、安直なネーミング。
「…はい」
声をかけてきたのは、25歳ぐらいの爽やかなサラリーマンだった。
今まで声をかけてきたのは自分の父ぐらいの年齢ばかり、だから俺はその若さに驚いた。
連れられるがままにラブホへと着き、行為に及ぶ。
若いだけに、今まで相手にしてきたどの客よりも激しく濃厚だった。
結局、6個分のゴムを使い、ラブホを出る。
少し歩いたところで財布を出す様子を見せない男に、俺は六万だ、と金を要求した。
さっきから、頭が痛い。吐き気もするし、熱い。
差し出した手の平に金が置かれる。見ると、たったの一万円。
「六万。払って」
睨みつけると、へらっと笑う。
「今そんだけしかないんだよね。別にいいじゃん?気持ちよかったでしょ?」
「はぁっ?!ふざけんな、払え!」
大きな声を出すと頭にガンガン響き、痛さにくっと眉を歪める。
「だから、今ないんだってば。いいじゃん、別に。
気持ちよかったでしょ?」
「言ったはずだ、1個一万だと。今すぐ払え!」
「うるさいなー。わめくなよ」
吐き気がする。
「だったら、とっとと払え!」
「ちっ。何だよ。お前だってあんあん喘いでよがってたじゃねぇか!
そんだけ喜ばしてやったんだから、こっちが金貰いたいぐらいだっつの!」
その言葉に、頭に血がのぼる。
小さい頃から数年、合気道をやっていた。
コイツを痛めつけ、金がなけりゃ時計でも何でも、金目のものを頂いてやろう─と、スーツの襟を掴み右手を繰り出そうとした──瞬間。
強い吐き気と、頭痛に目眩が襲う。
一瞬怯んだ俺を相手が逃すはずもなく──左頬に衝撃が走る。
そのまま後ろに倒れこんだ俺の腹に、また衝撃。
「うざ。なんだよ、生意気な」
「がっ…っ!」
ガン、ガンと体に衝撃が走る。
頭が痛い。吐き気がする。熱い。苦しい。
誰かの怒声、そしてなくなる衝撃。
肩を誰かに掴まれ、起こされる体。
誰だ…?
目を開けることも出来ない俺は、そのまま意識を失ったーー。
ガン、ガンと頭に響く痛みで目を覚ますと、そこはどこかの部屋だった。
ひとつ窓があるだけの、素っ気ない部屋。
簡易なベッドに寝かされていた俺は、無意識に体を起こす。
「…ぐっ…!」
全身の痛みに、うずくまる。そしてより一層頭の痛みが増した。
「起きたか?」
ガチャ…っとドアが開く音がしてそっちを向くと、体つきのいい、威圧感たっぷりの男がいた。
「寝てろ。殴られた上に熱もある」
その言葉に、意識を失う前の事を思い出す。
眉間にシワが寄り舌打ちをする俺に、湿布を見せる男。
「貼るから、服めくるぞ」
その言葉に否定する前に服を上げられる。
体に残っているはずの、赤い鬱血。それを見られ羞恥の感情が沸いた。
しかし目の前の男は気にする風でもなく、湿布を貼っていく。
「よし、終わり」
服をもとに戻し、男は俺を見てくる。
「名前は?」
「…白夜。」
「俺は真吾だ。手酷くやられてるお前を見てついつい助けちまった」
「…そりゃ、どうも。」
ただの喧嘩、だと思っている…のだろうか?
俺はふいっと男から視線をはずす。
「とりあえず、これ食えるか。余りもんでわりぃけど」
差し出されたのは、湯気がたちのぼるスープだった。
その優しい香りに誘われ、体をゆっくり起こし壁にもたれる。
スープを手に取り、一口含んだ。
「…っ…」
口の中を切っているのか、少ししみた。
口に広がるスープは優しい味がする。
誰かの手料理を食べたのは──久しぶりだ。
全部食べ終えた俺に、水の入ったグラスと粉薬を差し出す。
「飲んで寝てろ」
それだけ告げて、空になった食器を持って部屋を出ていった男を眺めてから、薬を口の中に入れ水で流し込む。
空になったグラスをベッド脇にあった小さいテーブルへ置いき、そして再びベッドに横になる。
…なんで、俺、素直に言うことを聞いてるんだろう。
初めて会った男なのに。
そう考えていると、だんだんと瞼が下りてくる。
そのまま俺は、素直に目を閉じた──…。
ふ…、と目が覚める。
一瞬、記憶が曖昧になるが、瞬時にここがどこで何があったか思い出す。
まだダルさが残るものの、前より頭がスッキリしていて、体の痛みもマシになっていた。
足元にあったパーカーから携帯を取り出し時刻を確認すると、10時。
意外なほど、寝入っていたようだ。
キョロキョロ…と辺りを見回し、とりあえずベッドから降りる。
ツキン…と腹が痛むものの、歩けなくはない。
ドアを開け、すぐ左に下に続く階段を見つけ、下に降りていくと二つのドア。
左側はトイレらしいので、右側のドアを開ける。
そこは、バーだった。
ふと左に人の気配を感じ視線を移すと、大きなソファからのそりと起き上がる人影。
「んぁ…?あぁ、起きたのか…」
起き上がったのは、真吾と名乗った男。
「調子は?」
んーっと伸びをして、立ち上がる。
こうやって見ると、背もやたら高い。
「…昨日よりは、マシ…」
そうか、とつぶやきカウンターへと入っていく。
ほらよ、とカウンターに置かれたのはホットココア。
「まぁ、座れ」
カウンター越しに前に座り、出されたココアを飲んでいると突然目の前に何かが投げられる。
それに目を止めた俺は、カップを持ったまま固まった。
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