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新入生歓迎会 4
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月日が経つのは早いもので、今日は新入生歓迎会。
体育館内に集まった生徒たちはザワザワとざわめいている。
生徒たちはみんなジャージを着用。もちろん、俺達生徒会役員もだ。
1年は錫色(スズイロ)、2年は墨色(スミイロ)、3年は紫黒(シコク)のジャージ。
グレーから黒へのグラデーションだ。学年が上がるにつれ、色が黒に近づく。
薄い灰色、濃い灰色、黒じゃダメなのかな。まぁ色の呼び方にこだわりのある学園だしな。
新入生歓迎会1日目は、俺が提案した鬼ごっこ。
挨拶のためにリュウが壇上へ立つと、黄色い悲鳴が上がった。
「静かに」
マイクを通して一言。騒ぎ声は一瞬にして止まった。
見事なもので。
「本日は新入生歓迎会第一日目。鬼ごっこを行う」
な、なんかアイツの口から¨鬼ごっこ¨なんてめちゃくちゃ違和感。
「内容を説明する。
2、3年が鬼、そして1年には逃げてもらう。
無事逃げきった1年には、景品を用意している。そして2、3年にも数多く1年を捕まえた1位から3位の者に景品が出る。
それから捕まった1年は、捕まえた者の要求に応えなければいけないからな。必死で逃げろ。
だが鬼は、無茶な要求はしないこと。いいな?」
みんな真剣にリュウの話を聞いている。
「次はルールだ。
制限時間は3時間。範囲は寮を除く、校内、校外。
裏庭や森林も範囲内だが、逃げ切った後終了時間を過ぎ10分以内に体育館に戻ってこなければ失格とする。行動範囲は加減しろ」
ここ、すんげぇ広いんだよ。探検ツアーしたら丸一日かかじゃね?ってぐらい。
だって森林あるんだぜ?ビックリ。
遠くに逃げた方が見つかる可能性は少ないが、それだとみんな奥に行く可能性がある。
10分で帰ってこなければならないとなると、そう遠くへは行けないはずだ。
あくまで鬼ごっこ。逃げる、追いかけるがないとつまらない。
「1年は、今朝配られた腕章をしているな?それを奪われた時点でアウトだ。
それから、各部屋、教室に施錠し中に立て篭もるのは、禁止。見つけ次第、失格にする。
そして鬼は誰かと協力し、複数で捕まえることは禁止。捕まえる際は1対1だ」
俺の左腕にも、エンジ色の腕章が巻かれてある。
立て篭もっちゃうのはズルイし、複数で捕まえに来られたら逃げ切れないからな。
「そして最後に、景品だが。
逃げ切った1年には、賞金10万円もしくは生徒会役員全員と学食で昼食を共にできる権利が与えられる」
その言葉に、1年から歓喜の声が上がる。
…後半の内容に歓声があがったのは、気のせいだろうか…。
「そして1年を多く捕まえた鬼に対しては、ひとつめは豪華客船クルーズの旅、ふたつめは1日生徒会役員になれる権利、みっつめは生徒会役員1名を指名しデートの権利が与えられる」
…ふたつめを言ったあたりから、2、3年から歓声があがった。
「静かに。
上位のものから、選ぶ権限がある。
捕まえた生徒への要求は、終了次第我々生徒会の前で行うこと。無茶な要求の場合は却下する。
以上だ」
説明を終えたリュウが壇上から降り、側で控えていた俺達の横に並んだ。
代わりに壇上には生徒指導の先生が立っていて、捕まればどうするかを説明中。
先生たちが見回りや捕まえられた1年の管理をしてくれることになってる。
「よく出来た内容とルールだ、白川」
「…どうも、ありがとうございます」
褒められた、のか?…うん、鬼ごっこなのにこんなに考えたのは初めてです。
「白川くん、そろそろ9時になるから、1年の列に戻っていいよ」
「あ、ハイ」
「頑張って逃げなよー、しろっち」
「頑張ります」
俺は舞台袖から下に降り亮平と純がいる場所へ戻ると亮平はやる気満々。
やっぱり賞金でゲームを買おうと張り切っていた。
「あと10秒でスタートだ」
先生の声がして、ザワザワと体育館内がざわめき始める。
「5、4、3、2、1…スタート!」
その声に、一斉に1年達が我先にと数ある出入口に向かって色んな方向に一目散に走り始める。
「俺は先行くぜっ!じゃーな!」
片手を上げて走り去る亮平。
「僕も行くね!」
亮平とは反対の方向へ純も走って行った。
鬼は5分後にスタートする。
特に急ぐわけでもなく、俺は空きはじめた右側の出入口へと進んだ。
まっすぐ行くと森林、左に行くと寮、右に行くと裏庭。
右に行くか。
軽く走り出し、裏庭へと入る。
《鬼共、スタート!》
設置されているスピーカーから鬼のスタートの合図が聞こえ、しばらく進んだところで俺は立ち止まる。
「なぁ。早く逃げないと捕まるぞ?」
さっきから、後ろをつけている人物に声をかけた。
体育館内にいるときから刺さるような視線感じてたんだよな。
「早く出てきたら?ーーー九条麻斗くん」
俺のその言葉に、茂みから出てきた生徒会会長親衛隊隊長。おー睨んでるね。
「ちょっと着いてきてよ」
めんどくさいなぁ、と思いつつもとりあえず九条の後についていくと、裏庭から外れたところにあるプレハブの建物の前に連れて来られた。
ドアを開けて、中に入るように促してくる。
九条を通り過ぎ中に入ると、後ろでガチャンと音がした。
「施錠し立て篭もると失格だぞ?」
「だから?」
鬼ごっこに参加する気はないみたいだな。
「ねぇ。今すぐ生徒会なんてやめてくれない?
本田様に近づくなんて、庶民の分際で目障りなんだよ」
いや、俺だってやめたいんだけどね?相楽先輩が許してくれないんだよね。
それにアイツになんて近づきたくもないんだけど。
なんて言い返そうもんならますますキレそうなので、ここは無言を通す。
「今日だって舞台の上で横に並んで話して…お前が特待生だから皆さん優しくしてくれてるだけってわかんないの?」
いやぁ、あの人たちは特待生だろうが気に入らなければ会話もしないだろう。
え、俺って気に入られてんの?自分で思って悲しくなる。
「聞いてるのっ?!」
なんの反応も返さないのが気に入らないのか、声を荒げ叫ぶ。
どうしようか、そう悩んでいるとコンコンっとドアを叩く音がした。
見回りの先生が来たのかなとも一瞬思ったが、九条の薄笑いと外からの声に違うと悟る。
「九条様、開けてください」
九条がドアを開けると、入ってくる4人のガタイのいい男たち。
ジャージの色が濃いグレーってことは、2年か。
一応言っておこう。
「協力し捕まえた場合は失格ですよ」
「今の状況わかってるの?」
いや、一応ね。勝手に決められたとはいえ生徒会役員だからさ。
まぁ、そろそろ誰か突っ掛かってくるだろうなぁとは思ってたんだよ。
相変わらず悪口と視線は絶えなかったし。コレ、所謂¨制裁¨ってやつ?
「やれ」
九条の声に、飛び掛かってくる男の数4人。ふはっ、少ね。
俺に勢いよく向かってきたパンチをヒョイッと避けると、次は左から蹴り。
しゃがんで交わし、両足で地を蹴って後に飛ぶ。
今まで俺がいた場所に、足が振り下ろされた。
あら、おしい!ってね。
「チィっ!避けんじゃねぇ!」
いやいや、避けなきゃ当たるし。当たったら痛いし。
つか、当てたきゃそっちが頑張れよ。
手を出してもいいんだが、後々面倒になりそうなのでひたすら避ける。
一発も当てれない先輩にたちに焦れてきたのか、
「なにしてんだよっ!早く始末しろっ」
キャンキャン吠えてうるさいよ、九条くん。
さすがにめんどくさくなってきたなぁ…。
……ちょっとだけ反撃するか。当てなきゃオッケーでしょ。
左から来る蹴りをしゃがんで交わした瞬間、相手の懐に素早く飛び込み、鼻先に拳…をっ。
「ひぃぁ…っ」
鼻先1cmでピタッと止める。目をひんむいて動きを止める先輩。ひぃぁって。マヌケだな。
「っテメ…!」
一瞬呆気にとられていたけどまた拳を突き出してきたのでそれを半回転してかわし、一歩離れて回し蹴りを放つ。
「う、あ…っ」
またしても顎下1cm。
そして足を降ろし、横から向かってきた先輩に裏拳…も寸止め、前方から来た先輩には急所を蹴り上げ…も寸止め。
まぁ、威嚇だな。軽く殺気を飛ばしたから、大人しくなってくれた。
「…終わりですか?じゃあ俺行きますね」
攻撃してくる気配の無い先輩たちにそう言うと、出入口にであるドアの前にいた九条が攻撃をしない先輩達に向かって吠えだした。
「なにやってんだ、お前達!早くやれよ!」
あー、うるさい。
足早に九条に近づき、じっと見つめた。
「なっ…なんだよ…!」
「喧嘩売ってくんのは勝手だけどさ?お前が一人で来い。
一人で喧嘩もできない奴がつっかかってくるな」
「…な、」
「次またこうやって来たら、遠慮なく潰すからな?」
それだけ言って固まった九条の横を通り鍵を開け外に出る。
幸いにも周辺に鬼の姿は無く、ホッとため息。
九条たちが出てくる気配はない。
これから先他の親衛隊さんも突っ掛かってくんのかな。
めんどいなーなどと考えながら、歩く。
ま、今はとりあえず逃げ切って賞金ゲットだ。
逃げ回るのはダルいから、隠れとこ。
「どこ隠れっかなぁー。……あ。」
いいとこ思いついた。
行くまでにあんま鬼に会わないといいなぁ。
俺は思いついた場所に向かって足早に歩き始めた。
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