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新入生歓迎会 7
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キュッキュッと床を踏み締める音、そしてボールがバウンドする音が重なり合っている体育館内。
俺はボールをキャッチし、くるりと体を半回転させるとすぐさま放つ。
気持ちいいぐらいに、ノータッチでネットをくぐった。
「ナイッシュー!聖夜っ」
近くにいた亮平とハイタッチを交わし、ベンチに座る純にガッツポーズ。
純は笑顔で拍手を送ってくれた。
新歓二日目はバスケット。
一クラス20人を10人の紅白2チームに分け、一学年8チーム、全学年24チームのトーナメント方式。
一日ですべての試合を終わらせる、なんて結構な弾丸試合。こりゃ交代しながらじゃないと死ぬな。
第一体育館は紅チーム、第二体育館は白チームに分かれ、試合を行っている。
うん、体育館二つあんだよね。
しかも体育館にはバスケコートが三面あるから三試合同時。二つ合わせると六試合。
一回戦は12試合あるので前半と後半に分け、9時から始まった一回戦前半はすでに終了している。
俺達1-C紅は、今まさに一回戦後半の試合真っ只中だ。相手は2-C紅。
ビー!っと第ニクォーターの終わりを告げるブザーが鳴った。
7分のクォーターを4回、インターバルは2分、ハーフタイムは10分と本格的なルール。
得点は55-18。俺達が勝っている。
「お疲れー!聖夜も亮平もすごーい!」
「さんきゅー」
「ありがと」
亮平と俺は、渡された水を飲んだ。
俺と亮平は同じ紅チーム、純は白チームだ。
純たち白チームの試合は第二体育館で9時からだったので、すでに終了。
自分たちの試合の時間になるまで俺と亮平は純の試合を見に行っていた。
思っていたよりも俊敏に動く純。
小さい体を活かし隙間をつき低いドリブルで突破、綺麗なフォームのレイアップをいくつも決めていた。
白チームは見事勝利、二回戦へ駒を進めた。俺達も負けちゃいられない。
ハーフタイムの終わりを告げるブザーが鳴る。
「っし!行くか!」
「頑張ってね、二人とも!」
「おう」
亮平に続きコートに入る。
競技には必ず全員参加。とりあえず、少しでも参加をすればいい。
なのでバスケが苦手な奴や、もともと運動が苦手だという奴に最初に名乗り出てもらったところ、俺たち紅チームには三人。
その三人を第一クォーターに二人、第三クォーターに一人おき、後はそこそこ動ける組でローテーション。
ウォーミングアップのときに俺達の動きを見ていた委員長に指名され、俺と亮平は主メンバーとして出場することに。
なので人よりも多く出なきゃいけないけど、まぁバスケ好きだし。
よく陽炎や焔、紅の奴らとやってたからなー。ストバスだけど。
コートに入り5人集合、その中には第三クォーターに入ることになった九条の姿。
九条は真っ先に、バスケは苦手だと手を挙げた。
今日も俺を睨みつけることなく、おとなしい。
試合開始のブザーが鳴りジャンプボールを制したのは、俺達のチーム。
しかもうまい具合に、俺の所へ。
そのままキャッチし前を向くと、先輩がすんげぇ勢いでマークしにきた。
視線をちらっと右にやり、体を右側に少し倒し…と見せかけて先輩の左側を通過。
そのままドリブルでコート下まで行き、レイアップ。
2点追加。
その調子で点を稼ごうと思っていたのだが…点差は開かずむしろ縮まってきた。
なぜなら──。
「九条っ!」
と味方がパスを出すも、スルー。
ボールはコートから出て、相手ボールに。
試合開始から数歩移動したのみ。まったく参加する気配が見られない。
これ幸いとばかりに相手チームはボールを持った奴に数人がかりでマークをするので、なかなか抜け出せずシュートまでいけないのだ。
実質4対5で戦っているようなもの。しかも相手チームの今出場しているメンバーは上手い奴ばかりだ。
それでも隙をついて、スリーポイントエリアでシュートを放つ。パサッとネットを揺らし、三点追加。
そこで第三クォーターが終了した。
「聖夜ーっ!スリーとかやるな!」
亮平が俺の背中を叩きながら興奮していると、後ろから息切れひとつしていない声がする。
「コートには立ったんだから、もういいよね」
九条はそう言って体育館の出入口へと向かっていった。
「なんだぁ、アイツ!まだあと第四残ってるっつーのに!」
九条の背中を睨みつけ、怒りをあらわにする亮平。
「まぁまぁ、亮平。コートには立ったんだから、一応は参加。
残りの試合には出さなくてもいいんだからほっとこうぜ」
「…まぁそうだな。あー、でも腹立つ!」
インターバルの2分が経ち、コートへ戻る。
「点差が縮んだ。怒りを試合にぶつけろ、点取りまくれ」
そう言い、亮平の肩を叩く。
第四クォーター、亮平はスパスパと点を決めていき、俺も負けじとフェイクで相手を翻弄、スリーポイントを決めまくった。
結果、93-60。
見事勝利し、俺達1-C紅は二回戦進出を決めた。
30分の休憩を挟み二回戦に進出した俺達は、2-Bと対戦し見事勝利を納めた。
俺達の試合中、黄色い声援がそこかしこから飛び交っていた…が、その声援は俺達に向けてのものではもちろん無い。
黄色い声援を向けられていたのは、隣のコート。
2-A対3-Aの試合だ。
「本田様、素敵だったぁっ」
「木宮様もかっこよかったねー!」
そう、我等が生徒会長様と会計様に向けて。
どうやらリュウたち、2-Aが勝利したらしい。ということは──。
「げ、次会長んとことじゃん」
亮平が顔をしかめる。
「わ、ホントだ。頑張ってね」
純たちのチームは負けてしまった。何でも、対戦相手のメンバーのほとんどがバスケ経験者だったそうだ。
トーナメント表を確認した俺達は、担任から弁当を受け取り中庭に向かった。
バスケ大会の今日は弁当支給。…ただの弁当じゃない。まず、入れ物から違う。
プラスチックじゃないんだ。漆塗りの、重箱。しかも二段。
中身はそりゃもう、海老やら鯛やらイクラやらアワビやら…。
超豪華。
中庭の木の陰に座り、弁当を食べる。
二人もお坊ちゃんなんだろうが、地べたに座ってご飯を食べることに何ら抵抗はないようだ。
弁当を食べ終わり、時計を見ると1時過ぎ。
1時45分から三回戦が始まるので、まだのんびり出来る。
「なぁ、聖夜は見てた?会長たちの試合」
その言葉に、ついさっき行われていた試合を思い出す。
亮平は第一クォーター、俺は第二クォーターの時にベンチに引っ込んだ。
その時、ふと隣のコートの試合に目が行くと、そこにはしなやかな動きでボールを操るリュウがいた。
味方を上手く使い、パスを回す。
フェイクでマークを外し、シュートを放つ。
また、防御でもパスカットやしつこいマークで相手を圧倒していた。
自分のチームの応援をしなきゃいけないのに、俺は7分間ずっと目が離せなかった。
「あぁ見た。亮平も?」
「見た見た。すげー上手い。どうするよ?」
「んー…。木宮先輩とのコンビも絶妙だったしな」
と悩む俺たちを見て、ふふっと純が笑う。
「亮平と聖夜のコンビも絶妙だよ?お互い全力でぶつかればいいんじゃない?」
「ま、そうだなー。頑張るか聖夜」
「だな」
試合時間まで後20分となり、俺達は腰を上げる。
「あ、俺トイレ。先行ってて」
二人は弁当を食べ終わった時にトイレは済ませていたので、俺一人校舎内に入る。
1階のトイレは数人の生徒が並んでいたから、俺は2階に上がった。
トイレを済ませ、俺は階段を降りようと足を踏み出した──その時。
ドンッ──と背中を押され、俺の体は前方へと傾く。
「──っ?!」
浮く、体。
咄嗟に左手で手すりを掴み階段に着地しようとしたが、右足がついた先は段のスレスレ。
踏み外す状態で一段下に足が落ち、無理な体勢で踏ん張った。
「っ!」
ズキっと右足に走る痛み。上からバタバタっ─と走り去る足音がした。
幸い一番上から転び落ちることは免れた…が。
俺は右足を出し、階段を降りてみる。ツキ、ツキ…と軽く痛み、俺は顔をしかめた。
そして、左腕にも違和感。
どうやら手すりを掴んだときに負荷がかかり、筋を傷めたみたいだった。
──最悪。
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