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優しさに触れて 2
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次に目を覚ますとリュウは起きていて、ベッドの横に椅子を持ってきてそこに座っていた。
ずっと起こしてしまったことを謝ると、お前が寝てから少しは寝たとは言ったけど…申し訳なさが募る。
気にした顔をしていたのか、リュウは笑って気にするなと言った。
起きたのならリビングに行くぞと言われ、リュウについて行くと…これまただだっ広い空間だった。
寝室同様黒い家具でまとめられており、そしてそこにあるソファに座る三人の人物。
相楽先輩に木宮先輩、そして理事長。
促されて理事長の向かいに座ると、理事長は頭を下げた。
「我が高の生徒が君に危害を加えたようだね。本当に申し訳ない」
治療費などは学園が負担、体育なども免除の措置を取る、と申し出てくれた。
そして横にいる相楽先輩も申し訳なさそうにしている。
「九条くんから聞いたよ。
新歓1日目にも君に危害を加えようとしたんだってね?
出来るだけ君を人目のあるうちに生徒会室から帰らせたり、できる限り一人にさせなかったりしていたんだけど…僕たちのミスだ。
まさか九条くんがあんな大胆な行動に出るとは思っていなかったんだ…なんて、言い訳だね」
ごめん…と相楽先輩までもが、頭を下げてくる。
「相楽先輩、頭を上げて下さい。自分が油断したから悪いんです。
だから謝んないでください。それより、九条は…?」
俺の質問には理事長が答えてくれた。
「九条くんは退学処分、彼に協力した者には謹慎処分を言い渡す。
勿論、彼らには二度と君に近づかないよう、誓約書も書かせるよ」
退学処分…か。
少し可哀相な気もするが、された事を思えば同情の余地はない。
「分かりました…」
「あんなことがあったんだ…君が辛いなら、怪我が治るまで授業を休んでもかまわないよ?
単位をレポート提出で取れるように教師陣に言おうか?」
その理事長の申し入れに、大丈夫です、と答える。
「怪我もそんなにひどくありませんし、もう気にもしていません。授業には出ます」
学校を休むほど参ってるわけでも堪えてるわけでもない。
俺を心配をしてくれる人がいる。
俺のために色んな措置をとってくれる人がいる。
俺を知らないところで守ろうとしてくれている人がいる。
俺に無条件で優しくしてくれる人がいる。
「助けて、心配してくれる人達がいますから。大丈夫です」
俺は理事長に笑いかける。
「そうか。私に出来ることならば力になるから、何かあれば言いなさい」
俺はその言葉に、理事長にお願いがあったことを思い出す。
「あの、理事長。今回のこととは関係ない話なんですが、ひとつお願いがありまして…」
「なんだい?」
ちらりと他の三人を見ると、三人とも俺をじっと見ている。
まぁ俺の母さんについて何か知ってるようだったし、きっと病気で入院していることも知っているんだろう。
「あの、5月にある宿泊研修なんですが、不参加というわけにはいきませんか?」
「一応、全員参加が義務だから…どうしてだい?」
「母の病気がいつ悪化してもおかしくない状態なんです。だからすぐに行ける距離にいたいんです」
もし宿泊研修中に病院から電話がかかっても、すぐに駆け付けてあげられない。
「あぁ、そうか…。そんな理由なら仕方がないね。
わかった。一応宿泊研修も単位があるから、代わりにレポートで取れるようにしよう」
「ありがとうございます」
ホッと安心する。
それから理事長は俺にもう一度謝り、部屋を出て行くのを見送ってから、俺も自分の部屋に戻ると告げる。
ルームサービスを取るから、朝ご飯を一緒に食べないかと相楽先輩が言ってくれたけど、
「亮平と純に顔を見せて安心させたいんで」
そう言って謝る。
シャツはそのまま着て帰れ、というリュウの言葉に甘えズボンだけ着替えた。
携帯をポケットに入れ、松葉杖を受け取りリュウの部屋を出る。
朝の9時。
いつもの土曜日の朝なら生徒が行き交っていてもおかしくない時間だが、みんな新歓で疲れたのか、2、3人の生徒とすれ違うのみだった。
先にシャワーを浴びようかと思ったが、とりあえず顔を先に見せようと亮平の部屋のベルを押す。
たぶん、純も一緒にいるだろう。
「はい?」
やっぱりいた。純の声だ。
「純。開けて」
しばらくして勢い良くドアが開いた。
「っ、聖夜っ!」
純ががばっと抱き着いてくる。
「お、わっ」
片足で立っていた状態だったので、よろける。
「あぁっ、ゴメン!足怪我してるんだった…」
「平気。大丈夫」
「純~?誰…って、聖夜!」
リビングのドアから顔を覗かせた亮平が、俺を目にとめて一目散に駆けてきた。
「おまっ…心配させんなっ!」
「…ごめん。二人とも」
俺は二人に向かって頭を下げた。
「はぁ~、ま、とりあえず上がれ」
「あ、先にシャワー浴びてきていいか?昨日浴びてないんだ。
とりあえず先に二人に謝りたかったから…」
「…いいけど、絶対来いよ」
「絶対だからね!」
「ハイ」
俺は深く頷き、自室へ戻ってバスルームに直行する。
髪も洗いたかったが、時間がかかるので髪を上にあげてゴムでくくり、体だけ洗った。
少しだけ色が落ちた部分にスプレーをふり、亮平の部屋へ行く。
向かいのソファには亮平が座り、純はカーペットに座っていた。
二人とも、どこか心配そうな、浮かない顔をしている。
「何があったかは、相楽先輩からだいたい聞いた。…大丈夫か?」
亮平が気づかわしげに聞いてくる。
純もじっとこっちを見ていた。
「あぁ、うん。大丈夫、未遂だったし。会長が来てくれたから」
「そっか。会長たち、マジで反応早かったからな。
俺と純が呆気に取られてる間に駆け出してった」
亮平はどうしてリュウが助けにきてくれたのか、いきさつを説明してくれた。
「そうだったんだ…」
っつか、相楽先輩何者なんだ…。
学園のセキュリティシステムなんて易々と入り込めるもんじゃないだろ。
まぁ、そのおかげで早く助けてもらえたんだけど。
それに寮管である安達さんに会ったのも運が良かったんだ。
じゃなかったら、あんなに早く発見されていなかったかもしれない。
「もう二度と一人でうろつくなよ!」
「どこかへ行くときは、僕らに声かけること!」
二人は迫力のある目つきで見てくる。
「はい、分かりました」
俺は素直に頷き、二人に笑いかける。
「心配かけてごめん。二人ともありがとう」
そう言うと、二人はようやく安心したように笑ってくれた。
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