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集会
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宿泊研修も終わり、夏休み明けにある文化祭があるまではとくに行事はない。
その間にあるのは学力考査だけだ。
一般的には中間、期末とわかれている学力テストだが、この学園は学期ごとに一回しかないらしく、そのためテスト範囲はもんのすごく広いらしい。
ま、教科書から出題されるのであれば、問題なし。
宿泊研修から帰った翌日、少しだけ目を覚ました母さんにシンガポールでの思い出を話して聞かせると、楽しそうに聞いてくれた。
母さんの笑顔が見れて、行ってよかったなと思った。
そして、母さんに何もなくて良かった──と。
土日を挟み、今日から6月。
今日生徒会での話の中心は、9月中頃に行われる文化祭、¨青藍祭¨についてだった。
青藍祭は三日間に渡り行われる。
一日目は学園内生徒の親族だけが呼ばれる。二日目は一般公開、そして三日目は生徒会役員の発表と打ち上げ。
生徒会は毎年理事長が指名するらしい。
かなり規模が大きいので、今から着々と準備を始めていくみたいだ。
なので生徒会の集まりも月木だけじゃなく、その他の日も集まることが多くなる。
生徒会に入った以上仕事はしないといけないので、まぁ仕方がない。
「聖夜、はいコレ」
「ん?」
生徒会の後、待っていてくれた亮平と純とともに食堂でご飯を食べ、いつものように亮平の部屋へ。
何かを取りに行っていた純が、水色の封筒を渡してきた。
「シンガポールで撮った写真だよ」
「あぁ。ありがと」
思ったよりも分厚い封筒の中を見ると、数十枚の写真が入っていた。
「一枚だけで良かったのに」
「お母さんに見せるんでしょ?いっぱいあった方がいいじゃん」
そう言ってニッコリ笑う純に、俺はまたありがとうと返す。
宿泊研修での話や、夏休み明けにある青藍祭について二人から話を聞いたりしていたら、結構時間が経っていた。
11時も過ぎたし部屋に戻ると、内線が鳴りだす。
こんな時間に誰だ…?と思いつつ電話に出ると、それは鷺ノ宮先輩。
『ごめんね、こんな遅くに。電話したんだけど、出なかったから』
「あ、すみません。部屋に居なかったんで…」
『そっか。デートなんだけどさ、普通に歩いてるのを見かけたから、もう大丈夫なのかな?と思って』
「あ…、ハイ。大丈夫です」
すっかり忘れていた。ちゃんと覚えてたんだな、この人は…。
『じゃあ次の日曜って大丈夫かな?』
「はい、大丈夫です」
『じゃあ、日曜日。んー、10時ぐらいに寮のロビーで待ち合わせね』
「はい」
『それじゃ、楽しみにしてるよ』
楽しみにはしていない俺は曖昧に返事をして、電話を切る。
はぁ…。めんどくせーなぁ…。何で俺なんて指名したんだろう。
俺は亮平の言葉を思い出す。綺麗なものに手を出す…か。
素顔だけは絶対に見られないようにしよう。目をつけられるなんて、ややこしい事になりたくない。
純にもらった写真を、シンガポールで買った写真立てに入れてベッドの側の棚に置く。
亮平と純と俺、三人並んで立ち、バックにはシェントン・ウェイの夜景が煌めいていた。
しばらく母さんの病室で過ごし、俺は約1ヶ月振りに¨白夜¨として南区の街を訪れた。
いつものベンチに座ること数分、俺に合言葉がかけられる。
声のした方へ視線を向けると、そこにいたのはヨシヒトさんだった。
ニッコリと笑いかけ俺の前に立つ。
ま、この人でいっか。
いつものように、ルールに沿ってやり取りをする。
何回か俺を買っている相手でも、ルールを省くことはしない。
ヨシヒトさんの後を着いて行き、ヨシヒトさんがラブホへと入る。
前もここだったな。気に入ってんのか?などと思いながら、続いて入った。
さっきまで行為が行われていたベッドをソファに座りながら見つめ、考える。
ーー何だろう、以前とは違う気がする。
3個のゴムを買ったヨシヒトさんは、全てのゴムを使い切り、今シャワーを浴びている。
そのシャワールームの方へ視線を移しながら、俺は先程までのヨシヒトさんを思い返した。
いざベッドに入ると、纏う雰囲気が以前とは違ったように思う。
そして、どちらかと言えば淡泊なセックスだったヨシヒトさんは、今日はしつこいぐらいの愛撫。
ゴムを使い切ったあとに、ヨシヒトさんは追加したいと言ってきた。
今日は久しぶりに真吾さんの所へ行こうと思っていたので、無理だ、と断ったんだが…。
なんとなく、嫌な予感がする。
もうヨシヒトさんを客に取らない方がいいかもな…と考えていると、シャワールームのドアが開いた。
それから二人でラブホを出たんだけど、ずっと何か言いたげな顔をしていたヨシヒトさん。
やっぱり、コイツとは今日で終了だな、と決意。
またね、の言葉に返事をせず、俺はただ手を振り立ち去った。
路地を抜け、目に入る¨dumpsite¨の文字。
久しぶりに来るなー。
そう思いながらドアを開けると、初めて目にする光景が広がっていた。
「あ!白夜だぁぁぁっ!」
「久しぶり…」
「よ。」
俺は挨拶をしてきたそれぞれの顔を見回す。
まず目に入ったのは、カウンターに座る可愛らしい顔立ちに、サラサラな茶色い髪、赤いカラコンを入れた目が印象的な男。
この南区でNo.3、紅のトップ、レン。
そして次はテーブル席に座る、長めの黒髪に整った顔立ち、少しはかなげな雰囲気の、両耳に赤い石のピアスをしている男。
南区でNo.2、焔のトップ、ミツ。
それからもう一人はソファに寝転がる、この前久しぶりに会った、No.1、陽炎のルイだ。
チームの奴らがいるところに遭遇するのは珍しくないが、チームのトップが揃っているところを見るのは初めてだ。
「よぉ、白夜。久しぶりだな」
「真吾さん、久しぶり」
俺は中に入り、ソファに向かう。
「ルイ、邪魔。起きて」
「ハイハイ、どうぞ」
ルイは起き上がり、少し端に寄ってくれた。
「サンキュ」
俺がソファに座ると、すぐさまレンが横に、ミツが舌打ちをしながらレンの横にある一人掛けのソファに座った。
「お前らが一緒にいんの、初めて見た」
「んー?そういえば、白夜は見たことなかったかなー?」
レンが首を傾げていると、ミツが俺をじっと見ながら言う。
「たまに…集まってるよ」
「ふーん。あ、真吾さん。ジントニちょーだい」
「へいへい」
俺のドリンクを作りながら、真吾さんが問いかけてくる。
「ここ一ヶ月どうしたんだ?全然来なかったから」
レンとミツが、ルイだけ白夜と会話してズルイ!って喚いてたぞ、と続ける。
「なに。お前ら俺待ってたの?」
その言葉に、レンとミツはうんうんとシンクロして頷いた。
「わりぃな。ちょっと足怪我してて、おとなしくしてた…」
「「怪我っ?!」」
怪我に反応したルイとレンがグイっと顔を近づけてきた。
「誰かに…やられたの…?」
ミツが静かに聞いてくるが、若干声が低くなった気がする。…こわいです、ミツくん。
「トラブルか?」
ドリンクを渡してきた真吾さんは、そのままカウンター席に座った。
「いや、ただ階段踏み外しただけだから。トラブルとかじゃねーよ」
すると四人の顔に、安堵の表情が広がる。
心配してくれたみたいだ。
「もう治ったし。ありがとな」
そう言って笑うと、みんな顔を赤くした。ふはっ相変わらずだな、コイツらは。
ジントニックを口に含むと、そこでふと気づいた。
「なに、お前ら飲んでねーの?」
三人の前に、グラスもおつまみも置かれていない。
すぐ赤くなるレンの顔も、今は何の反応もないし。
「あぁ、この後集会あるからさ」
「集会?」
「俺たちのチームが集まる…。近況報告…みたいなやつだよ…」
そこでレンがあ!と声を上げる。
「ねーねー、白夜って今日はずっとここにいるんだよね?」
「ん?そうだけど?」
「じゃあさ、集会一緒に行こうよー!」
「は?」
「お、いいな。よし、白夜も参加決定」
「白夜…行こう…?」
「いやいや、俺部外者だし」
何言ってんだ、こいつら。
「行ってくれば?」
その言葉に真吾さんを見ると、ふっと笑った。
「白夜に会いたいって喚いてたのは、そいつらだけじゃねーよ。
顔見せに行ってやれば?きっと喜ぶ」
「…あんまり遅くなんない?」
「2、3時間で解散するよー」
「んじゃ、行く」
するとレンはわーいと喜び、ルイは頭を撫でてきて、ミツはニコリと笑った。
ジントニックを飲み干している間に、店の裏に停めてあったバイクを取ってきた三人。
「誰の後ろに…」
「ミツ。」
ルイの言葉を遮って、俺は即答。
だってルイもレンも運転こえーんだもん。
ミツは安心。ゆっくり走ってくれるから。
ミツが自分のメットを被してくれた。
「乗って…」
ミツの後ろにまたがり、ミツに抱き着く。おおーミツくん前より締まってきたんじゃね?俺より筋肉ありそー。
若干セクハラ気味の俺にくすぐったいよ、と言ったミツは、ブーブー文句を言う二人を置いて走り出す。
ゆっくり走ってくれてるので、すぐに二人が追いついてくる。そしてあっという間に走り去って行った。
ブォン!と轟音を撒き散らして小さくなっていく後ろ姿。やっぱりミツの後ろがいい。
10分程走り、着いたのは古い倉庫。集会はいつもここで開いているらしい。
倉庫の中から、かすかに人の話し声がする。
その入口でルイとレンが待っていた。
「んじゃ、行きますか」
ルイが扉を開け、まず三人が中に入る。
ルイもミツも背高ぇなぁ。前見えねぇ。レンはあんま俺と変わんないな…などと思っていたら、次から次へと三人に声がかかる。
わお。やっぱコイツらすげーんだな。
感心していると、レンが声を張り上げた。
「今日は特別ゲスト連れてきたよぉー!」
「うわっ、」
クイっと腕を引かれ、みんなの前に。一歩前に踏み出すと、集まる視線。
「よ、よぉ。久しぶり」
とりあえず笑顔で挨拶をすると、倉庫内に響き渡る、俺の名前。
「ほら、煩せーぞ。白夜は逃げないから静かにな」
騒ぐ奴らをルイが静めると、あっという間に大人しくなる。おぉ、すげー統率力。
「白夜、あっち…座ろう」
ミツに連れられ、茶色い皮張りのソファに座らされた。
「あ!ミツずるい!白夜は俺と座るのー!」
レンが騒ぎ出したので、俺は自分の隣をポンポンと叩く。
「ここ座ればいいじゃん」
「…白夜が言ってんだから、座ってもいいよね?」
「…勝手にすれば…」
レンはニーッコリと笑い、俺の横に座ってきた。
ん?座るのに許可がいるのか?
「No.2のトップとNo.3のトップがここで仲良く同じソファに座ってるなんて、初めて見るわ」
クックッと笑いながら、少し離れた場所にある黒いソファに座るルイ。
ルイの向こう側に、白いソファが見えた。
「…なぁ、もしかして普段、レンはあそこ座っる?」
俺は白いソファを指した。
「うん。でも今日は白夜がここって言ったからねー」
ニコニコと無邪気に笑うレン。うん、かわいいけどな。
一チーム約30人。だから目の前には約100名ぐらいの男たち。
みんなそれぞれチームの奴らは、よく見たらちゃんとソファの前にチームごとにまとまっていた。
「いや、やっぱ戻った方がいいよ。トップなんだからちゃんとチームのとこに行け」
「えー。」
ほっぺを膨らませるレン。うん、その顔もかわいいけど。お前トップなんだからさ。
「…後でそっち行くから」
「うんっ。じゃぁ戻る~」
キュルンと音がしそうな笑顔に変えて、自分の位置に戻っていった。
…あれがトップでいいんだろうか。
ま、顔に似合わず強ぇし、実力はある。
横でボンヤリしているミツも、キレたらめちゃめちゃこえーしな。
ミツが話したように近況報告をしていくみんな。チームが掴んだ情報をそれぞれ報告しあっていた。
1時間ほどで話し合いは終わり、後は自由解散なんだと。
「ねーねー、白夜。アイス食べたい?」
俺は今、白いソファに移動していた。
集会が始まって30分ほどしてから、レンが穴が開きそうなほどじーっと視線を送ってきたからだ。
手を離そうとしないミツを宥め、ルイの後ろを通りレンの所へやってきた、というワケ。
「アイス…?食べたい」
「じゃ、ヤス買ってきて。僕バニラ~」
目の前にいた奴に買って来いと頼むレン。
「え?わざわざ買いに行くんなら別にいーよ。悪いだろ?」
「いえっ!いいっすよー。白夜さんは何がいいっすか?」
「…いいのか?じゃあ…イチゴ」
「了解っすー!」
そう言ってヤスと呼ばれた彼は倉庫から飛び出して言った。
「むー。笑いかけることないのにぃ。白夜は僕にだけ笑ってればいいの!」
隣を見れば頬を膨らませて、口を尖らせるレン。
「何ワケわかんねーこと言ってんだよ」
んな顔して、カワイイだけだぞ。
俺はその尖った口をつまんでやる。タコみたいな口になって、少しマヌケだ。
「ふっ…はは!マヌケな顔…うぉっ」
「なーに、イチャついてんだ?」
後ろからガバリ!とルイが抱き着いてきた。
「あっルイ!離れろー!」
「嫌。なー、白夜。次は俺をかまえー」
「白夜…次、俺…」
そこにミツもやってくる。
結局そこでトップが集まり代わる代わる俺に構えと訴えてきたんだけど、俺はそんな三人よりもヤスが買ってきてくれたイチゴのアイスに夢中なため軽くスルー。
「うまいっすか?」
「うん。ありがと、ヤス」
「いえいえっ!」
ヤスはいい奴だなー。あー、それにしても煩い。
「お前ら黙れ。それとも黙らしてやろーか?ん?」
ニッコリ笑顔付きでそう言うと、黙る三人。
おい、お前ら。威厳もなんもないぞ。
それからしばらくしてルイが解散の号令を出し、ぞろぞろと倉庫から出て行く。
ルイたちのバイクしか停まってねぇなーと思っていたら、どうやら裏側は広場になっているらしく、みんなはそこに停めてあるらしい。
台数減らすためにだいたいニケツして乗り合わせて来てるみたいだ。
dumpsiteまでミツに送ってもらい、中に入るとまだ起きていた真吾さん。
何やら作業をしていたので、邪魔をしたら悪いと思いオヤスミと声だけかけて二階に上がる。
シャワーを浴びてベッドに潜り込み、時間を確認すれば既に午前4時。
少しでも寝よう、と目を閉じた。
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