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青藍祭 2
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「白川くん、もう並ばないように看板立ててくれる?
たぶん並んでる人数で15時になると思うから」
「わかりましたー」
忙しく動き回っていると、早いもので喫茶店がオープンしてから三時間が経過していた。
あと一時間で終了だ。
予約受付のテーブルへと行き、『本日の受付は終了いたしました』と書かれた看板を置こうとした、その時。
「「「聖夜!」」」
背後から俺を呼ぶ複数の声がした。
振り返ると、そこにいたのは亮平、純、奏、肇、葵の5人。
「終了?」
俺の持つ看板に目をやった亮平。
「あぁ。んー、じゃあおまえ等が最後な」
受付票の一番下に、木崎、人数を5人と記入する。
「お呼びするまでお待ちください、ご主人様方」
笑みを浮かべそう言うと、列からキャーッと歓声が上がった。
なんか、もう慣れたよ、この反応。
「お待たせいたしました」
14時40分。最後の客、亮平たちを呼ぶ。
5人を迎え、俺たち4人は一礼。
「「「「お帰りなさいませ、ご主人様」」」」
「おぉ」
「わぁっ」
「すげ」
「ほぉ」
「聖夜っ!奉仕してく……れなくていいですなんでもありませんすいません。」
隆盛の睨みが入りました。誰にかは、言わずもがな、だな。
「お待たせいたしました」
円形のテーブルに座る5人に飲み物を置いていく。
奏だけは、フルーツタルトも。
「すげー本格的だな」
周りを見渡した亮平は感心したようにつぶやく。
もともと英国のような雰囲気のキレイに手入れをされたフラワーガーデンに、さらに花を増やし華やかさがアップ。
そしてアンティーク調の真っ白いテーブルと椅子を配置。
「相楽先輩と木宮先輩が手配したみたい。キッチンスタッフも。俺らは給仕のみ」
「執事服、すごい似合ってる!」
「さんきゅ、純」
「それにしてもなりきりようがすこいな。しかも客タラシこんでるし」
「肇……人聞き悪いこと言うな、命令なんだよ」
好きでタラシてんじゃねぇ!
「終わった……」
疲れたよマジで。違うキャラ演じんのってこうも精神力削られるのか…。
最後までいた亮平たち5人は帰り、本日の営業は終了。
一旦俺たちは生徒会室に引き上げてきた。
「お疲れ様、一息いれようか」
「ありがとうございます、相楽先輩」
テーブルに置かれた紅茶、そして…モンブランとガトーショコラ。
「ケーキ?」
「お前、ケーキじっと眺めてただろ?2つ取っておいてもらった」
「……ありがと」
隆盛は笑って俺の頭をくしゃっと混ぜたあと、早く食え、とフォークを渡してくれた。
うーん、ウマい。
30分ほど休憩をして、ケーキでお腹も満たされた。
「さ。隆盛と白川くんは廻っておいで」
「え?」
動員数や売上、各テーブルに置いてあった客のアンケートなどをまとめなければならないはず。
そう言うと、相楽先輩はいいから、と笑う。
「白川くんは学祭初めてでしょ?あと一時間半ぐらいしかないけど、見てきなよ」
「でも……」
「そのかわり。その恰好のまま廻ってきて。そんで明日のために宣伝してきてよ」
「……わかりました。ありがとうございます」
好意に甘え、隆盛と校内を歩くこと、五分。
「あのっ、寄っていってください!」
「ぜひこちらに!」
「いや、うちのクラスを!」
なんて声をかけられまくってる。
そして、なぜか。
「し、白川様っ!」
「書記様ぁっ」
なんて呼ばれる。やめてくれ。様とかつけないでほしい。
半ば引きながら、辺りをキョロキョロして歩く。
占いの館、写真館、料亭『青』、和装カフェ……etc………。
「………。」
言葉が、出ない。違うんだよ、規模が。
学祭じゃねーよこれ。もう学園が街と化してるよ。
ゲームセンターもあったけど、最新のコンピューターで何か変な眼鏡かけてでっかいスクリーンがあって本物の世界に入り込んじゃうとか書いてあった。
うん、よく分からんがとにかくハイテク。
飲食系だって店が移転してきたんじゃね?ってぐらい凝ってる。
「……なぁ。なんでみんなこんな本格的なの?」
隣を歩く隆盛を見上げる。
「まぁだいたい家がそういった仕事をしてるからじゃないか?」
あれか。お化け屋敷もそーいった奴がいるとか言ってたな。
ふーん、なんて感心しながら歩いていると、クッキー専門店なんて看板が見えた。
並んだクッキーを眺める。
薄い桃色や抹茶色。
チョコチップ入りやナッツ入り。
キレイにデコレーションされたもの。
おいしそう………。
「あっあの!」
「ん?」
顔を上げると、シンプルな黒いエプロンをまとった、かわいらしい感じの男子生徒がいた。
「よ、良かったらこれどうぞ!」
渡してきたのは、透明な袋に入ったバタークッキー。
「……いいの?」
「はいっ!宣伝用に配っているものなので!」
「さんきゅ」
やった、クッキーもらった。
お礼を言ったら、あと三袋もくれた。
余ってるんで!とか言って。
ラッキー。
「良かったな」
「おう!」
喜ぶ俺を見てふっと笑い、頭を撫でる隆盛。
そして周りはそんな隆盛を見て顔を赤らめていた。
「お、聖夜はっけーん」
「奏……なに、そのかっこ」
切りっぱなしの生成のシャツ、黒のズボン、先の尖った靴、革のベルト、黒の眼帯、そして特徴的すぎるトンがった帽子。
「海賊!」
手に持つサーベルを構えてポーズを取る奏。
うん。見たらわかる。
似合ってるけど、奏ならドレスとかの方がいいんじゃないか?
って言ったら似合いすぎてつまんないだろ、って真顔で返された。
……そうだな。
「で?なんでそんなカッコしてんの?」
「俺のクラス、コスプレ写真館してんだよ。宣伝の帰り~」
「へぇ」
「そうだ、俺んとこ来いよ」
「いや、もう既にしてるようなもんだし」
執事服。
「コスプレしろってんじゃなくて、写真撮ってやるよ、会長と」
写真……写真か。ちらっと隆盛を見る。
「いいぞ。行くか」
「うん!」
奏に連れられやってきたのは、第三体育館。
そこに並ぶ衣装に圧倒される。
軍服、海兵、警察官、パイロット、スーツ+白衣、浴衣、……セーラー服、メイド服、ナース、十二単……?
女物まであるのか。
「こっちこっち~」
奏に連れられ衣装がズラーッと並ぶ中を通り、そして着いた先は体育館の一番奥。
そこにはなんと、小さめのプレハブ小屋が。
小屋なんて建ててることに唖然としながら奏に続いて中に入ると…うん、スタジオ。スタジオ作られてます。
「ほら、そこ立て」
真っ白なスクリーンがかけられた前に立たされる。
「水瀬さーん。お願いしまーす」
カーテンの中をのぞきそう声をかけた奏。
中から出てきたのは、少しチャラそうな男の人。
茶色く染めた髪を立たせ、少し灼けた肌、ピアス、ネックレス、指輪。
おぉ、すっげー、男前。
なんて考えながらその男の人を見ていると、向こうもじーっと俺を見ていた。
そしてズカズカと大股で歩み寄ってくる。
「君っ!」
目の前まで来たかと思うと、いきなり両手をがっと掴まれた。
「モデルなって!」
「は?」
「うわ、すげー理想!名前は?身長は?体重は?スリーサイズは?」
「は?え?ちょっ、」
力強ぇっ!
「離せ」
隆盛がべりっと手をはがし、俺を抱き寄せた。
「あ?あんた誰?俺は今その子くどいてんだから邪魔すんな」
「あぁ?何言ってやがる。コイツは俺のだ、触るな」
バチバチっと火花が散ってるように見えんのは、気のせいか?
「おーい、奏、次……何してんだ?」
スタジオに入ってきたのは、葵だった。
葵はチャラそうな男の人、隆盛、そして俺、と視線を巡らせていく。
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