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青藍祭 6
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理事長室に呼ばれたため、片付けの途中でクラスを抜け出して理事長室に。
理事長を目の前に、右から木宮先輩、相楽先輩、隆盛、俺と並んでいる。
「このまま、引き続き生徒会を任せたい。引き受けてくれるかな?」
生徒会役員は理事長が指名。
隆盛たちは二期連続で指名され、頷いているところを見ると受けるみたいだ。
「あの……俺でいいんですか?」
俺も指名されたけど、生徒会は選ぶときに家柄も考慮されると聞いた。
一般庶民の俺が生徒会入りなんて、誰かの反発を買うんじゃないか?
それに、パッと出の俺が隆盛たちに近づいたって気にくわない奴もいるだろうし。
そう言うと、相楽先輩は驚くことを告げた。
「心配ないよ、白川くん。すでに君に親衛隊が出来るぐらい、今や人気者だから」
「は?」
その言葉に固まる。
「すごい人数らしいよ?今も増え続けてるって。執事が効いたかなー。タラシまくってたしね」
いやいやアナタがそうしろとおっしゃったんですが。
「生徒会に入るのに君以外にふさわしい生徒は見つからなかったんだ。引き受けてくれないかな?」
それは大げさだと思う。
だけど、認めてもらってるってことだよな。ウルサい輩は無視したらいいか。
「分かりました。やります」
俺は笑顔で引き受けた。
ところ変わって今いるのは、体育館の舞台袖にある休憩スペース。
生徒たちがいるところは通らずに裏口から回って、名前を呼ばれるまでここで待機らしい。
今壇上には理事長が立っている。
生徒にねぎらいの挨拶をし、今から今年一番盛り上がりを見せたクラスの発表だ。
クラスから理事長に、集客数や売上、どれだけ待ち時間があったかやアンケート結果などをまとめたものを提出している。
もちろん、生徒会も。
だけどさっき聞いた話じゃ、生徒会はあくまで参加しただけで、順位に加わることはないんだそう。
え、じゃあ何で相楽先輩はあんなに計画して、熱を入れてたんだ。
とか思っていたら、たぶん、顔に出てたんだろう。
楽先輩は俺を見て、生徒会の意地だよ。とか言ってきた。
「じゃあ、今年ナンバーワンに輝いたクラスを発表しよう」
どこなんだろ。
全部回れてないけど、どこもすげー盛り上がってたしな。
「今年もやはり、生徒会が一番人気を集めたみたいだ」
理事長のその言葉に、相楽先輩は満足そうに笑みを浮かべている。
「だけど生徒会は除外されるのでね。今年ナンバーワンのクラスは────
1年C組、”幽霊屋敷~侍の呪い~”」
は?
それって………。
「しろっちのクラスだねー」
「……え、アレが一位?」
ビックリしている俺。理事長がアンケート結果を述べていく。
「アンケートには、『学祭とは思えよないほど凝っていて驚きました』、『アミューズメントパークにオープンしてほしい』、『気絶者が出たと聞きました。納得するほど怖かったです』などがあったよ、おめでとう」
……最後のって、あきらか俺ですよね。
現場監督をしていたクラスの奴、橘(タチバナ)だったか?が壇上に上がり、表彰されていた。
そして賞品である、超有名高級焼肉店の食べ放題チケットを貰っていた。
食べ盛りの年頃だし、素直に喜ぶところは金持ち坊ちゃんでも同じらしい。
いいな、焼肉。食いたい…。
「焼肉ぐらい、連れて行ってやる」
横から聞こえた隆盛の声。
「……声出てた?」
「いや?羨ましそうだったから」
……そうですか。
クラスの表彰も終わり、次はいよいよ新生徒会役員の発表だ。
「それじゃあ、次は新生徒会役員を発表するよ」
理事長のその言葉に、ざわめいていた生徒たちは静まり返る。
「まずは、生徒会書記に──白川聖夜くん」
呼ばれたので、舞台上に歩いていく。と、今までになかった反応が返ってきた。
な、なんだ?
キャーッ!やら、うぉーっ!やら、叫ぶ声。
一瞬呆気に取られて、歩みを止めてしまった。
「白川くん、ここへ」
その言葉に慌てて指定された立ち位置へ。
騒ぎが収まるのを見計らい、理事長は発表に移る。
「次に、生徒会会計に──木宮明良くん」
木宮先輩は生徒たちに手を振りながら、俺から二人分間を開けて立つ。
「そして、生徒会副会長に──相楽祐輔くん」
相楽先輩はお得意のスマイルを振りまきながら、木宮先輩の横に。
「最後に、生徒会会長に──本田隆盛くん」
隆盛は真っ直ぐにこっちを向き、俺の横へとやってきた。
「以上四名、前期から引き続き生徒会役員に指名します。異議のある者は挙手をお願いします」
辺りは静まり返り、手を挙げる者はいなかった。
「それでは生徒会諸君に拍手を」
その瞬間、割れんばかりの拍手が興った。
「それじゃあ、生徒会会長から挨拶をお願いできるかな?」
「はい」
理事長は笑顔で俺たちを見回すと、舞台から降りて行った。
「前期から引き続き生徒会会長を任された、本田隆盛だ。
みな、ご苦労だった。各クラス趣向を凝らし、活気あふれいい学祭だったように思う。
引き続き生徒会を任されたからには、今期も前期以上によりよい学園にするべく、精進するつもりだ。
学園の代表が、俺たちで良かったと、必ず思わせてやる。だからお前たちは俺に──俺たちについて来い」
隆盛の言葉に、今日一番の盛り上がりを見せた生徒たち。
「以上をもって、第86回青藍祭を閉幕とする。この後は講堂に移動、みなパーティーを楽しむといい」
「うまっ、コレ」
テーブルに並ぶ、料理の数々。
なんとかのカルパッチョ、なんとかのテリーヌ、なんとかのパイ包み、なんとかのソテー………とにかくキラッキラした料理がズラーッと、中央のバカでかくて長いテーブルに置かれていた。
10人掛けの円形テーブルに時計回りに、奏、肇、葵、亮平、純、相楽先輩、木宮先輩、隆盛、俺が座っている。
「聖夜ー、次ケーキ取りに行こうぜ!」
「行く!」
奏と二人、ケーキが置いてある場所へ。
「やべー、どれにしよう」
「色んな種類取って、分けようぜ」
奏の案に賛成し、二人でデッカい皿にケーキを盛っていく。
木苺やマンゴー、いちじくのタルト。
栗や苺のモンブラン。
ブラウニーやレアチーズ、ミルフィーユ。
「あのっ!」
「ん?」
数々のケーキにホクホクした気分になりながら夢中でケーキを選んでいると、後ろから声がかかった。
振り返るとそこには、体格のいいワイルドな感じの奴と、愛らしい感じの背のちっこい奴がいた。
俺を見てるってことは、俺に用事だよな?
「えっと……何?」
「俺は、2─Bの松川祥平(マツカワショウヘイ)。白川聖夜親衛隊隊長だ」
へ?
「僕は、1─Aの都築麻琴(ツヅキマコト)。白川聖夜親衛隊副隊長です」
は?
「「俺(僕)たちを公認してくれ(ください)!」」
「………え?つか、公認?」
なんだ、それ。固まる俺、頭を下げる二人。
「おー、すげーな。もう親衛隊出来たんだ、聖夜の。
親衛隊ってさ、基本、本人の公認が必要なんだよ。公認されてれば会議とか開けるし、集う場所も借りれるし」
楽しげにこの光景を見る奏が説明してくれる。
そうだったのか。知らなかった。
「……え、いやさ。親衛隊とか正直いらないんだけど……」
なんて本音を言ってみる。
だって過激な奴とか多いし。実際に被害にあったし。偶像崇拝されんのヤダし。
そう言うと、二人はう……っと言葉につまった。
「いいじゃん、認めてやれば」
奏、他人事だと思って……。
「みんなが聖夜を認めたから、親衛隊なんてものが出来たんだろ?
だったら聖夜も認めてやれば?聖夜がルール作ればいいじゃん。聖夜が好きなら、従うだろ?」
な?と奏が二人にそう言うと、二人はぶんぶんと首を縦に振る。
俺を認めてくれた……か。
そう言われるとなぁ……。
「んー……じゃあ、命令じゃないけど、お願いしていいか?従うとか、そんなの好きじゃないし」
そう言うと二人は頷いたので、思いついたことを言っていく。
「まずさ、様づけとかは止めてほしい。そんな事を言われる立場じゃないし、普通に名前で呼んでくれればいいよ。
それから、あんまり騒がないでほしい。遠巻きに騒ぐんならさ、気軽に挨拶でもなんでも声かけてよ。
あと、どんな奴がいるのか、教えてくんない?知っときたいから」
「え、そんなのでいいのか……?」
「それじゃあ僕たちが嬉しいことばかりです……」
「いいよ。騒がれるより、友達みたいにしてくれる方が、ずっといい」
そう言って微笑むと、二人は少し惚(ほう)けた顔をしながら首を縦に振った。
「……分かった」
「……分かりました」
「あ、敬語もナシな?タメだろ?」
都築だっけか?に言うと、少し迷っていたようだが、うんと頷いてくれた。
「だったら、いいよ。ヨロシク」
「遅かったな。何か話してたみたいだが」
隆盛の言葉に、俺より先に奏が反応した。
「聖夜の親衛隊でしたよ。公認してくれって。な?」
「うん、まぁ」
「公認したのか?」
「ん?うん。友達としてならって」
「しろっちらしいね~」
木宮先輩がははっと笑う。
「聖夜、モテモテみたいですよ?これから大変ですねー、会長」
ニヤニヤ笑いながら言う奏を、ジロリと隆盛が睨んだ。
奏は気にするでもなく、うまー!とケーキを頬張っていたけど。
「隆盛の親衛隊って、公認してんのか?」
「いや」
「相楽先輩や木宮先輩は?」
「してるよ~」
「してる。隆盛のとこは公認してない分、過激派が多いんだよ」
そうなのか……。
「公認すると、会議とかに参加しなきゃならないから煩わしかったんだ。
まぁ、そろそろ公認して統制執らないとな」
「その方がいいんじゃない?」
「そのうち隆盛んとことしろっちのとこ合併したりしてね~。
あのお姫様抱っこから二人の噂すごい広まってるみたいだし、二人のこと認めてさ」
なんて木宮先輩の発言に、みんな一様に頷いていた。
え、そんな噂広まってるんですか。
ん、でも…認めてくれたら…嬉しいかな。
「もー食えない」
「いや、あんなけ食ってりゃ充分だろ」
「町田くんと二人、スゴい量のケーキだったよね……」
確かに奏と二人でケーキは半分以上全種類制覇した。
30種類ぐらいあったかな?
楽しい時間は経つのが早いもので、今は夜の8時。
パーティーは9時で終了だけど、なんだか眠くなってきたので、俺たちは一足早く寮へと戻ってきた。
途中から奏と肇と葵は自分のクラスの奴らと盛り上がっていたし、隆盛たちもそれぞれクラスの人に呼ばれてそっちに行った。
「今日は?会長んとこか?」
「うん。先部屋入っとけって」
「そういえば聖夜、部屋どうするの?生徒会用に移るの?」
「あー、うん。隆盛たちがそうしろって」
亮平たちの近くで良かったのになー。
でも、今や拒否する理由もないし。
「まぁ、生徒会役員は八階って決まりだからな」
「いつ?」
「明日。休みの間に移動しとけって」
土日に学祭がかぶっていたため、月火と振替休日になっていた。
荷物まとめなきゃだな。
三階で降りる2人におやすみー、と告げ八階で降りる。
隆盛の部屋の前に着き、ポケットからカードキーを取り出した。
隆盛にもらった、スペアキー。
なんとなく、頬が緩む。
マメはすでに夢の中。
お気に入りのカゴの中でスピスピ鼻を鳴らしながら寝ていた。
適当に隆盛の服を借りて着替え、ソファにドサッと仰向けに寝転がる。
あー、眠い。
あくびひとつ。
自然と瞼が降りていく。
……隆盛が…帰ってくる…まで……起きて……な………きゃ…………
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