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ー年上ー
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「ねぇ、翔」
「ん?」
「明日の夜開いてる?」
「明日?いいけど」
「よかった、実は話があるんだけど」
「うん、いいよ」
「じゃ、7時に迎えに行くよ」
「オッケー」
友達の冬矢と別れ、背中を向けた瞬間悲しく微笑んだ
冬矢はすごくいい人で、いつも俺の傍にいてくれる
嫌いではないし、俺も好きかな・・・・なんて思って・・・・でも
俺の返事は決まっていた
いつもそう
いままでの人達と同じ返事しか俺には返せないから
眠れない夜を過し、いつまで一番鳥の鳴き声を聞いて朝を迎えなければいけないのかな
そして今夜も庭に出て、ぼんやり空を見つめていた
「風・・・・・・」
久しぶりに風を見た
庭の木々が揺れる
それはまるで・・・・・・
「わかってる・・・・また今回もさよならで終わるよ」
小さな声で呟き、瞳を閉じた
「冬矢はさ・・・・和海と同じ顔だけどやはり違うよね・・・好きになれるかなって思ったけどね・・・・やっぱり違うんだ」
風がそっと髪を撫でる様に吹き抜けた
「そうだ、あのね・・・・和海に手紙を出したんだ」
「ほら、二人で一緒に暮らしていた薔薇のアーチにあるアパート・・・・・二人で決めたお気に入りの場所」
「あのアパート、来週取り壊されてしまうんだって・・・・・・悲しいな」
初めて結ばれた場所
忘れられるはずがないよ
「昨日ね、和海のママに会ったよ・・・・・」
「そして言われたんだ・・・・・もう和海の事は忘れてくれって」
「無理だよね・・・・・そんな事出来るわけがないよ・・・・・忘れられる方法があるのなら教えてよ」
風を受けながら、話を続けた
きっと俺の隣には和海がいてくれているんだ
「ねぇ、和海・・・・・俺、今日で和海よりひとつ年上になっちゃったね」
「時間てさ、形のない生き物みたいだね・・・・・・俺はこれからも生き続けて和海より年上になって和海は年をとらない・・・・・でもねっ・・・・」
「でもっ・・・・・和海以外の人を好きになんてなれないよ・・・・和海は怒るかも知れないけど・・・・無理だよっ・・・・・っ」
膝を抱え、また泣いてしまった
和海が土の中で眠り続けてからずっと泣いてるんだ
「どうして俺だけ置いていくんだよっ!!」
泣いても和海は戻らない
でもっ・・・・・まだ好きで好きで・・・・・たまらなく好きで
「夜明けだね・・・・・・大丈夫、冬矢への返事は決まってるから心配しないで」
「今日、和海の好きな花を買ってくるね・・・・だから・・・・だから」
「お願いだからもう一度俺の前に現れて微笑んでよ!愛してるって言って抱きしめてよっ!!」
「・・・・・和海っ・・・・・寂しいよ」
本当は後を追って死んでしまおうとしたけど出来なかった
だって、和海との最後に交わした約束は
和海の分まで生きて欲しいと言う約束だったから
だけどね・・・・・その約束は俺の為かも知れないけど
俺はすごく辛いんだよ?
俺はそんなに強くないんだ
和海がいたから生きられたのに
その和海がいないのなら意味はないよ
ゆっくり立ち上がり、紫色の空を見上げた
俺だけが時間の中に取り残されてるみたい
これからも・・・・・きっとね
ー完ー
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