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何となく無言で歩きながら、数時間前に下りてきた坂道を今度は上っていた
「この町はいいね」
「んっ?」
「俺は好きかな」
「えっ?」
「町の雰囲気」
「あはは・・・・うん、よかった」
町の雰囲気が好きだと言われて勘違いしてしまうなんて馬鹿みたいだ
ホント、恥ずかしすぎる
「あっ、ここだよ」
「うん」
俺の住んでいるアパートは2階建ての古い建物
そんなに広くは無いけど、窓から見える海の景色が気に入っている
ポケットから鍵を取り出し、白いドアの鍵を開けた
「どうぞ」
「ありがとう」
部屋の中は至ってシンプル
あるのは、ソファーとベッドとテーブルだけ
木製の床を歩くと、少しだけ軋んだ音がする
出窓には小さな向日葵の鉢植えと白いカーテン
「あっ、何か作ろうか?」
「大丈夫、具合が悪いなら寝た方がいい」
「いや、もう大丈夫」
「顔色が悪いけど」
「俺って飲むと顔色が悪くなるからさー」
「そう」
「そそ、だから平気だ」
「うん」
「座って」
楓にソファーを勧め、窓を少し開けて俺はベッドに腰掛けた
「海の香りがする」
「嫌い?」
「嫌いじゃない」
「ならよかった」
「アサはずっとこの島に?」
「うん、この島を離れたくないから」
「そう」
「楓は?」
「俺には故郷がないから」
「えっ?」
「気付いたら色々な町でギターを弾いていたかな」
「そうなんだ」
何だろう
すごく悲しい
「どうしてそんなに悲しい顔を?」
「ごめん・・・・・」
「もしかして俺のせい?」
「ホントにごめん・・・・・同情とかじゃないんだ、でも何だろう・・・・すごく悲しい」
俯いたまま、何を話していいのかわからないまま時間だけが過ぎて行った
「じゃ・・・・・」
「ん?」
「アサが俺の故郷になって?」
「えっ・・・?」
「嫌?」
「そ、そんな事・・・ないけど」
「ありがとう」
「でも、どうすれば」
「それを今から教えようか?」
「えっ・・・・・・うん」
その言葉の意味は何となく理解出来た
楓がソファーから立ち上がり、俺の隣に腰掛けるのとほぼ同時に心臓が高鳴った
「ずっと俯いてるの?」
「・・・・・・・えっ・・・・・んっ・・・っ」
顔を上げた瞬間、抱き寄せられて激しく舌が絡み付いてきた
「んっっ・・・ふ・・・っ」
どうしよう
キスは初めてじゃないけど
俺は夢中になって背中に腕を回していた
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