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色々と考えてみても無駄だと思った
この母親の性格上、適当に嘘をつかれてスルーされるに違いない
まともな会話が出来ない人だからね・・・・・・だったら・・・・・
部屋に戻って来た母親に静かに尋ねた
「どこから?」
「知り合いから」
「へぇ・・・知り合いに借金?」
「盗み聞きしてたなんて・・・・葵には関係ない話でしょ、それより早くお金を」
「知り合いなら待ってもらえばいいんじゃない?どこの家でも無い時は無いんだから」
「急に必要になったって・・・・・だからお金を」
いつもならこの辺で金を渡してしまうところだけど・・・・・
「いいから、話せよ」
「何を」
「どこから金を?」
「・・・・・・・・・・・・だから知り合いだって言ってるで・・・・」
「嘘はいい!」
どこまでも嘘をつきたいのかよ
苛立ちながらつい大きな声で叫んでしまった
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「借金してるのはもうわかってるんだからさ、どこから借りたのか言えよ」
「最初は電話が掛かって来て・・・・」
「うん」
「面倒な手続きは必要ないからって」
「・・・・・・・・・・・それって闇金じゃないの?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
さっきの慌てぶりを見ればわかるけどね
「それで、いくら借りていくら返済してるの?」
「最初は1万で返済は倍の2万」
「今、いくら借金してるの?」
「わからない」
「何それ」
「とにかくお金を頂戴!早く銀行へ行かないと家に来るって」
「まだ時間はあるだろ、話が先だ」
「もういいでしょ」
「いいわけないだろ?金を渡してるのは俺なんだから」
「今まで育ててあげたでしょ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
親にそんな事を言われる日がくるなんてね
育ててあげただと?そんな風に考えるのならどうして俺を生んだ?
旅行や意味不な健康食品に払う金は惜しまないくせに・・・・ホント笑える
「早くお金を頂戴!!」
「だったらいくら借金してるのか話せよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
しばらくの沈黙の後、変に逆切れしながら全て話した
呆れると言うか、言葉も出ない
「保険金は?」
「だからもう無いって言ったでしょ」
「旅行の後も、散々遊びまわってたしな」
「寂しかったのよ」
「・・・・・・・よくいうよ」
寂しいから遊びまわってただと?
そんなに寂しそうには見えなかったけどね
「話したからお金を早く」
「無い」
「ふざけないで!もうっ!本当にあんたが女だったらよかった」
「何でだよ」
「女なら体で稼げるでしょ」
「・・・・・・・は?」
なんだこいつ
自分の子供だと言う自覚すらないのかよ
体で稼げとか・・・・情けなくて言葉も出ない
「ひとつ聞くけど」
「何」
「俺が生まれた時、何を思った?」
「別に」
「じゃ、どうして生んだ?」
「生みたくなかったけど、あんたを消すお金がなかったのよ」
「わかった」
ようするに俺は、望まれて生まれたわけではないって事か
消すって何だよ
人を落書きみたいにさ
そんな奴の為に、俺は金を渡してたのかよ
決して綺麗な金ではない
流れる場所も汚いところに消えるって事かよ
「悪いけどあんたの事はもう母親だとは思わない・・・・だからもう家には来るな」
「何言ってるの?今までの恩を・・・・・」
「普通の親なら当たり前の事だろ?恩ってなんだよ」
「とにかく早くっ!!」
「やめろ!」
こいつはバケモノなのか?
半狂乱で俺に掴みかかってくる
爪が食い込んだ腕から血が滲んできた
「全部あんたのせい!あんたがいなければこんな事にはならなかった!!」
何だよそれ
全て俺のせいって意味がわからない
俺、こいつになにかやったか?
子供の頃だって、欲しいものがあっても我慢して来たのに
クリスマスも誕生日も我慢して・・・・・・
普通の家庭ってやつすらわからないまま生きてきたのに
「早くお金を渡せ!!」
「いい加減にしろ!」
そう
俺は落ち着けと言いたかっただけ
そう
軽く腕を振りほどいただけ
なのに
手が離れた瞬間
床に散らばっていたビニールに足を滑らせて
無重力の中にいるような感じで
体が宙を舞い
鈍い音がした
ほんの数秒がとても長く感じた
「もういい、金は渡すから全部返済・・・・・おい!」
人間ってこんなに簡単に壊れるなんて聞いてない
血もでていない
でも、動かないのはどうして?
「おい!母さん、母さん!!」
何度も何度も呼んだよ
体を強く揺すったりしてね
でもね・・・・全く動かないんだ
そっと口元に手を当てても
息をしていないんだ
俺は慌てて救急車を呼ぼうとして電話を持った瞬間
相当慌てていたらしく、机を蹴飛ばして倒してしまった
床に散らばる封筒や手紙・・・・そして見たんだ
たくさんの催促状に紛れていた一枚の写真をね
そこには父親でもない奴の隣で笑う厚化粧の母親が写っていた
日付は1年前
葬式の後
しかも明らかに年下
「・・・・・・・・・・・・・」
旅行+若い愛人かよ
金が無くなって当たり前だ
男にも金を渡せなくなって捨てられて、捨てられた後には借金しか残っていなかったって事かよ
「・・・・・・・・ははっ」
俺は何の為に今まで生きて来たんだろう
今まで生きてきた事が全て無意味に思えた
こんな奴のおかげできっとこれからの人生はもっと無意味な人生になるんだろう
事故でも殺人には違いない
だれも証明してくれる奴はいない
罪は罪
親殺しと言う重い罪
電話を握り締めたまま呆然としていた
母親は全く動かないまま1日経過した
救急車は今更呼べない
どうしてすぐに呼ばなかったのかと後悔しても遅い
ただ
怖かった
怖かったけど、あんな話を聞いた後だから心が揺らいだ
親が死んでいるのに悲しくないのは何故だろう
もしこいつがまともな母親だったら、俺は家を出る事も無く今もまともな学生だったのかも知れない
自分が悪いのか?
もちろん全てこいつのせいにするつもりはない
だけど・・・・・・
こいつの為に今以上の地獄を見るのもごめんだ
警察に自首してちゃんと話せば・・・・・だめだ
警察は俺の話なんかまともに聞いてはくれないだろう
それに今の仕事がばれたら尚更だ
俺はずるくて小さい人間だ
だから逃げる道を選んだ
みんなは馬鹿だと俺を罵るかも知れない
世間は意外と冷たい事も学んだ
親を殺した俺の人生はきっと最悪なんだろう
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