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顔色が悪い湊を見つめ、そっと尋ねた
「大丈夫か?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
大丈夫な訳が無いよな
隣に居る人間は母親を殺して埋めた人間なんだから
ある意味覚悟は出来ていた
話をしながらずっとそんな事を考えていた
「湊」
「その傷は・・・・?」
「ああ、これか」
腕に残る傷を見つめ、話を続けた
真夏の太陽に苛立ちながら花壇に水をまいていた
あの犬は相変わらず油断すると隣を抜け出し家の花壇を掘ろうとしていた
最初は手なずける事を考えたが、無理そうだ
隣の人は、庭でリードを外して遊ばせていたので毎日神経が苛立った
隣の人が目を離した隙に塀を飛び越えて家の花壇に入り、その度に犬を連れて行く
それが堪らなくいやだった
だから俺は・・・・・・
隣の犬が庭に入るのを待ち、静かに立ち上がった
犬は必死に土を掘ろうとしていた
そして・・・・・・
「いっ!!」
「きゃー!!」
いつものようにいなくなった犬を連れに来た隣の人は、腕をかまれている俺を見て悲鳴を上げた
「ど、どうしよう・・・ごめんなさい」
犬はすぐに離されつながれた
俺の腕は、思い切り噛み付かれた傷口から血が流れ落ちていた
「本当にごめんなさい・・・・どうしたら・・・病院へ」
「いえ」
「噛み付くような犬じゃないのに・・・・ホント、どうしたら」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「とにかく傷の手当を」
「自分で出来ます・・・でもごめんなさい」
「えっ?」
「保健所へ連れて行けとは言いません・・・でも、俺もう怖くて」
「そうよね・・・・・また他の人を噛んだりしたら」
「申し訳ありませんが他の飼い主を見つけていただけると」
「わかったわ、本当にごめんなさい」
泣きながら庭を出て行く後ろ姿を見つめ、溜息をついた
ごめんなさいは俺の方
わざと噛まれるように思い切り尻尾を掴んだ
なかなか噛み付かないからしつこく尻尾を掴んだのは俺
犬が悪いわけではない
でも、これ以上不安材料が増えるのは困るんだ
その日の夜、二人でお詫びの品を持って家にやって来た
犬は田舎の親戚が引き取ると言っていた
「これは治療費に」
そう言って封筒を渡されたけどそのまま返した
「いえ、そこまでしていただかなくても」
「しかし」
「俺のほうこそごめんなさい・・・・可愛がっていたのに」
「いや、人間を噛むような犬ではないのですが訓練を受けさせてから親戚に渡そうかと」
「そうですか」
俺はまた罪を犯した
なんの罪もない犬に対してね
「お母様に事情を説明してお詫びをしたいのですが、連絡はとれますか?」
「いえ、そこまでしていただかなくてもいいです・・・・母も犬が好きですし今回の事はもう忘れましょう」
「しかし」
「怪我も大した事はありませんし、保健所だけは止めてあげて下さいね」
「本当に申し訳ありませんでした」
「もういいですから」
何とか疑われないように話を作り、帰ってもらった
大した怪我じゃありません・・・か
病院に行けば縫われるレベルだけど仕方が無い
そして隣の人もそのあとすぐに引っ越してしまった
どうやら奥さんが犬と離れたくないとごねたらしい
まぁ・・・結果オーライかな
そして3年が過ぎても両隣は空き家のままだった
俺もそろそろ仕事をしなければいけないな
そんな事を考えながら、深夜の街へ行き今の店のマスターと知り合った
その後、数回同じ店で顔を合わせ何となく話をするようになり、店で働かないかと誘われた
正直、戸惑いはあった
家を空けるのが怖かった
母親は、近所との付き合いが無かったので遊びに来る人はいなかったけどやはり心配だ
でも、仕事をしなければ生活は出来ない
こんな俺なんか死んでしまってもいいのにまだ生への執着がある事に笑えた
毎日そんな事を考えながら後悔だけを背負って息をしていた
だったら罪を償えと言われればそれまでだけどね
今更警察に行くぐらいならばれるまで生きて、そのまま死のうと考えていた
ホント、汚い奴だよね
虫以下の人間だ
毎日、相変わらず混沌とした生活
そして湊と知り合った
好きになってはいけないと思いながら
ズルズルとここまで来てしまった
ホントにどうしようもない人間だ
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