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「あーーーーどうしよう」
働いていた会社の社長が夜逃げしたと連絡が入ったのは今日の午後
小さな会社だったけど、俺は好きだったしみんないい奴ばかりだった
でも、あるミスで信用を失った為に仕事が激減してここ3ヶ月給料が先延ばしされていた
みんなどんどん辞めて行き、最後に残ったのは俺と古くからいる社員数人だけ
来月は必ずと言ってくれた社長の言葉を信じていた・・・・と言うか昨日も社長は明日給料を払うと言ってくれたはずなのに
だから家賃も何とか必死に頼み込んで今日の給料で払うはずだったのに
「マジかよ・・・・・・」
こんな事なら買い物しなければよかった
食材を買って帰りに銀行に行っても給料が振り込まれていないので会社に電話をしても誰も出ない
もちろん社長にもかけたけどね
そして最後まで残っていた社員から午後に連絡が入って一気に力が抜けてしまった
家賃今日中に振り込まないと出て行かなければいけないのに・・・・
と言うか、その後住む場所すら決まっていないのに
「どうしよう・・・・・・」
公園のベンチに座り、溜息をつきながら考えていた
でも、考えても結局最後は金が必要だと言う事だ
すぐに寮付きの仕事が見つかるとは思えない
ホント、マグロ漁船行きになるかも
人間てわからないよな
昨日まで笑顔で俺達と話をしていた社長が、俺達を捨てて逃げるなんてさ
あの笑顔は俺達を信用させて逃げるための芝居だったのかよ
信じた俺が馬鹿だった・・・・でも、最初から疑いたくはなかったから
自業自得と言う事か
「おねーさん、遊ばない?」
「は?」
「なんだよ~!男かよっ!!」
「勝手に間違えてがっかりされても困るんだけど」
「でもいいや、おにーさん遊ぼうよ」
「忙しい」
「よく言うよ、ずっとここにいたくせに」
「考え事をしていたんだ」
「まぁいいじゃん!行こうぜ」
「お断りだ」
「冷たいな~!てか、おにーさん綺麗な顔してるじゃん」
「は?」
「予定変更ー!ホテル行こう」
「馬鹿か?」
相手にしていられるか
無言で立ち上がろうとしたら、後ろから肩を掴まれた
「へぇ、確かに女より綺麗だし男でもやりたくなるな」
「ふざけるな!」
「ムリムリ!俺達は三人なんだよ?逃げられないし殴られたくなかったら大人しくやらせろよ」
「殴られたほうがマシだ」
「だったら殴りながら犯してやるよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
酔ってるのか?
でも、危なそうな奴らだ
「離せ!」
「無駄だって!」
「いい加減にしろ!」
「いいねー、もうこのままここでやろうぜ!」
「だな」
「は?ふざけんな!!」
「ふざけてなんかないけど?」
「おいっ!やめろ!!」
こいつらマジだ
両手を押さえつけられて身動きが取れない
「離せっ!」
「いやがる顔が泣き顔になるところを見たいぜ」
「早くしろって!」
「わかったから後ろを向かせて押さえつけろ」
「ああ」
「止めろっ!離せっ!!」
ついてない
社長は夜逃げして給料は入らない
今のアパートは追い出される
仕事も無い
そして今度は男に犯されるのかよ
なんだか泣きたくなってきた
「クソッ!!」
「もう泣いてんの?」
「黙れ!!」
死にたいと考えた事は無かったけど、今は死にたい
もう抵抗する気力もない
「邪魔だ」
「あ?・・・・って胡月」
「そこのベンチは俺の予約席だ」
「じ、じゃ・・・向こうへ行きますので」
「ほら、来い!」
「そいつも置いていけ」
「えっ・・・・・」
「嫌なのか?いい度胸だ・・・・誰から死にたい?」
「ひっ!!い、いえ・・・ごめんなさいっ!!」
「やばいよ・・・・こいつ人を殺したとか聞いてるし・・・逃げるぞ!!」
「あっ、待て!置いていくなって!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
もしかして助かった?
乱れた服を直し、ベンチに腰掛けて煙草に火をつけた奴を見つめた
長い髪で顔は見えなかったけどね
「ありがとう・・・・・ホント、助かった」
「座れば?」
「えっ?」
そう言ってハンカチを渡してくれた
「あっ、ごめん」
やだな・・・思い切り泣いてるし
泣き出したら止まらなくなってきた
いろんな事が頭の中に浮かんでもう・・・・やだ
「一枚では足りなかったな」
「ごめん・・・洗って・・・あっ」
「別にいい」
洗う場所ももうないのに
「落ち着いたら早く帰ったほうがいい」
「帰る場所・・・・か・・・ははっ・・・・ううっ・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・話して気が紛れるのなら聞くぞ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
話してもどうにもならないけど、もう一人で考える事にも疲れきっていた
「大した話じゃないんだ・・・・」
「ああ」
俺は、今までの事を顔も知らない奴に話した
ずっと泣いてるから顔も見ていないし
「成程」
「ホント、聞いてくれてありがとう」
「それは?」
「ああ、食材」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「お前が?」
「あっ、俺はアサ」
「胡月だ」
名前を言っても仕方ないけどつい
「帰る所がないのなら、家に来るか?」
「えっ?」
「お礼は食事を作ってくれればいい」
「でも」
「来ないのなら俺は帰る」
「えっ・・・・」
どうしよう
でも、アパートに帰っても出て行けと書かれた紙が貼ってあるだけだしね
今までも家賃を滞納した日に張り紙があった
大家さんが隣に住んでいるから仕方ないけどその大家さんもそろそろ限界だろうし
でも、さっきあいつらが言い残した言葉は・・・
「ちなみに俺は犯罪は犯してはいない」
「あはは・・・・だよね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「そんな人には見えないし」
「行くぞ」
「あっ、じゃお言葉に甘えて」
「ああ」
そして髪をかきあげながら立ち上がった時、初めて顔を見た
「・・・・・・・・・・・・・・・・・えっ」
「どうした」
「いや・・・ごめん、一瞬月の女神様に見えた」
「男だけどね」
「じゃ、王子様だな」
でも、本当に綺麗な顔だったから驚いた
空に浮かぶ満月の下で見た胡月は
本当にそう見えたんだ
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