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燕羽はお腹が一杯になった途端、ものすごく眠そうな顔をしていた
「もう寝ろ」
「でも」
「俺は少し出かけてくる」
「えっ?」
「すぐ戻るから安心しろ」
「だけど」
「早く日本に行きたいだろ?」
「はい」
「どうやらパスポートが出来上がったらしいので貰いにね」
「パスポート・・・・でも、俺」
「一応言っておくが勿論偽造だ」
「えっ・・・」
「大丈夫、ばれる事は無い」
「でも」
「嫌ならこのまま残るか?」
「それは嫌です」
「だったら日本に着くまで我慢しろ」
「そうじゃなくて・・・・冬矢さんが警察に捕まったら」
「警察?なんだそれは」
「なんだって・・・・警察は警察ですよ」
「俺は今まで一度も警察に捕まった事は無いし、今の時代は金で警察も動かせる時代なんだよ」
「えっ・・・・・」
「とは言っても、全ての警察ではないけどね」
「・・・・・・・・・・・・・・ホントに大丈夫ですか?」
「ああ、1時間で戻るけど、先に休んでおけ」
「今日じゃなければいけませんか?」
「早くこの国から出たいだろ?」
「でもっ・・・・何だろう、変な胸騒ぎが」
「気のせいだ、だから早く寝ろ」
「冬矢さんっ!」
「どうした?」
突然背中に抱きついてきた燕羽の手を握り締めて頭を撫でた
「心配性だな、俺は無敵だ」
「でも・・・・・・」
「明日は買い物でもしよう」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「じゃ、行って来る」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・冬矢さん」
一体どうしたんだ?
永遠の別れでもないのにおかしな奴だ
でも、もう動き回る元気は無いだろうし、大人しくしているだろう
「じゃ、明日を楽しみにしてろよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そのまま部屋を出て、チャイナタウンに向かった
ここは色んな人種が住んでいる
アメリカなのに異国のようだ
色々な人種が住んでいるのか、陽気な感じもする
しかし、一歩路地を外れたら危険な場所だ
雰囲気もかなり変わる
和海から送られてきた地図を見ながら、廃ビルのような場所にやって来た
「ここか・・・・・」
そのままビルの中に入ろうとしたら杖をついた老人に声をかけられた
「どこへ行く?」
「答える必要性はあるのか?」
「あるね・・・・あんた日本人だろ?」
「ああ」
「何しに来た?」
「買い物だ」
「・・・・・・・・・・・・・・冬矢か?」
「ああ」
「話は聞いている、着いて来い」
ビルの中ではなかったのか
紛らわしいな
そしてさらに細い路地に入り、占いと書かれたドアを開けた
いかにも怪しそうな部屋だ
この煙は幻覚作用があるらしいけど、俺には効かないな
老人は奥の部屋から汚い紙に包んであるものを差し出した
そのまま確認して、内ポケットに入れた
「1000ドルにまけておくよ」
「戯言もいい加減にしろ」
「ちっ・・・・・薬は効いていないのか」
「金は先払いで受け取っているだろ?騙す相手が悪かったな」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「老人だからと言って容赦はしない・・・・・今すぐ消えろ」
「わ、わかった」
ここでは誰も信用出来ない
店から出て行こうとしている老人の背後に立ち静かに見つめた
「おっと・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ふらついて倒れそうになった老人を仕方なく支えたと同時に後悔した
「・・・・・・・・・・・・・貴様」
「甘いな、この杖は仕込み杖だ」
安っぽい杖は鋭い刀になっていた
そして俺の体を貫通している
「あははっ、馬鹿な奴だ!金をたんまり持っていそうだな」
背広のポケットを探る老人を抱き寄せて、体を撃ち抜いた
「お前も同じだろ」
「ぐはっ!」
血だらけで横たわる死体を蹴飛ばし、体に刺さっていた刀を抜きテーブルクロスを引き裂いて思い切り巻きつけた
「・・・・・・・・・・・早く戻らないと」
ふらつきながら歩き、タクシーを拾い途中で新しい服を買ってホテルに戻って来た
タクシーの運転手に金を渡し、服も着替えた
エレベーターに乗り、壁にもたれながら傷口を押さえ肩で呼吸した
もう少しだけ・・・・・・
まさか幸せを掴んだ瞬間、俺は消えるのか?
でも、まだやらなければいけない事がある
エレベーターを降り、和海に電話をかけた
(冬矢、どうしました?)
(・・・・・・・・・・・・・お願いがあるんだ)
(えっ?)
(今、俺の部屋に燕羽と言う奴がいる・・・・そいつは俺が・・・・一緒に日本に・・・・)
(冬矢!貴方まさか怪我を)
(傷からいって俺には余り時間が無い・・・・・だから和海・・・・・燕羽を迎えに・・・・そして・・・・後は言わなくてもわかるよな?)
(誰にやられたのですか?)
(ひ弱そうなじじいだよ・・・・)
(まさか・・・パスポート?)
(ああ、これだから強欲じじいは困るよな)
(もう喋らないで・・・・今すぐ向かいますので、それまで・・・・冬矢?)
(ああ・・・・・そうだな)
(約束ですよ?私が行くまで必ず・・・・)
(燕羽の顔が見たいからもう切るよ)
(冬矢!!)
携帯をしまい、最後の力を振り絞って部屋に戻って来た
燕羽は楽しい夢でも見ているんだろうか?
何となく笑っているようにも見える
その夢に、俺は居るのだろうか?
居れば嬉しいな・・・・・
「ごめんな・・・・・どうやら約束は守れないようだ」
情けないな
こんな事で死ぬのが堪らなく悔しいよ
「和海にならきっとお前を任せても大丈夫だろう・・・・・・またお前を泣かせてしまうんだろうな・・・・・・ホントにごめん・・・・・・幸せにしてやれなくて・・・・・ごめん・・・・・桜も紅葉も一緒に見る事が出来なくて・・・・・ごめん・・・・・・・燕羽・・・・・・幸せになれ・・・・・愛してる」
眠っている燕羽に最後のキスをして、パスポートと財布をテーブルの上に置いて、そっと部屋を出た
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