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それから数日が過ぎ、燕羽は和海の会社で働く事になった
英語が出来る人間が欲しかったらしいけど、全く日本語は書けないからついでに日本語の文字も勉強しているらしい
冬矢はまだ帰って来ない
和海も毎日必死に捜しているらしいけど手掛かりが全く掴めないと嘆いていた
俺は一応高校生なので仕方なく学校へ行く毎日
楽しいと言えば楽しいかも知れないけど、やはり同い年の奴らはつまらない
燕羽にばれないように学校から戻るとすぐに私服に着替え、いかにも仕事をしていましたという素振りを見せた
でも、最近面倒臭い・・・・・まぁ、俺が悪いんだけどさ
こんな事なら最初から俺が弟になっていればよかった
「翔様、楓様がお見えになりました」
「わかった」
楓と会うのは何日振りかな
毎日忙しそうだし、久しぶりだから嬉しいかも
「久しぶり」
案内されてリビングにやって来た楓は相変わらずお洒落でカッコよかった
「楓、元気そうだね」
「うん、昨日ツアーが終わって今週はオフだから」
「だから昨夜和海が外泊した訳ね」
「ふふっ」
和海の恋人の楓は外見とは違い、少し・・・・いやかなり変わり者の恋人
でも、すごくいい人だから俺は大好き
「お土産をね・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・う、うん」
来た
地獄タイムだ
楓のお土産は毎回すごすぎて泣ける
「はい、きっと気に入ると思うよ」
「・・・・・・・・・・と言うかもう足が見えてるけど」
「ホントだ」
苦笑しながらお土産を受け取り、絶句した
「えっと・・・・・蟹?」
「そうだよ、タラバガニの帽子」
「・・・・・・・・・・・へ、へぇ」
「かぶってみて?きっとよく似合うと思うよ」
「・・・・・・うん」
めちゃ複雑
蟹の帽子が似合うと言われて喜ぶ奴がいるのか?
しかも帽子にはリアルな蟹の足が8本ついてるし、泣きそう
動く度に足と目がびょんびょん動くし正直気持ち悪い
「やっぱりすごく似合うよ」
「・・・・・・・・・・・うん」
でも、楓は本当に悪気は無いから困るんだ
素直に喜んでくれてるし
「ただい・・・・・うわっ!」
燕羽が帰って来た
楓と会うのは初めてだけど、楓は和海から話は聞いているはずだ
「おかえり」
「う、うん・・・・あの」
「はい、燕羽にも」
「あはは・・・・・・えっと・・・・・」
記憶を摩り替えた時に楓の記憶も入れた
会うのは初めてだけど大丈夫そうだな
「燕羽には毛ガニにした」
「なんだろう・・・・すごく・・・・・グロテスク」
「かぶって?」
「えっ・・・・・う、うん」
怖々と帽子をかぶる燕羽を笑顔で見つめる楓
俺は笑いを堪えるのに必死だった
「ど、どう?」
「すごくいい!」
「えっ・・・・マジ?」
「うんうん」
ヤバイ・・・・
変すぎ!!
変に似合いすぎて思い切り吹き出しそうだ
「翔、どう?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・ぶはっ!!あははっ、もうだめーーー!!ヤバイ、それ、あはは・・・腹いてぇ!!」
「!!!」
我慢出来るわけがない
だって足が動いてるしリアルだし
・・・・・・と言うか、俺もかぶっているから笑えないんだけどね
「それとね・・・・」
「まだあるの?!」
「勿論」
最悪だ・・・・・
次ははさみの形をした手袋だったらどうしよう
「はい!蟹プリンーーー!」
「・・・・・・・・・・えっ?」
「蟹?」
「すごくたくさんあったから全部買って来た」
いやいや、それは売れ残っていたんだよ・・・・と和海が教えろーー!!
「食べようよ」
「えっ・・・」
「はい、燕羽も」
「う、うん・・・・・」
さすがに顔が強張ってるし
そりゃね・・・・・
「美味しいよ?」
「そうなんだ」
「俺、昨日10個食べたけど和海は半分食べてこんなに美味しいものを全部食べるわけにはいかないって俺に譲ってくれたし」
「へぇ」
それは、押し付けられたと言うんです
学習しましょう
「早く食べてみて!」
「う、うん・・・・いただきます」
「いただきます」
パッケージからして怪しい
めちゃくちゃ怪しい
しかもプリンなのに蟹身入りって馬鹿じゃないの?
こんな事を考える奴が楓以外にもいたなんて驚きだ
仕方なくスプーンですくい、一口食べた
「どう?」
「うん・・・・甘い」
「うんうん」
「すごく甘い茶碗蒸しみたい」
「でしょ?すごいよね!!画期的な発明だよね!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・おいしい!!」
「えっ・・・」
「でしょー?」
燕羽・・・・お前の味覚大丈夫か
すごく心配だ
俺は言葉が出ない程
すごく・・・・・・まずいです
「冷やすともっと美味しくなりそうだから冷やして夜にでも食べる事にするよ」
「俺も!」
「うん、わかった」
何とか逃げる事が出来た
茶碗蒸しが嫌いになりそうだ
今夜、和海に責任を持って食べさせよう
「ごめん、俺明日までに仕上げなきゃいけない資料があるからこれで」
「うん、頑張れよ」
「ありがとう、じゃ・・・楓、美味しいプリンご馳走さま」
「またね」
燕羽が部屋に向かうのを見つめ、楓と庭を散歩した
「冬矢の事・・・・・聞いたよ」
「うん」
「俺の前では笑顔だけど、その笑顔が痛々しくてさ・・・電話が掛かって来た時、俺も一緒に行きたかったけど、ごめん」
「ううん、気にしなくてもいいよ」
「ツアー中、ずっと気になっていたんだ・・・・なのに」
そう言って泣き出しそうな楓を抱きしめながら俺もそっと涙を拭った
「そっか・・・・」
「彼が冬矢の?」
「そうだね」
「昨日和海が言ってたよ」
「何を?」
「嫌がる冬矢を海外に行かせるんじゃなかったと、すごく後悔してた」
「でも、冬矢はそうでもしないと休まないから」
「うん」
「それに、今まで恋人を作らなかった冬矢が燕羽と知り合って人を好きになった」
「そうだね、それを聞いた時は驚いた」
「俺も」
芝生の上を歩きながら、池で泳ぐ白鳥を見つめた
この池は、冬矢が作らせたもの
白鳥の為にわざわざね
動物は裏切らないと言っていた冬矢
その証拠に、毎年同じ白鳥がこの家に戻って来ていた
毎年数が増えていく白鳥をいつも冬矢は優しい目で見ていたっけ
「燕羽に会うのは初めてだけど、俺何となく好きになった気持ちがわかるよ」
「そっか」
「うん・・・・・」
「言ってもいいよ」
楓は何かを言いたそうだった
「燕羽ってさ」
「うん」
「小動物系だよね」
「・・・・・・・・・・だね」
「うん」
「うん」
同じ事を思っていたらしい
確かに燕羽はそんな感じ
あいつを嫌う人なんかこの世にいるのだろうか・・・と思えてしまう
実際、楓も気に入ったみたいだしね
「じゃ、帰るよ」
「うん、お土産ありがとう」
「早く見つかるといいね」
「うん」
「じゃ」
「またね」
「また」
「・・・・・・・・・・・・・それと」
「ん?」
「翔も無理して俺の前で笑う必要はないから」
「楓」
「寂しいじゃない・・・・何となくさ」
「わかった、ごめんね」
「ううん、じゃ」
「うん」
燕羽の前では俺も和海も無理して笑っていた
泣きたい時は、一人の部屋で泣いていた
そんなに簡単に忘れられるはずが無い
当たり前だよね
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