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第14章―魂の在りか―10
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「では、まさにそれが今だと言うわけですか――?」
「ああ、信じがたいがそう言うことになるだろう」
シュナイゼルはお酒を全部飲み干すと、ボトルのフタを閉めた。
「私は正直、奴等の襲撃を疑っていた。国に到着した時に、人混みの中にあいつらの姿はなかった。万が一と思って警戒していたが、特に何もなかった。だから私はこのまま上手くやり過ごせると思ったんだ。だが、城からの急な呼び出しに私は胸騒ぎがした。まさかとは思っていたがあの者はこれの事を言ってたのかもしれない――。現にあいつらは、私達が2人になった所を襲撃しに来た。奴等の目的が何にせよだ。お互いに気をつけなくてはならない」
「そっ、そうですね……。確かに、一度あることは二度あると言いますし」
「いいかアレン」
「はい?」
「今起きたことはだれにも報告するな。くれぐれも内密にするのだ。いいな?」
「でっ、ですが……!」
「敵の狙いがわからない今、無闇に動けば命取りになる。慎重に動いて敵が尻尾を出したら捕まえればいい――。何にせよ嫌な胸騒ぎがする」
アレンはその話を聞くと、ため息をついて壁から離れた。
「ではシュナイゼル団長。この死体の処理は如何なさいますか? 憲兵団に見つかれば、元も子もありませんが?」
「狼狽えるなアレン。私が手を打つ、お前は先に城へと向かえ!」
「ですが、大丈夫ですか……?」
心配そうにアレンが尋ねると彼は鼻で笑った。
「フッ、部下に心配されるようでは私も地に落ちたようだ」
「そんことは……!」
「アレン、お前はとにかく今しなくてはならない事だけを考えろ。よいな?」
「シュナイゼル団長……。わかりました。では、先に城へと急ぎます! どうかお気をつけて…――!」
アレンは彼にそう告げると、馬の背中に颯爽と跨がった。
「ああ、心配はいらん。さあ行け!」
「ハッ!」
アレンは手綱を引くと馬に合図を送った。馬は彼を背中に乗せると再び走り始めた。彼が居なくなると、シュナイゼルはそこで死体の処理を考えた。
「さて――。憲兵団が来る前にこれを片付けなくては、それにしてもあの連中は一体どこから?」
彼は一人そこで呟くと、空を見上げた。
――ローディンの国旗は風に揺られて静かになびいた。夕陽が沈む頃、一頭の黒い馬が騎士を背に乗せて城へと到着した。門塔の番人は城へと近づいてくる者に気がつくと、合図を送って城門を開かせた。城門が開くと同時に黒い馬は中へと入った。アレンは馬から降りると近くにいた若い兵士に声をかけた。
「そこのきみ、すまんが私の馬を頼む!」
「はっ、はい!」
若い兵士は、馬の手綱を引くと馬小屋へと連れていった。そこに一人の老人が城から慌てて出てきた。
「アレン殿、よくぞご無事であった! さあ、バーシル大臣が謁見の間でお待ちかねでございますぞ!」
「これはシュゼットさん。お久しぶりですね?」
眼鏡をかけた老人の名はシュゼット。バーシル大臣の副補佐官だった。彼は、忙しそうな様子でアレンを謁見の間へ案内した。城の長い廊下を歩くと、彼らはそこで足を止めた。
「ではアレン殿、私はここで――」
「シュゼットさん案内ご苦労様です」
アレンはそう言うと、礼儀正しくお辞儀した。
「いえいえ、アレン殿のこそご苦労様です」
「いいえ。私は騎士としての務めを果している迄です」
「さすがアレン殿。その立派な振る舞いは、貴方の亡くなったお父上様を思い出します」
「そうですか?」
「ええ、貴方のお父上は立派な騎士としての品格がそなわっておりました。いま生きておりましたら、きっと鼻が高いでしょう」
「シュゼットさん。亡くなった父もきっとその言葉に喜んでいるはずです」
「ええ、そうですね。では――」
シュゼットはアレンにお辞儀を返すと廊下を歩いて行った。アレンは扉の前で深呼吸すると、重たい扉に手をかけて中に入った。中に入ると直ぐに王の玉座には、大臣が座っていた。赤い絨毯がひかれているその先には王の玉座にバーシルが座っていた。アレンはそれを目にすると、わずかに剣に手をかけた。
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