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第15章―地に降り立つは黒い羽―2
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――それは今から3年前の話。ブレイザブリクで、ハラリエルとボクは、チェスで遊んでいた。ハラリエルはああ見えてチェスは強かった。カードゲームはボクのほうが強かったけど、何故かチェスだけは勝てなかった。ハラリエルは、起きるタイミングがいつも疎らだった。一日以上、彼はベッドの上で眠っている。数ヵ月以上寝てる場合もあれば、半年以上も寝ている時もある。もっと長い睡眠だと一年以上は彼は寝てたりする。別に眠いから寝ているわけじゃない。彼いわく、これは「使命」だと言っていた。寝ることが彼の仕事らしい。そう言う運命(しめい)を任されたせいか、彼はそれに従っている。
――そう。従順にね。彼は大人しい性格たがら、相手に反抗することもしない。争いとか争うこともしないような本当に大人しい子だった。どっかのわからず屋は血の気が多いのに彼はその真逆だ。起きてる時は、いつもニコニコして笑っている。大人しくて優しくて彼は太陽みたいに暖かい。ボクはそんなハラリエルが大好きだった。友達がいないボクにとっては、彼だけが唯一の友達と呼べる存在だった。ボクは、彼の為なら何でも出来る。そう、なんでも。だからは彼のあのお願い事も、気まぐれで引き受けたに過ぎなかった。彼が前回起きてたのは4ヶ月前。あれから4ヶ月もボクは彼が起きるのを待ち続けた。タイミングを逃すと遊べなくなる。だからボクはいつも、彼の宮殿にこっそりと入り込んでは様子を伺っていた。そして今日、ハラリエルは夢の途中で目が覚めて起きた。
ボクはこのチャンスを逃さなかった。ブレイザブリクの宮殿に忍び込むと彼の部屋へと向かった。起きて直ぐに会いに行くとハラリエルはボクに驚いていた。だってずっと会いたかった。でも、ハラリエルはボクの気持ちには、気づいていない。そこが彼の可愛い所でもある。起きたての彼に、ボクはサプライズをしてあげた。指を鳴らして部屋の中を沢山の花で埋め尽くした。もともと彼の部屋は殺風景な部屋だったので、沢山の花で部屋の中が鮮やかに彩られると彼はボクのサプライズに喜んでくれた。そして、指先で花びらをくるくる回すと、部屋の中で花びらが綺麗に回っていた。まるで幻想的な光景だった。ボクと彼はおなじベッドで仰向けに寝がらその景色を静かに眺めた。
ハラリエルはボクの隣で夢の話をした。夢と言っても未来の予言の話だった。未来の予言の話は、本来はラジエルにしか話さないみたいだけど、ハラリエルはそんな夢の話をボクにこっそりと話てくれる時があった。秘密の話を2人で共有しているみたいで、それは心地良い気分だった。
そんな話をあのじーさんに話したら嫉妬に狂うに間違いない。あのじーさんはハラリエルの力を当てにしてた。予言が命のじーさんにとってハラリエルはなくてはならない存在だった。そんな理由であのじーさんは、彼をこの#檻(ブレイザブリク)に閉じ込めている。
ボクはそんなハラリエルが気の毒だと心底感じていた。ボクは隣で予言を聞きながら瞳を閉じた。夢の中でしか世界を知らない。本当の世界を知らずに、夢の中でしか見れない世界。それは彼にとってどんなに残酷なことなんだろう。彼は塀の外が広いことは知らない。この塀に囲まれた世界が彼にとって世界だった。可哀想なハラリエル。きみにボクの翼をあげたいよ――。
気がつくとハラリエルがボクの顔を覗いていた。
「どうしたの? ボクの顔に何かついてるかい?」
「うんん……」
「そう。もしかしてボクにみとれてた?」
「ちっ、違うよ…――!」
「ふふふっ。キミって怒った顔も可愛いね?」
「かっ、からかわないでよ……!」
ハラリエルはちょっとムキになると頬っぺたを膨らませて怒った。そんな時、彼が可愛く思える。ハラリエルはどうみても10歳の子供だった。ゴメンと謝ると彼は直ぐに許してくれた。本当に彼は無邪気だった。怒ったあとは、ボクにおねだりしてきた。
「ラグエルのあの歌、聴かせて?」
「ボクの……?」
「うん。あの歌聴きたい!」
「どうしようかなぁ……?」
「ねえ、聴かせてよ!」
ハラリエルは青い瞳をキラキラさせながら無邪気な顔で言ってきた。
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