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第15章―地に降り立つは黒い羽―7
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――次の日、ボクは彼と一緒にチェスをして遊んだ。そして、ボクは彼から意外な事を頼まれた。それも極秘の任務。まさかそんな事を頼まれるとは正直思ってもなかった。
「え? ボクが人間界に? それって本気で言ってるのかい?」
「う、うん……!」
チェスの向かい側を挟んでボクは彼から意外なことを頼まれた。それはボクが下界に降りたって欲しいとの頼み事だった。そして、そこである者達を監視しに行って欲しいとボクは彼に頼まれた。正直言ってボクは天界にしか興味がない。監視することがボクに課せられた使命だけど、人間が住む下界となると、話しはべつになる。かと言って、人間達を監視するのも気がひける。いくら大事な親友からの頼み事でもボクはそれを引き受けようか迷った。盤上に並べられた駒からポーンの駒を片手に取るとそこで考えた。さて、どうしたものか――。
下界に降りるのは簡単なことだった。でも、ボクが天界を留守にしたら彼らの監視ができなくなる。それにあいつの動きも気になる。さて、どうしようか? ボクはポーンを片手にハラリエルの顔をチラッと見た。彼はボクのことをジッとみてきた。その健気な眼差しにボクは心の迷いが揺れ動いた。
「ねえ、その予言だけど、そのことは彼に話したのかい?」
「ラジエルには話してないんだ……」
「へぇ、珍しいね。キミがそんな事を彼に話さないんなんて。ボクはてっきり、夢で見た予言は全て彼に話すのかと思ってたよ?」
「そっ、そうだよ……。いつもは夢で見た予言は全てラジエルに話すけど、少し気になったから彼には言えなかったんだ」
「そう――」
「そのビジョンは凄く曖昧で、只の夢だったのか、それとも未来の予知夢だったのかもわからないんだ。ボクは色々な未来の予知夢をみるけれど、それはすべて天界に関わる夢だった。でも、ボクがみたその夢は下界の夢だった。たがら余計に気になるんだ。それが本当なのか…――」
「ふぅん。キミでもそんな事があるんだね。ちょっと驚いたよ」
「ラグエル……」
ボクはハラリエルから意外な事実を聞かされた。彼が見る夢は全て予知夢かと思っていたけど、どうやら普通の夢も見るらしい。ボクはそんな彼に、ますます興味を抱いた。
「――それにボクが見たその夢はビジョンも曖昧のまま、夢の途中で目が覚めたんだ。ボクは夢は最後まで見てから目を覚ますけど、途中で目を覚ます事なんて滅多にないんだ。たがら余計に」
「気になるってわけだね?」
「う、うん……!」
ハラリエルはどこか不安な表情をみせた。そんな彼に同情すると、気まぐれで頼まれ事を引き受けた。
「仕方ないね。本当はどうしようか迷ったけどさ、可愛いキミからの頼まれ事を断る訳にもいかないから引き受けてあげる」
「ラ、ラグエル…――!」
「ふふふっ。キミはホントに罪作りだね。でもそこが良いかな?」
そう話すとハラリエルの頭を優しく撫でた。
「ラグエルありがとう……! そんな事を頼めるのは、ボクにはきみしかいないから――」
「ふふふっ。当然だよ、ボクはキミの一番の親友だからね?」
「うん……!」
ハラリエルそこでニコリと微笑んだ。
「彼には本当に言わなくていいんだね?」
「う、うん……! 言ってもきっとラジエルは聞き流すと思うから――」
「そうだね。彼らにとってキミの予言は天界の未来を左右することに繋がる大事なことだからね。下界に興味がないのは当然かな。彼らにとって大事なのは天界の未来だけ。実に分かりやすいじゃないか。ふふふっ、面白いねぇ。人も天使も――」
ラグエルはその事を話すと、ニヤリと笑いながら小バカにした表情を見せた。
「ねえ、ラグエルは天界のこと…――」
ハラリエルはそこで不意に思うと彼に尋ねた。するとラグエルは、人差し指を横に振って答えた。
「その質問にはこたえられないね。ボクはキミ達を見てるいる監視者にしか過ぎない。ボクがそれに干渉することは許されないんだ。あの方の命令なら、ボクはそれに従うけど――」
「ねえ、ラグエル。あの方って?」
「ふふふっ。それはボクだけの秘密さ」
「そ、そうなんだ……。ラグエルはいつも秘密だらけだね?」
「そうかい? そうだねぇ。天界がどうなるか気になってるのは、あいつらじーさん達くらいだ。ボクは天界のことよりもキミのことが気になってしょうがないけどね?」
「ボ、ボクが……?」
「ああ、そうだよ。ボクの可愛い小鳥さん」
ラグエルはそう話すと悪戯にクスッと笑った。髪を触れられるとハラリエルは頬が赤くなった。
「またボクのこと、子供扱いしてる――?」
「さあ、どうだろう?」
「ラグエルは意地悪だね……」
「ああ、そうだよ。ボクは意地悪するのが好きなんだ。誰かを困らしたり。キミを困らしたり、ね?」
「ラグエル、意地悪ばっかりしてると一人ぼっちになっちゃうよ……?」
「ならないさ。キミがいるから――」
「ラグエル……」
ハラリエルは、彼の放つ怪しげな眼差しに魅入られた。
「キミはボクと一緒にいてくれるだろ?」
「ラ、ラグエルは…――?」
「ふふふっ。キミが望めば、いつでも傍にいてあげる」
「いつでも……?」
「ああ、いつでもね」
2人はチェスの盤面に向かい合いながら、ジッと見つめあった。するとそこにラジエルが部屋に入ってきた。
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