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第19章―温かいスープ―10
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「これか?」
「ああ、そうだ」
「なんだ。見た目は美味そうだな」
「じゃあ、お前が食べて見るか?」
「おっ、俺は良いよ。遠慮する」
ケイバーは鍋の中を覗きながら何気にその事を話した。
「いいのか? エドウィンが作った料理だぞ?」
「ん~。そう言われてもねぇ~」
ケイバーはクロビスの話を聞きながら視線をそらした。エドウィンは不満げな顔を浮かべると、無言で出刃包丁をまな板の上に突き刺した。
「怒らすな。奴は自分の料理を侮辱されるのが嫌いなんだ。怒らすと手におえないぞ?」
「う~、こわっ! エドウィンちゃんそんに怒らないでね!」
ケイバーは可愛げに許しをこうと、彼は無言で鼻をフンと鳴らした。無愛想な彼があのエドウィンと知ると、チェスターはそこで身震いした。彼の名前は看守の間では、殺人コックと言うあだ名で知られていた。彼はもと、ここの罪人であり。過去に人を料理したと言う恐るべき経歴を持つ。彼は捕まる前、普通のコックをやっていたが。そんな彼の裏の顔はカニバリズムの精神異常者だった。彼は罪人として裁かれると、ここの牢獄に幽閉された。しかし、彼の独特な個性に惹かれたクロビスは何を思ったのか彼をここのコックの一人として雇った。彼は普段は厨房には立たないが、特別な時にだけ厨房に立つ。そして、それが今かのように思えた。チェスターはその事を知っていたので、彼を見るなり恐怖心と不信感が高まった。
チェスターは思う。
――あの料理は一体、何だろう?――
でもそんな事を彼らには簡単には聞けない。むしろ聞いたら余計に恐怖心が高まるだけだ。チェスターはそう思うと、聞きたくても聞けずにいた。怯えている彼の近くではあの殺人コックが、まな板の上で野菜を刻んでいた。そしてすぐ近くでは、彼らが鍋を覗いて怪しく笑っていた。なんとも言えない不気味な光景が目の前に広がっていた。チェスターは、そんな彼らを見ながら精神的にも追い詰められた。
鍋のスープがグツグツ煮え立つと、それをエドウィンがかき混ぜた。暫くそこで時間を潰していると、ついに料理が完成した。トレーにスープが入ったお皿を置くとパン一つ添えた。見た目は質素な料理だがスープだけは拘りがあるように思えた。
クロビスはそれを手に持つと、彼に渡してきた。
「いいか、溢すなよ。これを私のフロアに運んでくれ。奥の牢屋に6歳くらいのガキがいる。これをそいつに食べさせるんだ」
『は、はい…――!』
彼は料理が乗せられたトレーを恐る恐る受けとると、そこから直ぐに出て行った。ケイバーはクロビスと目で合図すると、何食わぬ顔で彼のあとをついて行った。チェスターは料理を運びながら色々なことを考えた。
この料理は一体、何だろう?
あの2人は何を笑っていたのだろ?
あのエドウィンって男がオーチスさんを……。
く、狂ってる…――!
チェスターはオーチスの話を他の看守から聞かされていたので、彼が最後どうなったかを想像すると手もとが震えた。
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