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第6章―竜騎兵―2
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「俺もヤツに直接聞いた話じゃないから詳しい事はわからないけどよ。なんでも両親は法で裁かれて、どこかの監獄にいるって話だぜ? あ、さきに言っとくが2人が生きてるか死んでるかなんてわからないから聞くなよ」
ケイバーはそのことを言うと自分のナイフを取り出して、手でナイフをイジリだした。
「因みに母親の方は牢屋の中でヤツを出産したらしい。でも、それをとりあげた助産婦が生まれてきた赤子の顔を見るなり突然悲鳴をあげたんだ。生まれてきた赤子の顔は、それはそれは醜い化け物のような顔だったんだ。それこそ身の毛もよだつくらいにな。まるで天と地がひっくり返るような衝撃に、赤子をとりあげた助産婦はそのあと頭が綺麗にイカれちまったらしい」
ケイバーのその話に、ギュータスは背筋にゾッとするような寒気を感じた。
「醜い顔で生まれてくるなんてまさに天罰としか言いようがないな。でもよう、本当にそんな事ってあるのか? 全部お前の作り話なんかじゃないのか?」
ギュータスがその事を言うと、ケイバーは突然クククッと笑った。
「さぁて、どうかな? でも奴の顔が醜いのは何よりの証拠だ。いや、それとも奴の顔がそうなったのには他に何か原因があったかも知れない。あんたはどっちだと思う?」
ケイバーはそう言うと、持っているナイフをギュータスに向けて尋ねた。
「チッ、知るかよ! 奴の顔がどうだとか、俺には関係ない話だ。本当てめぇの情報源には毎回のごとく見上げるぜ、一体どこからそんな話を仕入れてきたんだ?」
ギュータスが不意にその事を言うと、ケイバーは怪しく笑った。
「そうだなぁ、情報収集が俺の趣味って事にしておいてやるよ?」
彼はそう言うと椅子に座ったまま、持っているナイフを壁に向けて投げた。
「――とんだ悪趣味だな。お前みたいなクソな奴は、人に嫌われるタイプだぜ。まあ、とっくに嫌われてもおかしくないけどよ?」
ギュータスがその事を言うとケイバーは、あっさりと言い返した。
「なんとでも? 人に嫌われるのは昔から慣れてるから今更なんとも思わねぇ。おままごとしている連中なんかと仲良くつるむよりかは1人の方が気楽でいい。俺はいつもそうしてきたんだ。信じれるのは自分だけだからな…――!」
ケイバーは独り言のようにポツリと呟くと、椅子から立ち上がって壁に突き刺さったナイフを抜き取った。
「なんかお前の話わかる気がする。信じれるのは自分だけ、俺もお前も……!」
2人だけしかいない部屋の中には、突如沈黙が駆け抜けたのだった――。
静寂に包まれた部屋の中で互いに何かを思いつめていた。しばらくすると、ケイバーがギュータスに尋ねた。
「ところでその顔の傷どうしたんだ? さっきまでそんな傷なかっただろ?」
ケイバーが不意にそのことを尋ねると、ギュータスは何かを思い出したように突然笑い出した。
「ああ、これか? いや、ちょっと猫にひっかかれた」
「猫……!? おいおい、猫ってまさかクロビスのことか!?」
「じゃなきゃ、なんだよ?」
「いや、べつに……!」
ケイバーはそう言って答えると、先に部屋から出て行こうとした。
「こんなことを言うのもなんだが、あまりアイツを逆撫でしないほうがいいぜ。荒れるとこっちまでトバッチリくらうからな。まあ、確かにアイツは猫みたいな部分はあるけどよ。じゃれるのも程々にしとけよ。じゃあな、お先に!」
彼が先に部屋を出て行くと、ギュータスは1人でニヤついた表情でブツブツと独り言を呟いた。
「――そうだ。アイツ猫みたいなんだよなぁ。美人顔の癖によ、高慢で生意気で高飛車なところがホントたまらねーぜ。あいつを俺の膝の上で踊らせてーよ」
ギュータスは意味深なことを呟くと、舌舐めして怪しく笑っったのだった。
一方その頃。ジャントゥーユはクロビスの命令で竜騎兵がいる兵舎に訪れた。彼らは酒と女に溺れていた。滅多に出番がない彼らは、酒と女に溺れることで、日頃の鬱憤を晴らしていた。脱獄不可能な鉄壁の要塞と知られていたタルタロスの牢獄は、滅多なことが起きない限り、囚人が脱獄するには不可能に近かった。余程のことが起きない限り竜騎兵達の出番も少なく、彼らは暇と時間をもて余していた。たまに空から警備を巡回するだけで、とくに彼らすることもなかった。そして、やがて彼らは堕落した。過去の栄光は衰退し、今じゃタルタロスの中では役立たずの存在でしかなかった。厄介者と感じた彼らは、やがて看守との派閥争いを始めた。それはやがて竜騎兵と看守との距離を開くことになった。看守と滅多に顔をあわせない彼らは兵舎の中に閉じ籠った。酒を浴びるほど飲んで酔えば女の体を獣のように貪った。堕落した彼らは痴情に溺れた。そして、自らの誇りも捨て去った。あるのは堕落で愚かな心と、かろうじてまだ残っている竜騎兵としての擦りきれたプライドだけだった。そんな彼らは堕落しながら自らが腐っていく日々を送っていたのだった――。
兵舎の扉を開くと、中からは酒の臭いが充満していた。あるものは自分にクスリを打ってどこか遠くを見ていた。そして、ある者は酒を浴びるほど飲んで酔いつぶれていた。部屋の奥からは女の喘ぎ声が漏れていた。異様な空気に包まれていた兵舎の中は理性を失った者だけしかいなかった。ジャントゥーユが外から入ってくると、1人の男が彼に絡んできた。
「おいおい、これはこれはお偉い看守様じゃねーか。お払い箱の竜騎兵の俺達に何の用だ? こんな所も巡回するように命令されたのか? それともなんだ? ママにお使いを頼まれてここに寄るように言われたのか?」
若い男はそう言うと、片手に持っている酒の瓶を煽るように飲んだ。彼は酷く酔っているのか、その場でジャントゥーユに絡んだのだった。
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