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第6章―竜騎兵―4
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ハルバートは虚ろな目をしながら床を歩いた。でも、あきらかに彼の顔色は悪かった。まるで薬に依存している者のような顔色だった。ハルバートが部屋の奥から堂々と現れると、一同は彼に敬礼をして道をあけた。そして、部下の1人が彼に慌てて状況を報告した。
「たっ、大変な事態であります隊長! その、スティングが……!」
部下の1人が慌てながら報告をすると、ハルバートは退けと言って彼を威圧した。
「うるさい! いちいち騒ぐな! んなもん見ればわかる! お前の声が頭に響くんだよ!」
ハルバートは怒鳴り声をあげてそう言うと、部下を片手で払いのけた。薬が相当効いてるのか、彼の足取りはふらついていた。まるで酔っぱらいのような足取りだった。ハルバートは瓶に躓いたり、近くにあった物を倒したりした。あげくの果てには立っている置物の鎧にぶつかって、彼はゲラゲラと可笑しそうに笑っていた。彼の情けない姿を見た一同は黙り込んだ。かつての勇ましい姿は何処へ行ったのか? 今はもう、そんな面影すらない。ハルバートは床に落ちている鎧の兜を拾い上げると彼はそれを小脇に抱えたまま、ふらついた足取りでジャントゥーユの方へ向かった。すると、途中で足下が何かにぶつかった。ハルバートは虚ろな目で自分の足下を見たのだった。すると、自分の足下に誰かの遺体が床に転がっていることに気がついた。
「ん、誰だこいつ?」
ハルバートはそう言うと足のつま先で、遺体をひっくり返した。すると死んでいる遺体がスティングだと言うことがわかった。初めは状況がのみこめなかったが、彼はスティングの遺体に哀れみの言葉をかけた。
「おお、スティングなんてざまだ……。見境なく盛って誰とでもヤりたがるからこうなるんだろ? こんな所で寝てたら風邪ひくぞ。誰かコイツに毛布をかけてやれ!」
ハルバートは哀れみの言葉をかけると、近くにいた部下に命令を出したのだった。そして、部下の1人は部屋の奥から毛布を取ってくるとそれを彼の遺体に被せた。周りはスティングの突然の死に酷く戸惑っていた様子だった。ハルバートは薬がようやく体から抜けると、シラフのような状態に戻った。そして、周囲に一言尋ねた。
「――で、誰がコイツを殺った?」
周りは彼の質問に黙り込むと、身長の低い男が彼に答えた。
「あ、あいつです……! あいつがスティングを殺りました……!」
男は怯えた顔をしながらそのことを話すと、震える手でジャントゥーユの方を指差したのだった。
「あの化け物がスティングを殺ったんです……!」
男はそう言うと直ぐに隊長の後ろに隠れたのだった。ハルバートは部下にその話を聞いた途端、いっきに目付きがかわった。
「お前がっ……!」
「お前がスティングを殺ったのかッ!? よくも俺の部下を…――!」
ハルバートは体中が怒りに震えると、途端に雄叫びを上げて彼に突進した。
『うぉおおおおおおおおおおおおーーっ!』
周りは蜘蛛の子を散らすように、一斉に部屋の中で散らばった。
『逃げろぉ! ハルバート隊長がキレたぞっ!』
部下達は騒ぐと、部屋のあちこちに一斉に避難した。ハルバートは突進すると彼の顔を片手で押さえて壁に向かっておもいっきり叩きつけた。その衝撃は凄まじく、壁に大きなヒビが入ってめり込んだ。普通に一撃を喰らったら一溜まりもないほどの威力だった。ハルバートは怒りながらジャントゥーユに向かって言い放った。
「テメーを今すぐぶっ殺してやる! よくも俺の可愛い部下を!」
ハルバートは怒りに身を任せてそのまま彼を壁に何度も打ち付けた。さすがに周りも止めに入る者は誰一人いなかった。怒り狂う彼とは打って代わり、ジャントゥーユは不気味なくらい冷静だった。それは直ぐに彼にわかった。普通だったら痛みで叫んでる所だが、ジャントゥーユは強烈な一撃を喰らっていても、平然とした顔で立っていた。まるで攻撃が効いてない様子だった。手の隙間から見えたのは彼が沈黙の中で、怪しくニタリと不気味に笑った顔だった。ハルバートは一瞬にしてゾッと寒気を感じた。いや、彼は本能的になにかを感じとったのかも知れない――。
彼の強烈な一撃を喰らっても、平気な顔して立っているジャントゥーユの姿に周りは恐れを感じた。普通の人間だったら一溜まりもないのに余裕の顔をしていたのだった。そして、静寂を纏うように不気味な笑みを浮かべていた。ニヤニヤと笑っている様子はまるで痛みを感じてない人間のようだった。その光景を見た部下の一人が思わず口走った。
「なっ、なんだよあいつ!? 隊長の一撃を喰らっても普通に立ってやがる! まともじゃないぞあの化け物、本当にあいつ俺達と同じ人間かよっ!?」
ハルバートの一撃を喰らってもジャントゥーユは、平然とした顔をしていた。自分の額から血が流れると、それを美味しそうに舐めていた。ただならぬ異様な存在感に周りは恐れて彼から遠ざかった。その時、ハルバートは直感的に何かを悟った。
「お前、ここら辺にいる普通の看守とは違うだろ!? 誰だテメェは!」
ジャントゥーユに向かってそう言うと、ハルバートは警戒するように彼の側を離れた。ハルバートのといかけに対してジャントゥーユは、怪しくニタリと不気味な笑みを見せた。周囲は彼の不気味さに凍りつくと、そこにいた誰もが言葉を失って沈黙した。そして、張り詰める空気が辺りに漂った。彼は壁から離れると自分の首を鳴らして一言告げた。
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