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第6章―竜騎兵―5
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「クロビス様からお前達に命令がある……」
「あぁん? クロビスだと?」
彼はそう言うと急に態度を変えた。
「何だよ、テメェはクロビス坊ちゃんのオモチャかよ。そういえば坊ちゃんが、新しいオモチャを手に入れたって前に何処かで聞いたけど、まさかそれはお前のことだったのか?」
ハルバートがそう言って話すと、ジャントゥーユは何も言わずに不気味な顔でニターっと静かに笑った。
「ケッ、通りでまともじゃないと思ったぜ。でなきゃテメーを今頃ぶっ殺してるところだ! 言っとくがな、俺らは看守の奴らが大嫌いなんだよ! 顔も見たくねーんだよ、わかるだろ? いつも偉そうにしていて本当むかつくぜ。生意気だからよ、前に俺らで何人かボコってやったんだ。あの時のあいつらの情けねぇ顔ときたら傑作で愉快だったぜ。まぁ、お前があいつらの仲間じゃないってことは確かだな!」
ハルバートはそう言うと、近くに置いてあったテーブルの椅子にドカッと座った。テーブルの上に酒の瓶が置いてあると、彼はそれを一本手に取った。瓶の蓋を親指で開けると、彼はそれを煽るように一気飲みし始めた。そして、酒の瓶をカラッポにするとそれをテーブルの上にドンと置いて、そこでジャントゥーユを睨みつけた。
「で、坊っちゃんのオモチャが俺達に一体何の用だ? 遊ぶならここじゃなく、他を当たれってお前のご主人様にそう言っといてやるよ!」
ハルバートは彼にそう言うと、テーブルの上に無造作に置かれていた生ハムに手を出した。そして、それを豪快にかぶりつくとムシャムシャと食べ始めた。生ハムを手で食べながら、また酒をゴクゴクと飲んだ。ジャントゥーユは、そんな彼にもう一度言った。
「出動命令だ、早く行け!」
ジャントゥーユが再び命令をすると、ハルバートは近くにあったナイフを手に持った。そして、それを生ハムに突き刺して一言言い返した。
「ふざけんな、断る! 誰がテメーらのパシりになるか! 竜騎兵の俺達を舐めてるんじゃねーぞ!」
ハルバートはそう言って威圧すると椅子の上で彼を睨みつけたのだった。一触即発の雰囲気が再び辺りに漂った。周りは息を呑んで凍りついた。すると、彼は突然笑いだした。
「なーんて言ったらどうする? 確か坊っちゃんに刃向かったピーターは、最後どんな風に殺されたっけなぁ。金属のワイヤーで天井に吊るされて、体に電流をしこたま流されるのだけは俺はゴメンだ! あれはホントに気の毒にな、死んだピーターには同情するぜ。他にも刃向かった奴らの末路を考えるとマジでチビりそうだ」
ハルバートは椅子の上でそのことを淡々と話すと、周りにいた部下達は一斉に恐怖に怯えた。そして、頬杖をつきながら彼は話すとフと過去の話を語った。
「でもよぉ、今はあんな風になっちまったけど。昔はまともで結構可愛いかったんだぜ? 小さい頃は俺によくなついて来て、俺の名前がなかなか呼べねーからハルってよく呼んでたんだ。たまに俺の顔を見ると後ろからいつもちょこちょこついて来て、一緒に竜に乗りたいって騒いでた頃が酷く懐かしいな…――。その何年後かにハルからハルバートって呼ぶようになってからは、それはそれは会うたびに憎まれ口は叩くは、人を見下した目付きで見てくるは、まだ生きてたのかってな、奴の目がそう物語ってるのがわかるんだよ。昔はあんなに可愛かったのに一体どうしちまったんだか。今じゃ、いい感じに壊れてやがるのが目に見えるぜ。やっぱりあの方の死が原因なのかも知れないな…――」
ハルバートは不意に何かを思い出すと遠い目で何処かを見つめていた。それはまるで失われた過去を思い出すかのように、彼は懐かしい思い出に浸っていた。そして、不意に思いが冷めた。
「ああ、くそったれ! 急にあの頃を思い出しちまったぜ……! おい女、俺のアソコが萎えたからしゃぶれよ!」
ハルバートは連れて来た女に向かって命令口調でそう言ったのだった。彼女は彼に命令をされると、何も言い返す事はなく、ただ「はい」と一言返事をした。彼女は心がない人形のように彼に従った。ひょっとしたら彼女の瞳には、希望がないのかも知れない。生きる気力がない彼女は心を閉ざした。こんな閉ざされた牢獄の檻の中では、女の囚人は性奴隷として生きて行かなくてはならない。彼女は男達に体を玩具のように弄ばれ、もう生きていく気力も無くなったのだろう。それとも、変わらない毎日に飽きたのかも知れない。もう彼女は笑わない。女は彼の足下にしゃがみこむと、言われた通りにしたのだった。女が彼のアソコを舌で舐め始めると、彼は椅子の上で恍惚した顔を見せた。周りはまた始まったと、終始あきれている様子だった。
ハルバートはテーブルに置いてある酒の瓶に手をだすと、また飲み始めた。底を知れない彼の飲みっぷりは、たかがしれっていた。テーブルに置いてある酒を全部飲み干すと、酒をもってこいと部下に命令した。彼は自分の下半身を女に舐めさせると酒に酔いながら、周囲にだらしない格好を見せたのだった。ほろ酔いしながらジャントゥーユに尋ねた。
「……で、坊ちゃんの命令は何だよ? 最近はすっかり疎遠になってるからな。俺達に命令してくるんだから、くだらねー用事じゃないって事は確だ。それともお払い箱の俺達に印籠でも渡しに来たのか? それだったら安心しとけって、坊ちゃんに伝えときな! そろそろ潮時だしな。言われなくても俺達はここから出てってやるからよ。体も鈍ってきてしょうがねぇ頃だ。俺達はここを出たら傭兵にでもなるつもりだ。そんで前みたいに竜に乗って戦場でも何処でも大暴れしてやる!」
ハルバートは不意にその事を話すと、瞳の奥をギラつかせたのだった。それはまるで戦士としての誇りがあるかのようだった。
「それとも珍しく、でかい山でも動いたのか?」
不意に質問するとジャントゥーユは一言答えた。
「ああ、そうだ――!」
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