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第6章―竜騎兵―9
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「命令するんじゃねぇッ! 行くか行かないかは俺達が決めることだ! それにお前さっきから癇にさわるんだよ!」
彼がそう言うとジャントューユは突如、テーブルの上にナイフを突き立てた。
「黙れ! いいから早く行け! でなければお前の部下をまた1人殺す!」
彼がそう言い放つとハルバートは呆れ返った。
「フン、生意気なことをほざきやがって! いいぜ行ってやる。テメーに部下をまた殺されたらこっちが困るからな!」
彼はそう言うと椅子から立ち上がって無言で彼を睨みつけた。
「あとひとつ付足しとおく。囚人を見つけたら金貨と美味い酒を寄こせ! でなきゃ、このことを洗いざらいギレイタスに報告してやる! 俺達はそこまでバカじゃないからな、今の言葉覚えとけよ!」
ハルバートはそう言い返すと周りにいる部下に命令をした。
「今からダモクレスの岬に行くぞ! 呼ばれた奴らは支度の準備をしろ!」
彼が命令を出すと、部下達は慌しく支度の準備にとりかかった。
「おい、そこのお前! 竜小屋に行って俺の竜とリーゼルバーグの竜を叩き起こして外に用意しとけ! ワイバーンじゃねーからな間違えるなよ、俺の竜だ! わかったな!?」
彼が部下の3人に命令を出すと、部下達は慌しく竜小屋へと向かった。ジャントゥーユは彼と一通り話をつけると、クロビスの元に戻って報告しようとした。するとハルバートが後ろから一言いい放った。
「逃げた囚人の話は終わったが、こっちの話はまだ終わっちゃいねぇぞ。部下を1人殺されてこっちが黙ってるとでも思ったか? チャンスがあったらテメーを殺す! でなきゃ死んだあいつが浮かばれねぇ、今の言葉忘れるなよ化け物!」
ジャントゥーユは後ろを振り向くと、不気味な顔で笑って言い返した。
「ああ、楽しみにしている……」
彼はそう言うと床に落ちている斧を拾った。そして、それを拾い上げるとスティングの方へと近づいた。そして、ジャントューユはハルバートが見ている目の前でスティングの右手を斧で切り落としたのだった。まるで壊れた人形をさらに壊したような光景だった。ジャントゥーユはスティングの遺体から、右手だけを切り落とすと、それを拾いあげてニタリと不気味に笑った。
「どうだ……これで憎しみが増してきただろ? もっと俺を憎め……そのほうが面白い……ククククッ……」
ジャントューユは彼に挑発的にそう言うと、不気味な笑い声をあげて部屋から出て行った。そして、スティングの切り落とされた右手は彼の戦利品として持ち帰られた――。
「決めた! あいつを殺す! 止めても無駄だぜリーゼルバーグ! 死んだ部下の仇はこの俺が必ずとってやる…――!」
ハルバートはそう言うと、ジャントゥーユに強い復讐心を燃やした。リーゼルバーグは一言「好きにしろ」と彼にいうと自分も支度の準備を始めたのだった。全ての準備が終わると部下がハルバートに報告をした。彼は自分の黒い鎧を纏うと兜をかぶって部下に伝えた。
「外は大吹雪だ! さっさと囚人を捕まえて帰るぞ野郎ども! お前達、気合を入れて探せぇ!」
ハルバートは部下の前で渇を入れると、全員が大きな声で返事をした。竜騎兵達は自分達の兜を手に持つと足早に部屋から出て行った。そして、竜が待機している屋上へと彼らは向かって行ったのだった。
部下達が部屋から出ていくと、ハルバートはリーゼルバーグにスティングの兜を持って来いと命令をした。言われるままに、部屋の奥から彼の兜を持てくるとそれを手渡した。リーゼルバーグは持ってきた兜をどうするのかを不思議そうに尋ねた。するとハルバートは無言で何も言わずに黙ったままそれをスティングの頭に被せた。そして、血で染まった斧を拾いあげると彼は次の瞬間、斧を下へと振り降ろした。
「こうするのさ…――!」
彼が振り降ろした斧はスティングの首を跳ねたのだった。リーゼルバーグは、彼の奇行に突如驚くと言葉を失った。ハルバートは切断したスティングの頭を床から拾いあげるとそれを小脇に抱えて一言いい放った。
「スティングも仲間だ! こいつも一緒に連れてくぞ!」
彼はそう言うと黒いマントを翻して、部屋から出て屋上へと向かって行った。リーゼルバーグは部屋の中で呆然とした顔で佇むと、ポツリと呟いた。
「やはり仲間を重んじる所は昔と変わっていないな……。早く奴が目を覚ませばいいのだが、私は信じているぞ。お前がいつかは…――!」
彼は思い詰めるように呟くと部屋から出て行った。外の吹雪はより一層激しく吹き荒れた。まるれでそれは、今から起こる出来事を予兆するかのように――。
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