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第7章―闇に蠢く者―5
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「私は卑怯なサタンに姿を見せろと扉の前で投げ掛けました。でも、サタンは扉の向こう側からは出て来ませんでした。私はその時に直感的に感じました。サタンは完全には蘇っていないと……! もしあの者が蘇っているのであれば、あの扉を開ける事は容易いはずです。ですが、サタンは問いかけに対して、姿を見せませんでした。だから私は咄嗟に思ったのです。サタンは今は、精神だけの存在だと言うことを……! そして、ミカエル様が倒れた直後に目の前の扉が一瞬、大きく開いたのです。そこからは黒き魔物が一斉に中から飛び出して、そのまま我らをすり抜けると、黒き大群は天界へと向かって行ったのです……! あれはまさしく悪魔の群れでした! サタンは悪魔の大群を天界に向けて送り込んだのです……! 私達は目の前で起こっている状況になすすべもありませんでした。ましてや、瀕死のミカエル様をあの時守るのが精一杯でした…――! サタンがモルグドアの門から悪魔(しもべ)を天界に向けて送り込むと、その直後に再び扉が閉ざされたのです……! そして、扉の向こうでサタンが高々に笑い声を上げている様子が私達にはハッキリとわかったのです! サタンはまさしく狡猾な男です! 私達はそれを目の前で見て実感しました! あの者は始めからこれを狙っていたのです! ミカエル様の命を奪うと同時に、天界に攻め込むチャンスをサタンは企んでたのです! そして、悪魔の群れは天界を恐怖と混乱に陥れ、戦いに破れた貴方様を悪魔達は捕らえて連れ去ったのです! まさしく我々は、サタンの策略に見事にハメめられたのです…――!」
彼は、あの日起きた出来事すべて父に打ち明けたのだった。そして、怒りに内震えながら話を続けた。カマエルはあの日に起きた出来事の真実を知ると、愕然とした表情で下を向いた。
「――私達はあのあと、瀕死の状態のミカエル様を天界に連れ戻しました。ミカエル様は私達がいくら声をかけても返事が戻ってこないような非常に危険な状態でした。そして、私達は天界に起きた惨状を目の前にして言葉を失うような強いショックを受けたのです……! でも、嘆いている暇はない私達は急いでラファエル様のもとにミカエル様をお連れしました。ラファエル様は事の重大さに大変大きなショックを受けておられました。そして、ラファエル様は瀕死のミカエル様を懸命に治療なされました。ですが、サタンの不意討によって受けた神殺しの剣での致命傷は思った以上に深く、それは彼の命を確実に奪うような深刻な事態でした……! 我々は絶望的な状況の中で、ミカエル様が命をとりとめる事だけを必死に願いました。ですが、その祈りも天の神には届かず、ミカエル様は息をひきとったのです…――!」
その言葉を聞いた途端、カマエルは絶望に打ちのめされるような強いショックを受けて落胆した。そして、今まで以上の怒りに満ちると感情を露にして怒りをぶつけた。
『ウオォォォォッ! サタァァァァァアン!!』
カマエルは大きな雄叫びをあげながら、内から沸き上がる怒りを露にした。
「おのれぇ、忌まわしきサタンめ! よくもミカエル様を……! 我が主君に、手をかけるなどとは決して許さんぞ! 奴の心臓をえぐり出して、その息の根を止めてやるっ!」
カマエルの怒りと憎悪に満ちた声は、さすがに彼も怖じ気づいたのだった。深い絶望と怒りに満ちると、世を嘆くようにポツリと呟いた。
「ああ、もはや天界に光は去った。暗闇が訪れようとも、我らに未来などない…――!」
カマエルの絶望視したその言葉に彼は同じく共感した。
「確かに貴方様の言う通りです。ミカエル様なくして、天界に光など決して訪れません。ましてや、暗黒の影が我らの天界に訪れることでしょう。まさにその通りでございます……! ですが、希望はまだ絶たれていません。確かにミカエル様はあの時、命を失いました。ですが、ラファエル様の奇跡の力でミカエル様は命をとりとめたのです…――!」
「な、なんと…! それはまことか!?」
「はい! ラファエル様はミカエル様を助ける為に奇跡の力をお使いになったのです!」
彼のその言葉にカマエルは驚愕したのだった。
「おおっ、奇跡の力……! 遥か古に使われたていたとされる、神に選ばれた者のみが使うことを許された奇跡の神秘の魔法か……!?」
「カミーユ様、その通りです。ミカエル様は蘇生魔法により、辛うじて命を救われたのです」
カマエルは息子の言葉に安堵の表情を浮かべた。
「おお、なんと言う偉大なる奇跡だ…! ラファエル様は、まさしく癒しと慈愛に満ちた慈悲深きお方だ!」
カマエルはそう呟くと瞳にウッすらと涙を浮かべたのだった。
「ですが父上、ミカエル様は蘇生魔法で命をとりとめましたが、今も危険な状態が続いています……!」
「な、なにっ……!?」
「体の傷は癒えましたが、ミカエル様の魂は戻らなく。まったく意識がない状況が続いています。いつ目覚めるのかもわからずに、今も深い眠りに彼はいます。ラファエル様がおっしゃるには、このまま今の状態が続けば、何れはミカエル様の魂は体に戻ることもなく、魂は完全に消滅なさると言いました。それほどまでにも今も深刻な状況なのです…――!」
息子の話を聞いたカマエルは、ミカエルが深刻な状態にいる事を深く理解し、そこでうつ向いたのだった。
「ミカエル様は目覚めずに今も深い眠りの中をさ迷っています。ドミニオン様はミカエル様のその痛わしいお姿を天界の者には見せまいと、ウリエル様の宮殿にミカエル様をおかくしになられました。ミカエル様は我ら天界にとっては、永遠の盾と剣のシンボルです。天界が悪魔から守られていたのは偉大なるミカエル様がいたからこそです……! ですが、今はそのシンボルも足下から崩れ去ろうとしています。もし、彼のお姿を下級の天使達が見たりでもしたら。天使はさらに混乱に陥ると、ドミニオン様はおっしゃいました。ウリエル様もラファエル様もガブリエル様もハラリエル様もミカエル様のことを酷く心配して気にかけております。ですが、あのお方は…――!」
彼はそう話すと突然、暗い顔になって言葉を詰まらせた。
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