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第8章―吹雪の中の追跡―1
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――吹雪が大地に吹き荒れる中、竜騎兵達は塔の屋上にいた。彼らはワイバーンに乗るとそこで隊長の命令が下るまで待機した。リーゼルバーグは、自身の白い竜に股がり、ハルバートは自身の黒い竜に股がった。二匹の竜は他の竜とはことなり、いかにも堂々としていた。リーゼルバーグの竜は主人に似て大人しかったが、ハルバートの竜は荒くれ者だった。おまけに気性が激しく、そこで大人しくしていられない性格だった。ハルバートは自身の竜をなだめると、彼は携帯用の酒がはいっている銀色のボトルを飲んでそこで一息ついた。そこに看守のケイバーとギュータスが意気揚々と2人で現れた。
「よう、ハルバート。今から出かけるのか? こんな吹雪の中どこに行くか知らないが随分と武装してるみたいだな」
ケイバーは下から彼を見上げるとそこから話かけた。
「ケッ、相変わらずお前は白々しい奴だぜ。そう言うお前らは、こんな所で一体何してる? 坊っちゃんに頼まれてワザワザ偵察しにきたのか? だったらついでに言っとけ! おかしな飼い犬のせいで、うちの部下が1人噛み殺されたってな!」
「ん~? おかしな飼い犬? 誰のこと言ってるんだ?」
彼が不意に尋ねると、小脇に抱えていた兜らしき物を上から投げつけた。
「ホラよ……!」
ケイバーは投げつけられた兜をキャッチすると、それを目にするなり驚いた声を上げた。
「おいおい、なんだこりゃっ!? 人間の頭部じゃねーか! 何こんな物を持ち歩いてるんだよ! 薬きめすぎて正気じゃねーだろ!? こんな物、俺に渡してくるな!」
ケイバーは怒鳴ると隣にいたギュータスに渡した。
「くくくっ……これまた随分とハデにやってるな。竜騎兵同士で身内殺しか? 首の切り落とし方が上手いな。やっぱり戦場で戦ってただけ、血に飢えたりするのか? なあ、竜騎兵のオッサン?」
ギュータスは兜を被った男の頭部を両手に持つと、にやけた表情で笑って眺めていた。
「ハン! これが身内殺しに見えるか? 冗談じゃないぜ。イカれたお前達なら十分にやりかねないが、俺達はそこまで落ちぶれてねーぞ!」
「じゃあ、コイツは誰が殺ったんだ?」
ケイバーがその事を尋ねると、ハルバートは不機嫌な顔で答えた。
「――化け物の顔をした野郎に殺られたんだ!」
彼がそう答えると2人は顔を見合わせて何かを悟った。ケイバーは半笑いした表情で彼に尋ねた。
「あ~もしかして、それはひょっとしてジャントゥーユのことか? うちの身内で怪物ときたらそいつしか心あたりがねぇ。ハルバート、一体何があった?」
ケイバー興味津々に聞いくると、彼は酒を一口飲んで言い返した。
「知るか……! 俺が逆に聞きたいくらいだ! お前らんとこのイカれた狂犬がうちの所に来て、スティングを殺りやがったんだ! 今度越させる時は首輪でも繋いどけ!」
ハルバートはそう言い放つと、上から怒りを滲ませながら彼らを睨み付けた。
「ジャントゥーユが来たって事はクロビスの命令を聞いたか?」
「ああ、聞いた。囚人が一人脱走したそうじゃねーか? あの坊ちゃんが俺達に命令を出すなんて、よっぽどなんだな。おかげでこの寒い中ダモクレスの岬まで出動だ」
ハルバートはそう話すと、可笑しそうに笑った。
「あいつも焦ってたようだからな、そう言われるとそうかも…――」
ケイバーは相づちをして返事をした。
「で、そう言うテメーらはどこに行くんだ?」
「お前らと同じところだ。気にすんな」
「なるほど……ダモクレスの岬ってわけか?」
「ああ、俺達もクロビスに頼まれてそこに向かうところだ。なあハルバート。俺達も乗せてってくれよ?」
そう言って話を持ちかけると、ハルバートは直ぐに断った。
「ハン、冗談じゃねぇぜ。なんでお前達を連れて行かなきゃならねぇんだ? 俺は看守がでぇっきれぇーなんだよ!」
彼はそう話すと、不機嫌そうな表情で地面に向かって唾を吐いた。
「なんだとこのジジイ……!」
ギュータスは突然切れると怒鳴った。すると、ケイバーが隣で制止した。
「やめとけギュータス。今は争ってる暇は俺達にはないんだ。こんな所で騒いでたら寒さで体力がもたないぜ。ここは俺に任せて大人しくしてろ!」
ケイバーは彼を説得させると、その場で引き下がらせた。
「――少しは分かってるみたいだな。話がわからねーヤツより、話がわかる奴の方が俺は好きだぜ?」
ハルバートはそう話すと、呆れた顔で鼻で笑った。
「確かに看守は好きじゃねーが、お前は別だ。仕方がないから一緒に連れ行ってやる。俺達に感謝しろよ?」
彼はそう話すと、自分の後ろにケイバーを乗せた。
「乗れよ、俺の気が変わらないうちにな!」
「恩にきるぜハルバート! やっぱりお前はそこら辺にいる奴らより、頼もしいぜ!」
そう言ってケイバーが誉めると、ハルバートは豪快に笑った。
「そこら辺って誰のことだ? もしかしてリーゼルバーグのことか?」
「ああ、そうだとも。ヤツは石頭で話が通じねー。それどころか俺を毛嫌いしてやがる。副隊長よりも隊長らしいのはアンタだ」
「当然だろ? 俺は竜騎兵の隊長なんだからな!」
2人がひそひそ話をしていると、リーゼルバーグが近くから声をかけてきた。
「何をやっているハルバート! まさかそいつらも連れて行くきか!?」
「うるせぇよバーカ! 俺様が連れて行くって決めたら連れて行くんだ! お前は大人しく引っ込んでろ!」
彼がそう言い返すとリーゼルバーグは、不満げな顔で引き下がった。
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