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第8章―吹雪の中の追跡―3
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「損得ってコトワザがあるだろ。あまり深入りしない方がいいぜ?」
ケイバーがその事を話すと、ハルバートは笑って言い返した。
「なんだよ、お前らしくねえな。なんでも知りたがり屋の癖に、これには興味がないってか?」
「うるせーよハルバート。てめえにはわからねえけど俺にはわかる。何か…――」
「ケッ、また黙りか? まあ、いいさ。損得だろうが一度首を突っ込んだ以上は俺には知る権利がある! オーチスが何で囚人を逃がしたのか、あそこに行けば全てがわかる! 何故ダモクレスの岬にワザワザ場所を指定したんだ……!? あそこには一体何が……!」
ハルバートは独り言のように呟くと前で考え込んだ。すると、ケイバーが不意に冗談を言い始めた。
「――ヒョッとしたら、逃がした囚人と駆け落ちしようとしたんじゃないか?」
「あぁん? 今なんつった?」
「いや、駆け落ちだよ駆け落ち」
「はぁ?」
「オーチスは長年ここに勤めていたから、間がさしたんじゃねーか? あいつは故郷に家族を残して出稼ぎに来てるだろ? 自分の奥さんとも長い間会ってねーから、その間に逃がした囚人と恋に落ちたりして…――」
「おいおいマジかよ? お前が言うとマジに聞こえるからやめろ。いつからボケるようなキャラになったんだ?」
ハルバートは前で呆れるとため息をついた。
「囚人に渡した手紙はきっと恋文だったりして。あいつが囚人に脱獄の話を持ちかけたのも、本当は2人で駆け落ちする為の話だったら笑えるよな?」
ケイバーはそう言うと後ろで可笑しそうに笑った。
「つまり……奥さんと子供をそっちのけに、男に走ったってワケか?」
「ああ、きっとそうだ!」
「じゃあ何か? あいつらは出来てて、2人でダモクレスの岬まで駆け落ちする約束だったってことか?」
「ああ、愛がゆえの2人の過ちだ。人の恋路は邪魔するもんじゃねーな」
ケイバーはそう話すと、両腕を組んで染々と語った。
「あははははっ! そりゃー、見事な傑作な話だ! でも、あまりふざけてるとお前をこの空の上から振り落とすぞ?」
ハルバートは後ろを振り返るとギロッと睨み付けた。
「じょ、冗談だよ……! そんな目で見てくるなよ……!?」
ケイバーは可笑しそうに笑って言い返すと、彼は白けた顔で舌打ちした。
「なあ、ところでハルバート。お前に1つ聞きたい事があるんだが聞いてもいいか?」
「どんなことだ?」
「お前が看守嫌いなのは知っている。でも、なんでそんなに毛嫌いするんだ?」
「チッ、うるせーよ。お前には関係ないだろ……!」
ハルバートはその質問に不機嫌な顔で答えた。
「ああ、確かに俺には関係ないことだ。でも興味がある」
「興味だと?」
「ああ、そうだ」
ケイバーは怪しく笑いながら言い返した。
「俺の趣味は情報収集なんでね、何でも知りたくなるのが俺の悪い癖だ。まあ、そう言うことだから教えろよ?」
彼の返答にハルバートは、嫌味ったらしく言い返した。
「――本当にお前は趣味が悪いぜ。そんなだから、人に嫌われるんだ」
「素敵な誉め言葉ありがとう。ありがたく受け取ってやるよ?」
「チッ、誰も誉めてねーよ! 単に飽きれてるんだ!」
彼は怒鳴ると深くため息をついたのだった。
「司祭達に自分の主君であるイエスの引き渡しを持ちかけたユダは、銀貨30枚でイエスを裏切った。ユダが何故、イエスを裏切ったかは誰もわからねぇ。奴は本当に金が欲しくて銀貨30枚で自分の主君を売ったのか? それとも他に何か理由があったのか? 肝心なのはそこじゃねえ、ただ裏切りの行為があったのは事実なだけだ。俺が言いたいことは1つだ。あいつらの中にも裏切り者のユダがいた。それだけだ…――!」
ハルバートは自分の拳を強く握ると、そこで何かを思い出した様に怒りで体を震わせた。
「そうか。裏切り者のユダか…――。」
ケイバーは彼の怒りの理由を知ると、そこで黙りこんだ。
「チッ、久しぶりに嫌なこと思い出したぜ。お前のせいだぞケイバー!」
「何だよ八つ当たりかよ!?」
ハルバートは急にムッと不機嫌になると、いきなり上空をジグザグに飛行して暴れだした。
『ヒャッホー! やっぱり風を切って飛ばすのが最高だぜ! ヴァジュラもっと飛ばせーっ!』
主君の命令に黒いドラゴンは、いきなりスピードを上げた。
「やめろぉー! 目が回るぅ~っ!」
「目が回るだって~? だったらもっと回してやるぜ! おい、ヴァジュラ! こいつに波濤の円舞を見せてやれ!」
ドラゴンは命令されるままに上空で大きな円柱の渦を描くと、豪快にその中を一気に駆け抜けた。凄まじい衝撃波に森の木々は舞い上がり、上空では、大きな竜巻のような渦が発生した。周りにいた部下達は、巻き込まれないように素早く回避するとそこで渦を見上げた。
「みろよ、ハルバート隊長またドラゴンで遊んでる! でも、あれはいつみてもスゲェーや! あんなのに巻き込まれたら一貫の終わりだ!」
部下達は目の前で繰り出された大技にドキモを抜かれると苦笑いを浮かべた。
「どうだケイバー、目が回ったか?」
ハルバートが悪戯に笑って尋ねると、彼は自分の口を押さえながら顔を青ざめさせた。
「ウップ……! どうしてくれるんだ!? こっちは目が回ったせいで吐きそうだ!」
彼が後ろで睨み付けると、ハルバートは可笑しそうに笑った。
「はははっおまえって案外、神経が細いんだな? これくらいで具合が悪くなるなんてまだまだだな!」
「うるせぇ! お前の神経がおかしいだけだ! よく平然としていられるな! アレは普通に目が回るだろ!?」
「ああ、俺の場合は何年も竜騎手をやっていたから激しい動きには体が慣れてるんだよ。それに戦場での鍛練の成果って奴だ。あんな技はまだまだ序の口だぜ。ヴァジュラが本気でやれば、今よりも目が回るぞ?」
そう言って何気なく話すと、ケイバーは顔をひきつらせた。
「まさか、あれよりも大技があるのか?」
「ん? ああ、もちろんあるぜ。何せ俺とヴァジュラは最強にツエーからな! そこら辺にいる竜騎手とは格が違うんだよ!」
ハルバートはそう話すと、そこで自慢げに勝ち誇った。ケイバーは半分呆れると、後ろで苦笑いを浮かべた。
「あんたはやっぱりすげーや、そのタフなところ俺にも分けてくれよ?」
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