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第9章―ダモクレスの岬―1
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ダモクレスの岬の周辺は、強い吹雪きが吹いていた。海に近い場所なだけに、風も凍てつくように冷たかった。竜騎兵達は、ダモクレスの岬の周辺に到着するなり体を震わせた。
「なんて寒さだ! こんなところにいつまでもいたら、凍えてしまうぞ!」
リーゼルバーグの問いかけにハルバートは頷いた。
「ああ、海に近いだけに寒すぎて死にそうだ! きっとこの近くに隠れてるかも知れない! 手分けして探し出せ!」
彼の命令に部下達は返事をすると、上空から彼らは囚人の捜索を始めた。
「ハルバート隊長、自分はさっきあそこからこの辺りに人影が見えたのを確認しました! きっとこの近くにいます!」
ユングの報告にハルバートは返事をした。
「よし、ユング! お前は俺達とついて来い!お前は一際目が良いほうだ。この近くにいるなら、必ず足跡があるはずだ!」
「はい!」
ハルバートはユングに声をかけると直ぐに捜索を始めた。吹雪きの中での捜索は困難を極めた。しかし、彼らは諦めずに捜索を続けた。竜騎兵達が捜索をしている最中、ケイバーはハルバートの後ろで退屈そうにあくびをした。
「大将まだ見つからないのか? 俺なんか、寒さで眠くなってきたぜ」
彼がそう言うとハルバートは渇を入れた。
「後ろで寝てるんじゃねーよ! 寝てるヒマがあるならお前も探せ!」
「おいおいハルバート。上空から見ても、俺には足跡がどこにあるのかまったく見えねーよ。だったらもっと下に降りてくれよ?」
ケイバーが後ろでそのことをはなすと、ハルバートは前で舌打ちをした。
「ったく、本当に役に立たない奴だぜ。遊びでピクニックに来てるんじゃねぇんだよ!」
彼はイラつきながらも自分のドラゴンに話しかけた。
「ヴァジュラ、もっと下に降下してやれ! お前も足跡を見つけたら俺にすぐに知らせろよ!」
竜は言われるままに上空から下へと下がった。
「これで少しは見やすくなっただろ?」
「ああ、悪いなハルバート。俺はお前ら見たいに目はよくないんでね。目が良いお前らが羨ましいよ」
ケイバーは後ろで嫌味ったらしく言った。
「だったら下に降りて捜索するか? その方がもっと見やすくなるだろ?」
「おいおい冗談じゃねーぜ。こんな糞寒い所に置き去りにされたらシャレにならないから俺は遠慮する」
彼がそう言い返すとハルバートは前で可笑しそうに笑った。
「確かにそれは名案だ。お前をここに置き去りにするのもいいかもな?」
「なっ、何だと……!?」
2人は捜索をそっちのけで会話をするとリーゼルバーグが下から声をかけた。
「おい、ハルバート! どうしたリーゼルバーグ!?」
「ここに足跡があるぞ!」
「何!? どこだ足跡は!?」
「ここだ、今すぐ来い!」
ハルバートは慌てて竜に命令すると上空から地上へと降りた。そして、直ぐにリーゼルバーグのもとに駆け寄ると足跡が残っている地面を確認した。
ハルバートは直ぐに雪に覆われている地面を確認した。吹雪が吹き荒れているだけに地面さえも白い雪で覆われていた。この中では人の足跡なんて直ぐに雪でかき消されてしまうがリーゼルバーグが発見した地面には、まだ人の足跡らしき痕跡が残っていた。そして、よくみると近くには人の足跡が点々と続いていた。ハルバートは地面に残っている足跡を確認すると、とっさに呟いた。
「よくみるとまだ新しいな! ひょっとしたら近くにいるかも知れないぞ!?」
彼はそう呟くと辺りを見渡した。
「ああ、そうだ。囚人がこの近くにいると私も確信している。雪にかき消される前に早く足跡を辿るぞ!」
「ああ、そうだなリーゼルバーグ!」
2人はそこで意気投合すると、直ぐに捜索に戻ろうとした。
「ところでリーゼルバーグ、足跡はお前が見つけたのか?」
「いや、私ではない。アヤツが見つけたのだ」
彼はそう話すとギュータスの方に目を向けた。ギュータスは竜から降りると、2人のもとに近寄った。
「お偉いさんが2人もそろって足跡をみつけられないんじゃ、竜騎兵としてどうなのか疑う所だぜ。あんたら目が良い癖に何やってるんだ? 俺も遊びでテメーらについて来たわけじゃないんだよ。俺はアイツをがっかりさせたくない。だから早く囚人を捕まえて、アイツの前に引きずり出して、差し出してやるまでだ。それくらいの手土産がなきゃ、面白くねーだろ? それに俺はアイツの命令なら何だって聞いてやるさ。俺にとってアイツは…――」
ギュータスはそう話すと、口元がニヤリと笑った。ハルバートは顔がムスっとなると一言言い返した。
「足跡をみつけたくらいで偉そうな事をほざくな! 坊っちゃんがお前みたいな奴を相手にするはずがないだろ! つけあがるのも大概にしろ! 俺はお前よりも、坊っちゃんの事は知っているつもりだ。偉そうな事を俺に言う暇があったら早く囚人を捕まえてみせろ! まぁその前にお前よりも先に俺が囚人を捕まえるけどな!」
ハルバートはそう話すと、ギュータスを見下したようにギロッと睨み付けた。2人はそこで一触即発の雰囲気を漂わせた。リーゼルバーグは再び呆れると2人の間に割って入って仲裁した。
「お前達、いい加減にやめないか! こんな事をしている場合ではないだろ! この近くに隠れているのは確実だ! 早くみつけるぞ!」
リーゼルバーグが仲裁すると、2人は険悪なムードを漂わせながら睨み合いをした。その様子を黙って見ていたケイバーは、退屈そうにあくびをしながら呆れた様子を見せた。2人は未だに睨み合いをすると、どっちもひかない様子を見せた。風が強く吹くにつれ、ダモクレスの岬には激しく雪吹が舞った。冷たい冷気と共にピリピリとした緊張感が辺りに漂った。2人は今にも殴り合いをしそうな雰囲気だった。ハルバートはギュータスに向かって言い放った。
「青二才のガキが調子こいてるのも程々にしろ! 俺はお前よりも、生きて掻い潜ってきた修羅場の数が違うんだよ! あんまり俺の事を舐めてるようだったらこっちも容赦はしないぞ!」
ハルバートは持っている斧をギュータスに向けると、喧嘩腰で言い放った。
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