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第9章―ダモクレスの岬―3
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「エレメント・ストーンって知ってるだろ? お前も聞いたことはないか?」
「ああ、俺も聞いたことはある。ドワーフの連中が穴の中で採掘している魔力が宿っている貴重な天然石だろ?」
「そうだ。ごくまれにだが、石には精霊の魔力が宿っている石が存在する。精霊の魔力が封じ込められている魔石をドワーフ族はそれをエレメント・ストーンと呼んでいる。それぞれの魔石には五大要素のエレメントが精霊の力によって封じ込められている。だが、魔石には一つのエレメントの力しか宿る事が出来ない。魔石に秘められた力はどれも強力な魔力を秘めている。強力な魔力であるが故に魔石から魔力をすべて取り出すことはあのドワーフですらできない。ましてや、その石ごと扱える者もいない。だからドワーフの連中はそのエレメント・ストーンを砕いて、砕いた魔石から魔力が宿っている欠片を選び、それを加工する事で魔法石として生まれ変わらせているんだ。魔法石となった魔石の力は半減されるが、人間にも扱えるようになっている。魔法石はおもに魔法使いが使う杖に飾りとして施されている。魔法使いが魔石に封じ込められている魔力を引き出すことによって、その力が真に発揮される。そして、中には魔法石をオーブとして使う者もいる。その場合オーブにはオーブ専用の術者の魔力も加わり、オーブごとに色々な魔法が封じ込められているんだ」
ハルバートの話にケイバーは思わず聞き入った。
「なんかすげーなそれ。お前、どこでそんな話を聞いたんだ?」
「さあ、もう昔のことさ…――」
彼はそう話すと何かを懐かしんでいた。
「魔法石は質が良いほど、高価な物として売られている。オーブはオーブごとに色々な魔法が封じ込められているから場合によっては、高等な魔法も中には封じられている物もある。それを扱うとなると普通の奴が高等向けのオーブを扱うには無理がある。それなりの素質と魔力と精神力がなければ扱えないだろう――。だが、中には高等向けのオーブを普通の奴でも扱える物が存在する。その場合、かなりの値打ちがつくって奴だ。オーブは3つの種類に分けられている。1つは攻撃を得意としたオーブともう2つは守りを得意としたオーブと3つ目は、癒しの力を得意としたオーブだ。オーブは魔石とおなじく、一種類の力しか与えられない。だが、高等向けのオーブは最大で二種類から三種類の力を司れる。三種類の力を司ったオーブとなるとその値打ちはさらに高額な物になる。でも、今ではそう言ったオーブは作られていないのが殆どだ。オーブの作り手の決まり事ではその存在こそがタブーとされているからだ。つまり俺が言いたいことは1つだ。あいつが使ったオーブには、中級魔法の呪文がかけられているってことさ。守護の風は守りの呪文だ。風は術者を守り、命を脅かす者の前には風は容赦なく前に立ち塞がる。無理矢理それを前に突破しようとすれば、あいつらみたいに死んじまうってわけだ。たぶんあの風の効果が消えるにはまだ時間がかかる。その前に囚人はとっくに姿を消しているだろ。でも、俺がそうはさせねぇ。こうなったら何が何でも掴まえてやる…――!」
ハルバートはそう話すと、瞳の奥を強くギラつかせた。
「捕まえるってどうやってだ? 風が邪魔して前に進めないのにそれを無理矢理突破しようってワケか?」
「ああ、そうだ!」
「じょ、冗談だろ? さっきそれでお前の部下の2人が無理矢理前に突破しようとして風の中にのみこまれて死んだばかりだろ!? それにあれはただの風じゃないんだろ!? 魔法石の力なんだろ!? 俺は冗談じゃねーぜ! 風にもみくちゃにされた挙げ句、虫みたいに地面に叩き潰されて死んでくのはゴメンだ! たかが囚人ひとりを追いかけるだけなのに、自分の命を差し出すんなんて真っ平ゴメンだぜ! 死にたかったら自分だけ死んでこい! それに、あの魔法を突破するなんて本当に出来ると思ってるのか!?」
彼の質問にハルバートは真っ直ぐに答えた。
「ああ、出来るさ! 部下達が乗ってる竜じゃ、あの魔法の力に耐える事は出来ないが俺の竜とリーゼルバーグの竜ならあの風を突破することは可能だ!」
「おいおい、マジかよ? 本気で言ってるのかお前、正気か……!?」
ケイバーはおもわず、顔をひきつらせながら半笑いを浮かべた。気乗りしない彼とは裏腹にハルバートはヤル気満々だった。
「ここまで来て取り逃がしたらお前だってまずいだろ? 坊っちゃんに何て報告する気だ?」
「チッ、くそっ……! 今日に限って貧乏くじだぜ! お前の竜に乗ったのが、そもそも間違いだった!」
そう言って話すとケイバーは呆れた表情で深いため息をついた。2人で会話をしていると、後ろからリーゼルバーグが慌てて駆けつけた。
「おい、ハルバート! あれはただの風ではないぞ! あれは魔法石のオーブの力だ! うかつに近づけば命とりになる!」
リーゼルバーグが焦りながら駆けつけると、ハルバートは返事をした。
「ああ、その通りだリーゼルバーグ! あの逃げた囚人の野郎は、よりによって魔法石のオーブを持ってやがる! しかも中級呪文の魔法がかけられいるオーブだ! 他にも魔法を隠してるかも知れないぞ!?」
2人はその場で状況を確認しあった。
「俺のヴァジュラとお前のリューケリオンなら、あのを術を突破できる! 他の部下達はここで待機させるしかねぇ!」
「ああ、そうだな! 部下達はここで待機させるのが賢明だ! さほどの力しか持たないワイバーンでは、あの術を突破することは無謀すぎる! 下手すれば、ニコラスとロジャーズのように死人が増えるだけだぞ…――!」
「ああ、だから俺達で突破するしか方法はねぇ! おい、覚悟はいいか!?」
「ああ、のぞむところだハルバート!」
2人は意気投合すると強行突破を決意した。ハルバートは部下達に待機の命令を下すと、2人で突破する作戦を部下達に伝えた。部下達は命令に従うと、その場から引き下がって安全な所に移動した。2人が躍起になっているとケイバーは思わず尋ねた。
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