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第9章―ダモクレスの岬―6
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リーゼルバーグは剣先を火の鳥に向けると、敵に恐れすら感じない程の冷静な眼差しで勇気凛凛に立ち向かった。
「さあ来るがよい、火の鳥よ! お前の弱点などはわかっておる! 正々堂々と挑んで来るがいい!」
彼は騎士道精神のもと、敵に背を向けるとこともなく勇敢にも勝負に挑んだ。ギュータスが後ろでヤジを飛ばしてるのも関わらず、リーゼルバーグは精神力を集中させるとそこで剣を構えた。火の鳥は、再び勢い良く旋回すると、正面から突撃する体勢に出た。
「おいおい、このままだとマジでバーベキューにされちまうぞ!? 俺はこんな所で死ぬはゴメンだ!」
「黙れ小僧! これは私と奴の戦いだ! お前があの火の鳥を止めてみせるなら私は退いてやる! だが、勝てぬ相手ならお前は黙ってそこで見ておれ!」
リーゼルバーグはそう言って言い返すと、竜に向かって命令した。
「リューケリオン! あの火の鳥に向かって、お前の得意な氷結ブレスを仕掛けるんだ! そして、奴を凍りづけにしてしまえ!」
彼の命令に竜は翼を大きく広げると、そこで力強い雄叫びをあげた。
『いざ尋常に勝負!』
真っ直ぐ剣を構えると竜と共に突撃を仕掛けた。それと同時に火の鳥も真っ向から突撃しにきた。その瞬間、大空では大きな力が一つに衝突しあって弾けた。空の上で大きな力が一つに衝突しあうと大気は大きく揺れた。そして、瞬く間に弾けた。火の鳥は竜に向かって強烈な炎を口から吐いた。それはインフェルノ・ブレスと言う火の鳥が得意とする強力な技だった。幻影でありながらもその力はまるで、本物の火の鳥に匹敵するほどの大きな力だった。火の鳥が猛烈な勢いでインフェルノ・ブレスを口から吐くと、リューケリオンは口から凍てついた氷の息吹を吐いて応戦した。大きな力が一つに衝突した途端に大空では、衝撃波が生じた。そして、その衝撃波は大気を切り裂き、大地さえも切り裂いた。火の鳥と竜は互いに力をぶつけ合うと、大空では激しい戦闘を繰り広げた。遠目から見ていた竜騎兵達は遠くの空で火の鳥と竜が戦っている姿に唖然となった。大空では力が一つに弾けては、再び衝突しあっていた。一人の隊員が驚いた表情で上空に向かって指をさすと周りに話した。
「あっ、あれはもしかして、リーゼルバーグ副隊長じゃないのか…――!?」
一人の隊員がそのことを突然話すと、周りも頷いて答えた。
「ああ、そうだ! 間違いない! あれは副隊長だ! やっぱり2人とも生きていたんだ! 嵐のような風の魔法を突破するなんて、やっぱり俺達の隊長と副隊長はスゲェー!」
竜騎兵達は遠目で彼らの安否を確認すると、ホッと一安心した様子を見せた。
「でも、あの鳥は一体なんだ……!? 俺はあんな鳥は見たこともないぞ!?」
彼らは遠目から戦いを見ながらそこで騒いだ。ユングは居ても立ってもいられなくなると、火の鳥と戦っている彼らの方へと駆けつけに行こうとした。
「おい、待てユング! お前どこに行く気だ!? ここで待機してろってさっき命令が出ただろ!?」
長い髭の男が彼を引き止めるとユングは命令を無視した。
「離して下さい! ここで黙って見てろって言うんですか!? リーゼルバーグ副隊長が危ないんですよ!? 僕はとてもじゃ、見てみぬフリ何てできない! 僕は今から隊長を助けに行きます!」
ユングはそう言って言い返すと、直ぐに駆けつけに行こうとした。
「待て! お前みたいなひよっこが手助けに入って一体何ができる!? 冷静になって考えろ!」
長い髭の男が説得すると、ユングはムキになって言い返した。
「ああ、確かに僕はしたっぱの青二才の子供だけど、ただ見て何もしない貴方達よりもマシだ! だって僕達の隊長だぞ!? 貴方は本気でそんなことを思っているんですか!? 悪いけど僕にはそんなことは出来ない! 行っても彼の役に立たないかもしれないけど、僕は見捨てられない! リーゼルバーグ隊長は僕にとって恩師なんだ! 今までずっと生きる意味も希望も何もなかったこの僕を、リーゼルバーグ隊長は救ってくれた! そして、僕は彼に救われた! 今の僕がいるのは、リーゼルバーグ隊長のおかげだ! だから僕は役に立たなくても必ず彼の役にたってみせる! 僕を止めても無駄だ!」
ユングはそこで自分の思いを吐き出すと、そのまま命令を逆らい、唖然としている彼らを無視して、まだ魔法が解けていない風の中へと自分の竜と共に果敢に飛び込んで行った。
「よし、いまなら行けるぞ! ハルバート隊長や、リーゼルバーグ隊長にも出来たんだ! 僕にだって…――!」
彼は自分のワイバーンと共に立ち塞がる風の壁の中を果敢にも飛び込んで行くと、風はたちまち嵐のように渦を巻いて、中で彼に襲いかかってきた。ユングは竜の背中に乗りながら全速力で風の中を突き抜いた。そして、彼は背後から襲いかかってくる竜巻の渦を間一髪の所でかわした。かわすと同時に竜巻の渦は風の壁を突き破った。僅かに突破口が開かれると、彼は素早くその中を潜り抜けた。そして、彼は見事に向こう側に辿り着いたのだった。
「やっ、やった! 生きてる……! 後ろから竜巻の渦が襲いかかって来た時は焦ったけど、こうして生き延びられたのはコイツのおかげかもしれない!」
ユングはそこで喜びの声をあげつつも、冷静に状況を把握した。
「そうだ……! こうしちゃいられないや、はやくリーゼルバーグ隊長を助けに行かないと――!」
不意に突然そのことを思い出すと、急いで彼らの下へと合流しに行った。
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