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第10章―決着の行く末―1
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リーゼルバーグが火の鳥と闘っている最中、もう1つの方では決着がつけられようとしていた。上空で激しい戦闘が繰り広げられている一方で、地上ではハルバート達が囚人を必死で追いかけていた。吹雪は一層、吹き荒れて彼らの視界を悪くさせた――。
「逃がしてたまるか、いい加減おとなしく捕まれぇっ!」
ハルバートは竜に命令すると上空から一気に急降下して接近を試みた。囚人は追いつめられると、岬の断崖の絶壁まで走って逃げた。
「くそっ……! いつまでもチョロチョロと逃げやがって……! それに一気に視界が悪くなってきやがった!」
焦る彼にケイバーは後ろから話しかけた。
「おい、このままだと逃げられるぞ!」
「うるせぇーっ! そんなことは言われなくてもわかってるんだよ!」
「チッ、こうなったら俺が仕留めてやる! おい! ここで降ろせ!」
ハルバートが引き止める前にケイバーは痺れを切らすと、竜の背中から突然、下に向かって飛び降りた。身軽な動きで雪原の上に着地すると素早い動きで雪の地面を一気に走り出して追いかけた。
「おい、待ちやがれ! てめぇを生かしておくわけには、いかねー!」
囚人は後ろを振りかえると、驚いた表情で焦りの色を浮かべた。そして、前を振り向くと足下には断崖の絶壁が広がっていた。断崖の下には凍るような冷たい海が広がっていた。海面は激しく波を打ち寄せては荒波の如く打ち寄せていた。何よりこの凍てついた気温が海を一層、冷たくさせていたのが一目瞭然だった。囚人は絶望の顔色をしながら、断崖の絶壁から下を恐る恐る見下ろした。するとケイバーが後ろから近づいてきた。そして、逃げ場を失った囚人の背後で、彼は両手にボウガンを構えるとそこでにやついて笑った。
「ハハン、チェックメイトだ! なにも足が早いのはお前だけじゃねーよ、このケイバー様を舐めてくれちゃあ困るぜ! お前がどんなに足が早くてもだ。俺様の電光石火の走りには敵わないんだよ! さてと、ここいらで潔くケリをつけてやる! 言いたいことがあるなら今懺悔しな!」
そう言ってケイバーは、殺気に満ちながら瞳の奥をぎらつかせた。ボウガンは迷うこともなく、囚人の方へ真っ直ぐ向けられていた。
「ん、どうした? 懺悔は言わないのか? てめえが脱走したおかげで今日は散々な一日だったんだぜ? 詫びの言葉くらい言ったらどうだ?」
囚人に向かってケイバーはそう言い放つと、ボウガンを向けたままジリジリと近づいた。
「後ろは崖だ。このまま海の中に飛び込んで逃げてもいいぜ。だけど飛び込んだ直後に死ぬのは確実だけどな。こんな凍てついた気温の中で海の中に飛び込んだら即お陀仏だ。それくらいの覚悟あるなら俺は止めねー。でもな、その前にお前の眉間をこの矢で射ぬいてやるぜ。さあ、どっちで死にたいか今すぐ決めろ!」
囚人は断崖の絶壁で絶体絶命のピンチに立たされた。
「他の奴らはお前を生かして捕まえるようだけど、俺は違う。俺はお前を生かすつもりはない。生憎だが俺にはそんな生温い優しさは持ち合わせてないんでね。任務だろうがなかろうが、気に入らねえ奴は排除してやるまでだ! だから早くケリをつけてやる!」
そう言い放つとボウガンの引き金に指をかけた。すると背後からハルバートがケイバーに向かって手斧を投げつけた。
投げつけた手斧が命中すると、彼は地面にボウガンを落とした。ハルバートは睨み付けながら威圧した。
「生憎だがそうはさせるか。何でもかんでもブッ殺せばいいってもんじゃねー。ちったぁ学習しな、こっちにも聞きたいことがあるんだ。それでもやるなら俺がとことん相手になってやる!」
ケイバーはそこで鼻で笑うと、悪人のような顔つきで背後を振り返った。
「やってくれるじゃねーかハルバート。お山の大将さんも本領発揮って処か? クククッ。いいぜアンタのそう言うところ、俺は好きだぜ? 相手になってやるって言ったな? おもしれぇ、それでこそ漢ってもんだ。でもなあ、今はお前とやりあってる暇はないんだよ! こんなところでお遊戯なんかしてられっか! 奴をぶっ殺すって決めた以上、誰にも邪魔はさせねー! それにこいつに拘って何の得がある!? バカな囚人が一人、脱獄しただけだろ!」
ケイバーは囚人の方に目を向けると、殺気だちながら怒鳴った。
「カリカリしてるテメェもどうかしてるんじゃねーか? そのバカな囚人に俺は用があるんだ。だから質問する前に勝手に殺されちゃあ、こっちが困るっつてんだよ!」
ハルバートはそう言って言い返すと、拳を鳴らして威嚇した。
「ハン、質問するも何もこいつは只の囚人だ! オーチスの馬鹿野郎がこいつを牢屋から逃がしたおかげで、俺は朝からクロビスのトバッチリ受けて大迷惑してるんだ!」
彼は怒鳴りながら言い返すと、今にも囚人を手にかけそうな勢いだった。囚人は鬼の形相で睨まれるとそこで足下を怯ませた。
「挙げ句の果てにはこの寒い中を外の捜索に回されて、散々な目に遭わされたってぇのに囚人をわざわざ生かして捕まえろだぁ!? どいつもこいつもふざけたことぬかしてんじゃねぇ! そんなのは今さら聞くまでもねーんだよ!」
感情を剥き出しにすると、ケイバーはポケットから鋭いナイフを取りだした。そして、それを右手に構えると囚人の方に向かって襲いかかった。ハルバートは咄嗟に前に立ち塞がると、彼の右手を素早く掴んでナイフを持っている手を力で押さえ込んだ。
「チッ、この狂犬が……! てめぇは血の気が多すぎるんだよ!」
ナイフを持っている手を押さえ込まれると、ケイバーは睨みながら呟いた。
「いいぜ、上等だ! タイマン勝負してやる! 今のでカチンときたぜ!」
ケイバーはすかさず右手を振りほどくと、そのまま宙返りして体勢を戻した。そして、ナイフを右手に翳すと舌でベロリと舐めて猟奇的な顔つきで笑った。
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