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第10章―決着の行く末―5
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地面に突き刺したナイフを取りに戻ると、伸ばした左手をハルバートは黙って掴み。そのまま下に彼を押し倒した。そして、鋭いナイフを彼の喉に突きつけると一言言い返した。
「これだけは先に言っとく! お前が何をしようが、何を企もうが、俺には正直関係ねぇことだ! でもなあ、あいつにもし手を出したら只じゃおかねえぞ! これは警告だ! 今の言葉覚えておけッ!」
ハルバートがナイフを突きつけながらそのことを言い放つと、ケイバーは下で薄笑いを浮かべた。
「なるほど手を出すなってか? ますますおもしれぇじゃねーか。アンタのその忠誠心ってやつが本物かどうかを試すのも悪くないな。一つ聞いても言いか? アンタの忠誠心は本当はどこにある? アイツか、それとも死んだ亡霊にか? アンタはアイツに、亡霊を重ねて見てるんじゃないのか? 見捨てることさえも簡単に出来るのにアンタはまだ其処に居留まる。そうまでして留まる理由は一体何だ? あいつとの絆とでも言う気か――?」
ケイバーは不意にそう話すと、自分に突きつけられたナイフをそのまま素手で握った。刃を素手で握ると、掌からは赤い血が地面へとポタポタと流れ落ちた。そして、流れた血は雪で覆われた白い地面に赤い滴の痕を残した。
「俺がこの世で一番嫌いなものは何だと思う? 絆とか言う、馬鹿げたヤツだ。絆なんてものはくだらねぇ。あんなのは所詮クソだ。あっても何の役にもたちゃあしないさ。だから俺はそれをぶっ壊して、破壊して、蹂躙して、グチャグチャにしてやりたいんだよ」
そう言って話すと、刃を握り絞めながら狂気を秘めた瞳で怪しく笑った。
「だからアンタのそのアイツへの忠誠心とやらをぶっ壊して、本性を暴いてやりたくなるぜ。まあ、どうせ出てくるのはクソの膿かも知れねーけどな!」
ハルバートはその言葉に頭の中がカッとなると、怒りに身をまかせて彼の顔面に向けてパンチを一発喰らわせた。強烈なパンチを喰らうとケイバーはその場で気絶した。
『クソがそこで寝てろッツ!!』
怒りの拳でノックアウトすると、その場から立ち上がって唾を吐き捨てた。
「あ、わりぃな。ついカッとなって手加減するのを忘れてた。でも、お前が悪いからな。人をコケにした挙げ句、クソ呼ばわりしたからな。ホントにお前は性格破綻してるよな。人の心を覗いた気で嫌がる。ホントに腹が立つヤツだぜ。絆がクソだと? 黙って聞いていれば好き放題言いやがって……! 寝たフリしてもわかってるんだ! さあ、立ちあがれ!」
キレた状態のまま、ケイバーに掴みかかった。しかし、彼はピクリともせずに本当に気絶していた。
「チッ、気絶しやがって…――!」
そこでイラついた表情で彼は舌打ちすると、掴みかかった手をパッと離した。そして、気絶している相手に向かって一言言い返した。
「俺もお前に一言言っておいてやるッ! いや、この際だから言ってやるよ! テメェは余計なお喋りが多すぎるんだよ! さすがの俺でもさっきのはカチンとくるぜ! 坊ちゃんのことを何もしらねー癖にふざけんなよッ! って言っても聞こえねーか、ホント今日は散々な一日だぜ…――!」
ハルバートは、囚人が落ちた崖から下を覗いて、あらためてそこで確認した。海面には囚人の死体は浮いていなかった。上から覗き込むのをやめると、疲れた溜め息をついた。そして、口笛を吹いてヴァジュラを近くに呼び寄せると気絶したままのケイバーを上に乗せてその場から離れようとした。すると上空で突如、大きな雷が鳴り響いた。雷が鳴り響くとドーンっと何処かで雷が落ちたのを感じた。ヴァジュラもそれに気がつき、上を直ぐに見上げた。不意に目を凝らすと、遠くの空でリーゼルバーグと火の鳥が闘っているのが見えた。彼はそこで状況を思い出すと急いでリーゼルバーグの方へと向かおうとした。そして、ヴァジュラの背中に跨がるとハルバートは右足で合図を送って地上から空へと飛び立った。
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