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第11章―少年が見たのは―10
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――お前が死んでしまったら、母親や兄弟も悲しむ! それにお前の仲間も私もそうだ! だから戻って来い皆の所に……!――
彼の問いかけに少年は、少しずつ冷静さを取り戻した。
「お母さん……お兄ちゃん……お姉ちゃん……」
少年は家族の事を思い出すと、気持ちは大きく揺れた。
「父さん僕は…――」
――ユング、お前の命の終わりはここではない。今すぐ目を覚まして、みんなの所に戻るのだ――
光は曇りもない言葉で、少年のさ迷う心を光で照らした。
「で、でも、僕が戻ったら父さんがっ…――! そ、それに向こうには父さんがいない……! ぼっ、僕は…――!」
――わたしがいる!――
「え……?」
――いいかユング。お前が父をおもう気持ちはわかるが、それはならんのだ! そこにいてはならん! そこは生と死の境界線だ! お前の父がそこに現れたのはお前を迎えにきたからではない! お前を救う為に現れたのだ! その思いを無駄にしてはならん! お前はまだその境界線の向こうには行ってはならんのだ! いいか、私の所に戻って来い! 例え現実がどんなに辛くて苦しくても、お前ならそれを乗り越えられる力がある! 共に生きるのだ命ある限り!――
『リーゼルバーグ隊長ッ……!!』
少年はその言葉に胸をうたれた。それと同時に生きる力が湧いてきた。
「父さん、僕は皆の所に…――!」
ユングは不意に話しかけた。すると父は、黙っていた口を開いた。
「行きなさいユン。お前はまだここに来てはいけない。光が照す向こうの世界に戻るんだ。ここは生と死の境界線だ。お前には、父さんの分まで生きて欲しい。それが父さんのたった一つの願いだ」
「おっ、お父さん……!?」
父は息子を自分の両腕の中に抱き締めると、頭を優しく撫でた。
「母さんを頼んだぞ――?」
「うっ……っひっ……」
「父さんはいつもお前を傍で見守ってるよ。さあ、あの光の中に行きなさい」
「お父さぁんッ!」
少年は涙を流すと、父にしがみついて泣きついた。
「お前は本当に小さい頃から変わらないな、その泣き虫な所も。父さんはお前の成長姿がもう一度見れて幸せだった…――」
「うっ……ひっ……!」
父は最後にそう話すと、抱き締めた両腕を離した。そして、周りを白い光が、ゆっくりと包んでいった。辺りは光の世界へと包まれて行った。消えて行く父に向かってユングは素直な気持ちを精一杯に伝えた。
「父さん! 僕、父さんみたいに強くなる…――! だからもう大丈夫、心配しないで……! 父さんは僕のこと天国から見守ってて……! 僕は父さんのことずっと忘れないよ! 父さんの代わりに、母さんを守るから安心して! いつか大きくなったら父さんみたいに誰かを守れるくらい強くなるから……! だからそれまでは天国で元気にしててね! さよなら、ありがとう! 父さん大好き…――!」
父に有りのままの気持ちを伝えると、右手を翳して少年は大きく手を振った。父はその言葉にどんなことを感じて思ったかは少年にはわからなかったが、光の世界へと姿を消す父の表情は、どこか優しく笑ってるようにも見えた。少年は、その光景を忘れることはなかった。そして、光が全てを呑み込むと意識は遠退くようにそこで途絶えた。
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