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第12章―残骸のマリア―2
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不意に部屋の中を見渡すと、死体の側には怪しげな道具がワゴンの上に置かれていた。何かの手術道具かはわからないが、鋭利な刃物が並べられていた。他には拷問に使うような道具も置かれていた。
これを使ったのか――?
リオファーレは刃物を手にとると、それを間近で見て確認した。刃物には赤い血がまだ付着していた。刃物をワゴンの上に置くと彼はそこでため息をついた。死体から抜かれた脳は見当たらず、ただ不気味なくらい静だった。
部屋の出口に向かうと不意にワインの匂いが漂った。それと同時に何かの臭いもした。足を止めて辺りを見渡すと、部屋の奥には、小さなテーブルが置かれていた。その上にはワイングラスと、誰かが食事したあとのお皿が置かれていた。お皿が置かれているテーブルの側には、小さなテーブルがあり。その上には古いクラシックの蓄音機が置いてあった。死体に気をとられていて気づかなかったが改めて辺りを見渡すとそこには奇妙な光景が広がっていた。近くにあった蝋燭台に火をつけると彼はそれを持って部屋の奥まで歩いた。テーブルの方に歩み寄ると、彼はそこで驚愕して震撼した。そこには全ての答えがあった。それはまさに鳥肌が立つくらいの恐ろしい光景だった――。
お皿の上には食べ残しがあった。それは肉の塊のような物。どこか独特な香りと僅かに異様な臭いが漂った。テーブルの上に置かれているワイングラスには、まだ飲み残しがあった。
誰かがワインをここで飲んだのだろうか? それも、死体が置かれているこの部屋で――。
クラシックの蓄音機には、レコードがまだ入っていた。つまり、ここで誰かが死体を見ながら食事をしたことになる。それは一体、どんな精神状態なのか? 普通の精神状態の者が、ここで優雅に音楽を聴きながら食事をするだろうか? ましてや、死体がいる目の前で。そうなると疑惑は彼へと、必然的に向けられていく。まるでこれは晩餐会だ。そう、死の晩餐会。恐らくこの席に招待されたのは彼だ。そうだとしたら一体…――?
リオファーレは奇妙な光景を目の当たりにすると、精神的に耐えられずに口を押さえて吐き気を堪えた。彼が一体何を食べていたかはわからないが。焼かれていた肉はミディアムで、お皿の上には血が滴っていた。そこである答えが導かれると、彼は背筋を凍らせながらゾッと寒気を感じた。それはまさに狂気と呼ぶには相応しい衝撃的な事実だった――。
――闇は人の心を蝕む。それは彼にとっても、例外ではなかった。復讐心は人を悪に変え、まともな理性すらそこには存在しない。あるのは憎しみと怒りだけ。ただそれだけが永遠に続く。そこに終わりなんてものない。誰がそれを終わらすまでは。一人の少年が見た世界は、それはあまりにも残酷な世界だった。唯一の救いを奪われた少年は、闇に心を蝕まわれ。それは彼の正気をも徐々に奪った。ただ今の彼にあるのは何も感じない心と、果てしない闇だけが心の奥で広がっていた。それは冷たく、氷のように冷たい。そんな彼の心の奥くに今だあるのは、ある者達への復讐心だった。
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