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第13章―箱庭の天使達―2
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「天界最強の大天使ミカエル。その素顔は誰も見た事がないか――。でも、何でだろう。だってホラ、こんなチャンスがあるのに本当に誰も見た事がないの? ボクだったらドサクサに紛れて彼の顔を見ちゃうけどな。だってこんなチャンスは滅多にないよ。ましてやサタンに敗れて床に伏せて治療を受けてるなんてさ。天界最強の大天使なのにね、運命は残酷だねミカエル。キミもそう思うだろ?」
ラグエルはカーテン越しで眠りにつくミカエルに話しかけた。その様子はどこか悪戯な雰囲気を漂わせた。覆われているカーテンに手を伸ばすと、彼はそこでニヤリと笑った。
「誰もキミの素顔を見たことがないんなら、ボクがみてあげる。そしたらボクは天界で初めてキミの素顔を見た天使になれるかな。ねぇ、どう思うミカエル? 寝てばっかいないで返事をして。ボクだよ、ラグエルだ。キミに会いに来たよ」
彼は親しげな声でミカエルに話しかけると、両手でカーテンを掴んで開こうとした。すると突如、彼の喉元に鋭い剣先の刃が向けられた――。
「――これは驚いたな。終末の天使がここへ何しに来たのですか? まさか彼に終わりでも告げに来たのですか?」
そう言って凛々しい顔をした青年は、ラグエルに剣先を向けるとカーテンの間からその姿を現した。彼の名前はウリエル。絶世の美しい顔立ちに金髪の長い髪を一つに束ね、高貴な気高さを内に秘め、全身を鎧で身に纏っていた。彼が現れるなり、ラグエルは直ぐに気がついた。
「何だ、キミか。居ないと思えばこんな所にいたんだ?」
ラグエルはつまらなそうな顔で話すと、カーテンの側から離れた。
「僕では不満ですか?」
凛々しい顔をした青年はラグエルに言い返すとそこでニコリと笑った。だが、どうみても目は笑っていなかった。ただならぬオーラを放ちながら、彼は剣を向けて威嚇した。
「下がれ、ラグエル! ここはお前みたいな天使が来る所ではない! 僕の宮殿から今すぐ立ち去るがいい!」
彼は剣を向けて言い放つと、ラグエルは呆れた様子で言い返した。
「キミのその堅物な性格は相変わらずだねウリエル。もう昔からの仲なのにいつになったらボクと仲良くしてくれるの?」
ラグエルはそう話すと悪戯な顔で笑って見せた。ウリエルはその言葉に眉を寄せて、しかめっ面を見せた。
「君と仲良くだって? 僕は不吉な天使と仲良くする覚えはないよ。僕だけじゃなく、他の天使達も皆だ。きみと仲良くするのは精々、ハラリエルとドミニオンくらいだう」
ウリエルはそう答えると彼を睨み付けた。
「ハラリエルはともかく、あのジーさんとボクが仲良くしてるだって? 冗談はよしてくれよ。ボクはあんな奴とは仲良くするつもりはない。キミの誤解なんかじゃないのか?」
ラグエルは不機嫌な顔をすると両腕を組んで言い返した。
「僕の誤解――? きみがドミニオン様と一緒にいる所をよく見かけるけどそれでも誤解と言うのかい? ラグエル、きみは嘘をつくのが下手だな」
ウリエルは彼を見ながら冷やかな目をした。ラグエルは両腕を組むのをやめると、小バカにした態度で鼻で笑って見せた。
「じゃあ、何? ボクがあのジーさんと仲良くしてたら何か問題でもあるの?」
彼がその事を質問すると、ウリエルは瞳を光らせた。
「ドミニオン様は天界を治める偉大なる長。そしてきみは終末の天使でありながら、他の天使達を監視する役目を担う天使でもある。それがどんな意味なのか君だってわかっているはずだ。そんな2人が共に行動をしていたら、すくなからず良いとは思えないんじゃないのか?」
ウリエルは神妙な顔で話すと彼に向けた剣先を下におろした。ラグエルは彼のその言葉に、黙って口を閉ざしたのだった。
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