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第14章―魂の在りか―4
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「姫様がこの国に生まれてから早、1年。お主は姫様に使えると忠誠を誓った騎士でありながらも、その姫様を泣かすとはそれでも騎士か!?」
「いえ、ですがガルシアさん。今は急ぎの用事がありまして……」
「だまらっしゃい、このたわけ者!!」
ガルシアは怒鳴ると入れ歯が口から抜け落ちそうになった。急に怒鳴ったので老婆はそこで苦しそうにむせ始めた。
「ゲフォゲフォゲフォ!! ウゲゲゲッ!!」
「ちょっ、ガルシアさん大丈夫ですか……!?」
「まあ、婆ったらそんなに咳き込むと大変よ!?」
「おお、姫様はやはり優しいお方だ。この老いさらばえたババの背中を優しく擦って下さるとは……! それに比べてアレン! お主はその馬の上で見下ろす事しか出来ないのか!?」
「ガルシアさん無茶言わないで下さいよ……!」
「だまらっしゃーい!!」
老婆は地面に杖をつきながら、再び彼に怒鳴った。
「よいか。私が言いたいのは姫様がどれだけお主に心をいためているかじゃ! まさかお主は女心がわからんような鈍感で、マヌケな男ではあるまい!」
「は、はぁ……」
「プレイなんとかと言う男だったらババがお主をせっかんせねばいかんが、お前さんはそんなふしだらな男とは思ってはおらん! だからお主に姫様を任せたんじゃ! その意味の重さをお主は、全くわかっておらんようじゃのう!」
「ガルシアさんそんなに怒ると、また血圧が上がりますよ?」
「フン! 血圧だろうが、血管だろうが、結膜炎だろうが、今はそんな事はよいのじゃ! つまりババが言いたいのは、姫様の命令には絶対に従わなくてはならない! それが姫様に忠誠を誓った騎士の勤めと言うものだろがぁっ!!」
老婆は怒鳴ると、口から入れ歯がポロリと落ちた。それをすかさず手のひらの上でキャッチした。とれた入れ歯を口の中に戻すと、老婆は話を続けた。
「よいかアレンよ! 姫様が右と言えば、右に従うのじゃ! そして左と言えば左に従うのじゃ! よいな!? それが出来ないのであれば、姫様への忠誠心はその程度だと言うことだぞ!」
ガルシアの気迫のこもった言葉にアレンは圧倒された。
「――わかりました。では、一緒に参りましょう!」
「いいの……!?」
「ええ、もちろんです。さあ、私のお手にお掴まり下さい」
アレンは彼女に向かって手を差し伸べると、そのまま自分の前へと乗せた。
「姫様、良かったですな……!」
「ええ、ありがとうガルシア!」
彼女は嬉しそうな顔で婆やに笑った。アレンはミリアリアを前に乗せると、手綱を引いた。
「では姫様、一緒に参りましょう」
「ええ、そうね!」
「馬を走らせるので、しっかりと私に掴まっ――」
「もう掴まってしまったわ……」
ミリアリアはアレンの首に両手を回すと、しっかりと掴まった。彼を見つめる瞳は恋する少女の瞳だった。彼女の目には彼しか映らなかった。幼かった少女が自分に見せてくる特別な顔にアレンは戸惑いつつも、胸の奥がときめいた。
「では、しっかりと私に掴まって下さい――! さあ、ジークフリード走れ!」
アレンは手綱を引いて合図を送ると、馬は颯爽と駆け出した。パレードの中を黒い馬が先頭を目指して走った。人々は彼らに気がつくと一斉に目を向けた。
「あっ、あれはもしかして姫様か……!? おお、姫様だ!! 姫様が異国の地から3年ぶりにお戻りになられたのか!? これは両方ともめでたいぞ! 姫様お帰りなさーい!」
人々は王女の姿を目で追うと大勢が彼女に手を振った。彼らの絶え間ない愛に少女は嬉しくなって手を振りかえした。
「みんなただいま、ありがとう!」
少女は3年間、自国を離れて異国の地で学生として暮らしていた。その姫君が再びこの国に舞い戻ったことを知り。民は彼女を温かく出迎えたのだった。歓声が上がる中で彼女は感動するとウッすらと涙を浮かべた。
「これでは貴方達の凱旋パレードが台無しになってしまったわね……。本当は帰って来たことをあとで彼らに伝えるはずだったのよ。だって貴方達の帰還の方が彼らにとって、大事なはずでしょ…――?」
ミリアリアが傍で話すと、アレンは彼女の方を見て答えた。
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