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へっと笑って言い切る叔父さんに俺はそれ以上何も言えず。ただ、何故だか優馬さんがこれでもかってほど叔父さんを睨んでいたのが印象的でした、まる。
「そういやお前さ」
「え?」
隣で嫉妬の炎で燃えている優馬さんをよそに、斗真がポンポンと人差し指で肩を叩いてくる。
「どっかで見た事あんだけど、俺ら初対面だよな」
「そのはず……ですけど」
そう返せば斗真はおかしいなぁと首を傾げる。どっかで見た事あるんだけどなぁ、うーん? あれぇ? と暫し悩んだ後。現実に帰還したらしい優馬さんが「ほらあの子だよ」と会話に加わってくる。
「海都さんの公演。貴さんに連れてってもらった時にこの子出てたじゃない」
「どれだよ」
「斗真が可愛いって騒いで貴さんにやかましいってどつかれた時の」
「お前嫌な覚え方してんな……。ん? でもあの時奴?」
はて? と更に首を傾げながら俺をじーっと見つめてくる。
じー、じー、じー。
「あ、あの……ちょっと近いんじゃ……?」
身を乗り出し顔を近付けて見てくる斗真を遮る様に眼前に両手を挙げる。それでも彼は俺を見たまま。
やや間があって。
「あーっ! お前あの時の可愛子ちゃん!?」
辺りの空気がビリビリとする程の大きな声でそう叫ばれ、その大きさに驚いてビクリと肩を揺らす。
「ほら、優馬あの時の女の子だろこの子。黄色の着物着てたあの子!」
興奮した様に満面の笑みであの子だよあの子! と騒ぐ斗真に、優馬さんは「だからさっきから言ってるじゃない。話聞いてる?」と冷静だ。
というか今なんて言った? あの時の“女の子”?
「いやぁまさかこんなとこで会えるとは。運命だな、うん。あの時は化粧してたし遠目だったから気が付かなかったぜ。う〜ん、スッピンもこれまた俺好み。激カワ!」
「はぁ? あの、ちょっと?」
な、なんだよいきなり態度が……。
「で、なんだっけ。雛結ちゃんだっけ名前。可愛い名前だよな。本名?」
ニコニコとさっきとは明らか違う態度で接してくる斗真に困惑。
「雛結は舞台名です……けど」
「あ、そうなんだ。本名は? あ、俺高槻斗真。よろしくね」
いや、既に知ってますけど。さっき自己紹介したじゃないか。
「本名は……立花鷹です」
「立花鷹! へぇそうなんだ可愛いってかカッコイイ名前だな。鷹ね、鷹」
ニコニコ。ニコニコ。満面の笑顔。まるでさっきまでの会話はなかったかの様にここになんでいるの? あ、そっかここに所属してんだなとか、貴文さん優しいだろ? あ、俺あの人に今日会いに来たんだけどさーとか一人会話を続ける。
初めこそは「あの」とか「いや、だから」だとか返答をしようとしたけれど、ペラペラと一人で話す斗真に疲れて最終「はあ」とか「そうなんですか」という相槌に変えた。
気が付けばちゃっかり俺の隣に座って肩に腕を回す形に収まった彼にそろそろ嫌気が差してきたころ。
「美月ぃ腹へったー……」
カチャリ、と事務所と廊下を繋ぐドアのノブが鳴る。キィーッと年期の入った音をたて扉が開かれ現れた彼に、今度は優馬さんが満面の笑顔になる。
「貴さん!」
黄色い悲鳴に近い声をあげながらガタリと立ち上がり、頭をボリボリとかきながら眠気眼の貴文さんにガバリと抱き着いた。
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