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白朝
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目が覚めると、仲影の顔が隣にある。起き上がろうとすると、腰と手に痛みがはしった。腰の痛みは鈍いもので、手の痛みは赤く擦れたせいかひりひりする。くるりと室内を見渡せば、机の上に無造作に解かれた縄がある。
しかし、仲影は一体どこからあんなものを持ってきたのか。
手を戒められて、独占欲を剥きだしにした荒々しい交接だった。遠慮しない仲影というのが新鮮で、私も感化されてしまったのかずっと快楽に翻弄されていた。隣で安らかに眠る仲影のその穏やかな寝顔にふ、と笑みが零れる。魔王と呼ばれるこの人の激しい気性も、横で安らかに眠る寝顔も私のものだと思うと、とてもうれしくなる。これが独占欲というものなのだろうか。
不意に手が伸びてきて、手首を掴まれた。そのまままた掛布の中に引きずり込まれる。全身を仲影の体温で包まれた。手首をしげしげと眺めた仲影は苦笑する。
「昨日は少し、やりすぎてしまったかな。……すまない。痛いかい?」
「少し……ひりひりします」
手首を労わるように舐められて、背筋をぞわりとするものがはしる。
「私は、仲影のものですよね?」
「ああ、勿論だよ」
無性に確認したくなって尋ねれば、求めた答えを返してくれた。嬉しくなって仲影に擦り寄ると、目を細めて優しく頭を撫でてくれる。
寝台の中では、恋人でありたい。我儘だというのは分かっているが、仲影の隣に並んでいられる男になるために、色々な学問を学ぶことの許しを乞うた。
「薬学と医学を学ぶといい。救うことが出来るなら、命を絶つことも出来る。薬は同時に毒を、医術は人体の急所を学ぶのだからね。君は華奢で、戦士には向いていないのだから、いかにして最小限で相手を倒すかを学ぶべきだ。それが君自身を、ひいては私を守ることになる」
思った以上にあっさりと、仲影はそれを許可してくれた。そして提示されたものは人の生死を握る学問だった。私が隣に立つ男になろうとしていることを、きちんと認めてくれていることがとても嬉しい。
「学ぶなら極めることを目指しなさい。私も最高の学者を用意しよう」
「はい……!」
「でもね、伯岐」
「はい?」
「普段できなくとも、せめて寝台の上では恋人であって欲しい。甘えて欲しい。わがままも言って欲しい。あと、詩人であることを捨てないで欲しい。……守れるね?」
私が頷くと、仲影は満足そうに笑った。頭をなで続けるその大きな手に擦り寄ると、仲影の笑みが深くなった。
結局その日は丸一日、寝台で何をするでもなく二人抱き合って過ごした。ただそれだけなのに、多幸感につつまれてずっとそうしていたくなる。
「君はまだ蕾の牡丹の花だ。いずれ大きな花を咲かせてくれる。……私の腕の中ではなく隣なんだ、君の咲き誇るべき場所は」
「私が花ならば、仲影は何なのでしょう」
「ただの花を愛でる男だよ。君の咲くべき場所を見極め美しく咲くようにする庭師だ」
「庭師のために咲く花ではありません」
「庭師は副業さ。君が隣で咲くに相応しい男で有り続けるよ、私は」
……本当に、この人はどうしてこうも私の欲しい言葉をくれるのだろうか。
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