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素顔2
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『そんなに俺のことが邪魔なら、どうして俺を追い出してくれないの?』
ーーー限界だった。例え相手に借りをつくることになるとわかっていても、そう縋らずにはいられないほどに。
『まだ自分で稼げないような学生に一人暮らしなんてさせたら、まるで私が悪いみたいじゃない』
ああ、こんな時でさえ、貴方の頭には自分の体裁しかないんだねーーー。
「結生さん!結生さん!」
強く肩を叩かれてはっとする。
顔を覗き込んでくる響との距離がやけに近い。ここは一体…
「起きてください、着きましたよ」
にっこりと笑いかけてくる響に結生は一、二秒頭を巡らせたのち、自分の状況を把握して飛び起きた。
そう、彼らは今、顧問である敦賀の運転によって待ち合わせ場所のレストランまで車で移動中だったのだ。が、どうやらその間に眠ってしまったらしく、目的地に着いたため隣に座っていた響が起こしてくれた、というわけらしい。
「す、すみません!寝るつもりはなかったんですけど、いつの間にか寝ちゃってたみたいで…」
「気ぃ使わなくていいっての。俺たちなんか前回仕事で役所まで行ったとき、誰一人まともに起きて乗ってるやついなかったしな」
「そうそ、みんな遠慮の欠片もなく寝てたからね」
「お前らはもう少し気を使うってことを覚えろってんだ、あほ」
慌てて謝った結生を笑ってフォローしてくれる蓮と渚に、それに拳骨を落とす敦賀。そのやりとりを見て、思わず表情が弛む。
「ほら、お前も何ぼけっとした顔してんだ。行くぞ」
ぽん、と敦賀が肩を叩いて通り過ぎる。
(怒らなかった…?)
てっきり彼のことだから、人に運転させておいて寝るとはいいご身分だなくらいの嫌味は言われると思って、身構えていたのに。
(俺が思っているより、付き合いやすい人なのかもしれない…)
思えば確かに、きつい言葉を吐かれたのはあの自己紹介の時だけで、それ以降は特に親しく話すわけではないものの、普通に接してくれていた…気がする。
(馬鹿だな、なんであんなに身構えてたんだろ俺)
そう思うと何だか気が軽くなり、結生は先ほどの悪夢なんて忘れて先を行く敦賀や渚たちを追いかけた。
* * *
「というわけで、俺が会長の御堂渚。よろしく」
明るいファミリーレストランの中での打ち合わせは、渚のその一声をきっかけに互いの自己紹介から始まった。
「なんや、おたくの生徒会、えらいべっぴんさんばっかりやんけ」
「君は黙っていろ芳士。うちの会長が不躾なことを言ってすまないな。僕は副会長の三條建。こっちが会長の須田芳士だ」
「へいへい、まあそういうこっちゃ。よろしゅう」
ちなみに成徳学園も男子校なため、役員は全員男子であるのだが。
「失礼だけど、そちらのほかの役員は?」
「ああ、悪い悪い、俺らんとこはお宅と違って色々治安悪いからな、会計と書記は今そっちの回収にまわってるんや。それが終わり次第こっち向かうようゆうてるさかい、堪忍な」
渚の質問にウインクを繰り出しながらそう答えた芳士に、隣に座っていた響がもの凄く嫌そうな顔をした気がするが、誰も気付いていないらしく。唖然としている蓮や渚にふふんと怪しげな笑みを浮かべていた芳士は、軽くあたりを見回してはっと声をあげた。
「そういや金城は?」
金城と言うのは成徳の生徒会顧問である。
「金城先生なら敦賀先生と話があるって、さっき店を出ていったけど」
「なんや、俺らだけに仕事させて自分らは楽しくおしゃべりかい」
「芳士、君はしばらく黙ってろ。とにかく、先に僕たちで進められる案件だけでも進めておこう。僕たちはだらだらおしゃべりするために集まったわけじゃないだろう?」
渚の答えを聞いて、あからさまにむっとなる芳士。そしてそれを咎める建。どうやらこの二人も、渚と蓮の仲同様、あまり仲良くはないらしい。
(会長と副会長って、どこでもこんな感じなのかな)
騒がしいのはあまり好きではなかったはず、だけれど。
(この人たちとなら…うまくやれるかもしれない)
そんな気持ちになれたとき、不意に結生のポケットで携帯が自己主張をし始めた。
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