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花火
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辺りはすっかり暗くなり馨達が学校に戻ると校庭の方から様々な色の光と楽しい声が聞こえてきた
2人で顔を見合わせ声のする方へ向かうと生徒達が楽しそうに手持ち花火をやっている
「あ!棗達来た〜!」
スマホを構えて皆を撮影している1人がこちらに気づき大声を上げ手を振ってこちらに来るよう催促する
そしてその声に反応した他の生徒達も馨達の方を向き歓声を上げた
「棗おせーぞ!」
サッカー部の部員達がやってきた棗を即座に囲み、もみくちゃにする
その様子をただただ見つめることしか出来ない馨
「お前ら!やめっ、あっちぃ!」
じゃれあう男子達を見ては呆れる女子達が馨を小さく手招きし、一緒に花火をしようと誘ってくれる
「男子達ってなんであーなんだろうね」
「まー、みんな棗は大好きだからしょうがないね~」
手持ち花火を渡され、着火した花火の光を見ながら女子達の会話を聞いて自分も一応男子なのだがと思いながらも苦笑
花火に火をつけてはそれを持っては足早に逃げる者、それを追いかける者、スマホでそれを撮影しては笑っている者
そんなじゃれあいを見つめては1人が呟く
「でもさ、あの中でマジで棗のこと好きな奴とかいたらどーする?」
その言葉にその場が静まりかえる
「……うちの男子が棗のことを?」
「うん。そしたらあたしのライバルなんだけどさ~」
「え〜!何その急展開!!夏のせいにしてぶちまけるってか~」
「棗がβで良かったね~」
花火の光が消え辺りが一瞬だけ暗くなる
馨はその話を黙って聞くことにした
下手に話せば嫌な思いをするのは自分だとわかってるから
「お前達、大声で話す内容じゃないからな」
新しい花火がつくと同時に後ろから声がし、女子達が後ろを振り返るとそこには火消しのバケツを持った担任の佐々木と一緒に鷹司が追加の花火を持って立っていた
「あ、ささきっちじゃん。ささきっちってβ?」
問いかける女生徒に佐々木は勿論だと言いバケツを蝋燭の横に置く
「ささきっちは好きな人いる?」
「どうかな?」
彼女達の質問に困ったように笑い誤魔化す佐々木は黒だと思われ女子達にあっという間に詰め寄られてしまう
「言え〜!」
「アドバイスしてあげるよ~!」
花火を持った女子高生数名に教師が追いかけ回されるというカオスな状況に馨はついていけずその場で座り、ただ黙ってその様子を見つめることしか出来ない
(どういう状況なのさ…)
各々が広い校庭で散り散りになって楽しんでおり馨と鷹司だけがその場に残ってしまった
また2人きりだ…
気まずい空気の中、鷹司が花火セットの中から線香花火を取り出し馨に渡す
「とりあえず花火しとけ、そのうちみんな戻ってくる」
馨は仕方なくそれを受け取り火をつけ、ぱちぱちと弾ける小さな火花をじっと見つめる
鷹司もする事がないからか同じ様に花火に火をつけ馨の横にしゃがんでは火花を黙って見つめだす
「俺もお前もβだったらとっくに幸せだったのかもしれないな」
「……そうですね」
2人の持っている花火の火花が強くなり、手の僅かな揺れで火の玉が地面へと落ちてしまい辺りがまた暗くなる
(あ…終わっちゃった……)
あの一瞬の煌めきが終わってしまうのが寂しくて馨は何度も線香花火に火をつけてはそれを眺めた
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