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頼まれ事
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「おーい、かがみん!これ企画部の佐藤部長に渡して来て欲しいんだけど、重要なものだから今週中に本社に送るよう言ってくれんか?」
「えーーーーーーー、……
(今やってる仕事あるしな…。あ、企画部って言ったらジヨンに会えんじゃん!よしっ!あー、でも仕事途中にしてたら分からなくなるよなぁ…。まぁいいか、栞はさんどけば大丈夫でしょー。) っと、…はい、大丈夫です。」
「?? 嫌なら別のやつに頼むけど…」
「え?俺やりますよ!」
「あ、…そう?なら頼むわ」
「了解ですっ」
こめかみ辺りにビシッと手を添えて敬礼の真似をした弥千代は先輩から封筒を受け取ると足軽に企画部へ向かった。
「かがみんって良く分からんヤツだよなぁ」
「あははっ!ありゃー、絶対B型だね」
「そうなん?」
弥千代がいなくなったそこで、先輩である二人が話し始める。
「俺の彼女もB型だから分かるんだけど、すぐ返事しないのはちゃんと考えてるからなんだよ。自分に出来ることなのか、後で「やっぱり出来ませんでした」は嫌なんだって」
「へぇーー、なんか意外。」
その頃の弥千代は廊下でスキップする勢いだ。
(思いがけずジヨンに会えるぜ〜♪ …ん?あ
、いや別に会えて嬉しいとかじゃないし。『ジャムの蓋事件』の仕返しに行けるってだけだし…あの長い足を引っ掛けて転ばせてやる)
途中訳の分からない言い訳を始め、なぜか足取りが重くなった弥千代。
しかし大事な封筒を渡さなくてはいけない使命があるので引き返すわけにもいかず、くだらない仕返しの方法を考えていた。
弥千代にとって『ジャムの蓋事件』は蓋を壊してしまったという事実ではなく、壊してしまったせいでジヨンに襲われたことを指す。
「…っと、ここか」
あれこれ考えているうちに企画部についてしまう。
変に緊張してきた弥千代はどうにも一歩入ることが出来なかった。
「あれ?ちよ、どうしたの?」
「っ!!ジヨンさん!」
「ぷっ、何で急にさん付け?」
ぼーっと突っ立ってると後ろから考えていた相手に声をかけられ、一瞬でパニックになった。
「あ、えと、なんだっけ…?えぇーと、あ、そうそう!コレ佐藤部長に渡してって頼まれて。」
「あ、そうなん?てかこの前久しぶりに会った時もなんか頼まれてたよね。雑用なの?」
「雑用って…違うわい!俺が一番下っ端だから仕方ないのー」
「ふぅ〜ん。(…それ雑用じゃね?)あ、じゃあソレ俺が渡して来ようか?」
「あ、それはいいよ。伝言もあるし」
「そっか。……じゃーな、ちよ」
「うん…」
ひらひらと手を振って踵を返し部署に戻っていくジヨンを見送ると、小学校の卒業式を思い出した。
「行かないで」って女の子達が泣いてるのに、ジヨンは「じゃーね」って手を振って帰って行った。
ちょうど今みたいに。
「ジヨン!」
「うん?…どうした?」
「いや、あの…」
ジヨンがまた何処かへ行ってしまいそうな気がして思わず引き止めてしまった。
これが最後じゃないって分かってるのに、会おうと思えばいつでも会えるのに、引き止められずにはいられなかった。
「ちよ?」
「あ、えっと……き、…今日うち、来る?」
「え?」
弥千代は自分でも何を言っているのか分からなくなってしまった。
「ぁ、嫌なら別にいいんだけど。この前のお礼まだちゃんとしてないし」
「行く!行く行く!!」
「そ、…そう」
「うん!じゃあ俺6時に終わるから待っててっ」
「うんっ」
この前は弥千代が泥酔してて親切に送ってくれただけだから、誘って来てくれるとは思ってなかった。
しかも親切にしてくれたのに汚物を吐いてしまう始末。
(いやぁ…我ながら酷いな。)
そして踏み出した足取りは浮いてしまいそうなほど軽かった。
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