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愛し愛される為に生まれてきたドール。そして、愛されなくなったドールは主人の手で殺されて元の姿に戻る。それが愛玩ドールの悲しき運命だった。 ピノは自分は過去に何回生まれて、何回死んだのかも思い出せなかった。ましてや自分を愛した主人達の顔さえも、ピノは思い出せなかった。でも僅かに胸の奥が傷むと、ピノはオーランドの言われた事実からは目を背くことは出来なかった。ピノは深い絶望感に苛まれると、胸の奥を激しく貫かれた思いに襲われたのだった。すっかり大人しくなると、オーランドはピノにあるものを見せた。
「きみに私がこの世で一番愛している子を紹介するよ。きみの隣に座っている子をみてごらんなさい」
ピノは隣に目を向けると、そこには黒いベールが被されていた人形が座っていた。その姿を目にするとピノは恐怖で震えた。そして、首を横にふって拒んだのだった。するとオーランドが人形に被されていたベールをとった。恐る恐る目をむけるとそこには、ブロンドの長い髪をした青いドレスと青いリボンを身につけたビスク・ドールが座っていた。彼女には感情はなく、瞳は虚ろだった。ただの人形なのに、まるで生きているかのように見えた。
「この子は私が集めてたき人形の中でも、もっとも綺麗な顔をした美しいドールだ。名前はメアリー。どうだい美しいだろ? きみには悪いが死んでもらう。そしてこの子の生まれ変わりとなり、私のメアリーとなって愛玩ドールとして、私だけを永遠に愛すのだ! 私はこの子に多くの愛を注いだ。だからきみはメアリーになって私に愛を返すのだ――!」
「やだやだやだ! 死にたくない! ボクはボクのままでいたいんだ! ボクはローゼフだけの愛玩ドールなんだ! 誰がおじさんの愛玩ドールに……!」
ピノがそう言って反抗すると、オーランドはいきなり両手で彼の首を絞めた。
「だまれ小僧……! 貴様に何がわかる……! 私はずっと人形偏愛者として長年生きてきた! それがどんなに辛くて悲しいことか貴様にはわかるまい! お前は私を助ける為に存在するのだ! 普通の愛を受け入れられなかったこれが、人形偏愛者の運命ならお前が私を救え!」
オーランドの狂気は果てしなく、憎しみと怒りと悲しみが絵の具のように混ざりあうようなそんな狂気だった。ピノは苦しくなってそこでジタバタすると、オーランドはハッと我に返り、首から両手を離した。
「フン……。私としたことが、あやうく小僧を殺すところだった。私が殺しては意味がない。アヤツが小僧を殺さなきゃ意味がないのだ……」
不意に独り言を呟くと、失神して気を失ったピノを自分の膝の上に乗せた。そして、馬車でどこかに走り去って行った――。
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