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「ゴホン。お取り込み中すいませんが、少しよろしいでしょうか? 貴方様に一つ、お聞きしたい事があります」
「何だ?」
「ローゼフ様、オーランド様とアーバンの件はどうなりましたでしょうか? 決着はついたのです?」
何も知らないパーカスは、心配そうな様子で彼に尋ねてきた。
「――私はですね。それが気になって気になって、昨日は朝まで眠れませんでした。それにお坊っちゃまの身に危険が迫っていることを考えると、ただ心配するばかりでした。なので私は貴方様が目を覚ましたら、その事を一番にお聞きしようと思っていた次第です」
パーカスは彼にその事を告げると頭を下げてお辞儀した。ローゼフは思い詰めたような表情で黙ると、フと窓辺に目を向けながら呟いた。
「――黒幕はアーバンだった。あいつは最低な男だった。欲にまみれ、尚且つ、自分の欲望を満たす為に彼は罪深き罪を犯した。孤独な彼の心にアーバンはつけこんで、オーランドを良いように利用したのだ。そして邪魔になったらあいつは銃で彼を撃ち殺した。今考えるとまるで悪魔のような男だ。あれがあいつの化けの皮の正体だと思うと、ゾッとする……!」
ローゼフはあの時の事をおもいだすと、怒りと憎しみが込み上がった。
「あいつは最後、時計台の塔から身を投げて死んだのだ。自分が犯した罪を償わずにな……! あざとく卑怯な男だ…――!」
「そ、そうでしたか……」
「ああ……!」
彼に真実を話すと黙って下を俯いた。パーカスは胸の中のモヤモヤが晴れると、安心した表情を浮かべた。
「――では、美味しい紅茶を淹れましょう! ローゼフ様はダージリン・ティーがお好きでしたよね?」
「ああ、頼むよ」
「紅茶の他にお菓子は如何でしょうか? 苺のシャルロット・ケーキもご用意致します」
パーカスはニコッと笑うと、お辞儀をして彼の部屋から出て行こうとした。
「待てパーカス……!」
「はい、なんでしょうか?」
ローゼフはベッドの上から彼を呼び止めた。パーカスは振り向くと足早に戻って来た。そして彼の側に佇んだ。
「その……私は一体、どうやって自分の屋敷に戻って来たのだ?」
ローゼフは、いつの間にか屋敷に戻っていたことに困惑している様子だった。彼が何気なく尋ねると、パーカスは有りのままの事実を伝えた。
「貴方様は屋敷の門の前で、ピノを両腕に抱きかえたまま倒れていました」
パーカスはそう答えると首を傾げた。
「そうか、不思議なこともあるんだな…――」
「覚えていらっしゃらないのですか?」
「ああ……」
ローゼフは頷くと傍にいたピノに目を向けた。目を向けると、不意にある事を思い出した。
「そうだ……! そう言えばお前、背中の刺し傷はどうした……!?」
彼が心配そうな顔で尋ねるとピノは素直に答えた。
「う~ん、よくわかんない。気がついたら背中の傷が消えてたの」
ピノは服を捲ると背中の傷を彼に見せた。
「さ、刺し傷がない……!?」
彼は信じがたい状況に驚くと口を閉ざして考え込んだ。そして、しばらく黙ると彼はピノに話しかけた。
「やはりな…――」
「ローゼフ?」
「やはりあの声は……」
「ローゼフの知っている人?」
ピノはキョトンとした顔で首を傾げると、彼の顔を覗き込んだ。
「いいや、違う。でもきっとあの声はきみのお父さんの声かもしれない…――」
彼の思いがけない言葉にピノは驚くとそこで唖然となった。
「ボ、ボクのお父さん……!?」
ピノは瞳を大きくさせると驚いた声を上げた。
「ああ、そうだ。きみを作った人なら、きみを直せるからな……」
「そうか、ボクのお父さんかぁ……」
ピノは彼の話しにまだ信じられない様子だった。
「ああ、そうだよピノ。きみはお父さんに愛されて生まれてきたんだ…――」
「ローゼフ……!」
ピノは顔をパァッと明るくさせると、急に嬉しくなって彼に飛びついた。そして、嬉しそうにはしゃぐとローゼフの頬にキスをした。
「ボクがもう一度ローゼフに会えたのも、お父さんの力なんだね?」
「ああそうだとも……!」
ローゼフは喜ぶピノの姿に微笑みを浮かべると、そっと髪に触れて愛を囁いた。
「ピノ、愛してる……。お前は私だけの愛しい人形だ。そしてお前は私を心から幸せな気持ちにさせてくれる可愛い天使だ。どうかこれからもずっと、私のそばにいてくれ…――」
ローゼフはピノの顔をジッと見つめると、有りのままの素直な気持ちを伝えた。
「うん、ボクずっとローゼフのそばにいるよ! 大好きローゼフ…――!」
ピノはそう言って返事をすると、彼に無邪気に甘えてなついてきた。
「こら、やめなさいピノ!」
「やだやだやだ~! もっとギューってくっつきたい! じゃあ、抱っこして?」
「まったくお前は…――」
2人は仲良く寄り添うと楽しそうな会話をしたのだった。かつてその昔、この街に幼い頃に両親を亡くして天涯孤独になった少年がいた。そんな孤独な彼が愛したのは、骨董品でみつけた愛玩ドールと呼ばれる不思議な生きた人形だった。彼は小高い丘に建てられた大きな屋敷で、小さな少年といつまでも幸せに暮らしたのだった。
―END―
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