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ローゼフは今まで感じたこともないような怒りに囚われると、ピノの服の切れ端を強く握りしめて怒りに震えた。
「私の勘が正しければ、ピノを拐ったのはオーランドだ! オーランドは人形偏愛者だ! それに舞踏会の時、あいつはピノに興味を抱いていた……! それにピノが拐われたのなら、なおさら奴が怪しい……!」
「しかしローゼフ様、確固たる証拠がありません……! 証拠がなければ、あとあと我々がフリになります! それに彼は名家の生まれで、名高い貴族であられます! 下手に騒げば大変なことになるでしょう……!」
「うるさいぞパーカス! 私にはわかるのだ……! ピノは間違いなく、あいつに連れ拐われたのだ!」
ローゼフはパーカスにそう言って言い返すと強く主張した。
「いいか、今すぐオーランドの家に使いの者を向かわせろ! 彼が屋敷にいるのか確めるのだ!」
彼が命令をするとパーカスはやむを得ず頷いた。
「わかりましたローゼフ様。では、オーランド公爵の屋敷に使いの者を向かわせます……!」
パーカスは彼の命令に従うと、足早に寝室から出て行った。ローゼフはベッドから出ると、窓辺で2人のことを思った。
「くっ、オーランドめっ!! この私から大事なドールを奪うとは決して許さんぞ……! あれは私のだ! ピノは絶対に渡さないぞお前には…――!」
彼は怒りを込み上げると感情を剥き出したまま、拳で硝子を叩き割った。彼への怒りと憎しみは深く、ピノが連れ拐われたことによってローゼフは激しい怒りに燃え上がった。そして、暫くして使いの者がオーランドの屋敷から戻ってきた。使いの者がメイドに尋ねると一昨日から留守のことが判明した。それを直ぐ様、パーカスに報告した。
「な、なんと……! やはりそうであったか…――!」
パーカスはその報告を受けると、慌てて彼の部屋に舞い戻った。
「ローゼフ様、やはり貴方様の言うとおりでした! どうやらオーランド公爵は一昨日から屋敷に戻っていないそうです!」
「くっ、やはりそうだったか……!」
「さらに彼の情報を集めていたところ、どうやらあのアーバンとも彼は関わり合いをもっていたようです……!」
ローゼフは2人が裏で繋がっていることを知ると、眉をひそめて険しい表情で呟いた。
「オーランドにアーバン……! やはりあの2人は、裏で共謀していたか…――!?」
激しい怒りにうち震えて話すと、パーカスはその様子に驚いた。
「ローゼフ様……!?」
「アーバンがピノの事をオーランドに話したなら、今までのことが辻褄があう……! 舞踏会とは表向きで、本当はピノを確めるために呼んだのだ!」
彼はそう言って話すと親指の爪を噛んで酷く悔しがった。
「ではローゼフ様、最初からあの方の企みに我々は踊らされていたと言うことですか!?」
「くっ、私はなぜ今まで気づかなかったのだ……! つ……! くそぉっ!!」
ローゼフはカッとなると、目の前にある花瓶をステッキで叩き割った。そして、自分の部屋から出て行った。彼は自身のコレクションルームに入ると、持っているステッキで飾っている花瓶を叩き割った。そして、怒りを爆発させるように手当たり次第に集めた骨董品を壊し始めた。
「アーバンのやつ、私を裏切ったな! 私に愛玩ドールを与えておきながらも、それを私から取り上げるとは……! よくもピノを……! 私のドールを返せぇーっ!!」
彼は裏切られた気持ちで一杯になると、物を壊して憂さ晴らしをした。それを見ていたパーカスも、彼の怒りに触れてはならないと黙ってそこに佇んだ。ローゼフは部屋中を荒らすと、不意に目の前にフォントボーの鏡に気がついた。そこに映っていたのは、怒りに染まっている自分の顔だった。彼はハッとして我に帰ると、酷い嫌悪感に襲われた。ピノを拐われたあまりに、彼は自分を見失っていたことにようやく気がついた。彼は持っているステッキを床に落とすと鏡の前に佇んだ。
「どうか頼む! 私に教えてくれフォントボーの鏡よ、ピノは今どこにいる……!? 頼むからあの時みたいに教えてくれ……!」
鏡に触れると切実に祈った。馬鹿げていると思うが、それに頼るしかなかった。前、鏡は彼にピノの居場所を教えてくれた。今回も居場所を自分に教えてくれるんじゃないかとわずかに期待した。でも、いくら祈っても鏡は応答しなかった。ローゼフはガックリと肩を落とすと、そこにしゃがみこんでため息をついた。
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