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ローゼフはピノの顔色に気がついた。
「どうしたピノ?」
「ロ、ローゼフ……!」
ピノは急に苦しそうな声で彼の名前を呼んだ。そして、全身の力が抜けたようにぐったりと彼に凭れてきた。ローゼフはハッとなると、ピノの背中に手を回した。すると銀のナイフが背中に刺さっていた。
「なっ、なんてことだ……!?」
慌ててピノを下に下ろすと背中から銀のナイフを抜き取った。ナイフを抜いた瞬間、背中からは赤い血が流れ出てきた。そして、あっとあっという間に地面は赤く染まった。信じられない光景にローゼフは激しく動揺した。
「ピノしっかりしろ……!」
彼は激しく動揺しながらも、ピノの名前を必死で呼んだ。体を揺すってもピノはまったく反応しなかった。両目は閉じており、口からは血を流していた。その光景はまるで壊れた人形のような姿だった。 ローゼフはその姿を目にすると、頭の中が急に真っ白になった。そして、大きなショックを受けると、彼はそこで言葉を失って呆然となった。血を流して地面に横たわる少年の傍で、ローゼフは震える手でピノの手を握ろうとした。
「一体これは何だと言うんだ……!? 命とは、こんなにも脆いのか……! 何故この子が……!」
ローゼフは冷たくなっていく手を握ると、酷い悲しみに襲われた。アーバンはピノに向かって銀のナイフを投げると、彼は可笑しそうに笑った。
「ハハハッ! ザマーミロ! 私が死ぬなら、お前も道連れだ!」
「アーバン貴様ぁぁああああっ!!」
ローゼフは激しい怒りに燃え上がった。
「フフフッ、そのナイフは只のナイフじゃないですよ……。愛玩ドールを殺す時に使われる物です。確かにマスター以外は愛玩ドールを殺すことが出来ません。しかし、その特赦な銀のナイフなら人形を殺す事は可能なんですよ……!」
「な、何だと!?」
アーバンを問い詰めようとして近づいた瞬間、彼は自ら最後を選んだ。流しながら立ち上がると、そのままヨロヨロと後ろに下がった。
「フハハッ……! いいきみだ……! 冥土の土産には丁度いい! これで貴方は、また一人ぼっちの逆戻りです! 私を死に追いやったんだ、それくらいの罰を与えなくてはね……!」
「アーバンッ!!」
「フフッ……。貴方のその絶望に打ちのめされた顔ときたら、滑稽過ぎて笑ってしまいそうです。そこのジジイと一緒に貴方も纏めて始末する予定でしたけど、まあ良いでしょう……。貴方は精々、誰もいなくなった世界で、この子の死に永遠に嘆くがいいです――」
アーバンは最後まで彼を罵ると、時計台の塔の隅まで歩き、そこで終わりを迎えようとした。ローゼフは怒りと憎しみに支配されながら彼の名前を叫んだ。
「待てアーバン!」
彼はそこで佇むと不意に呟いた。
「最後に良いことを教えてあげましょう、貴方のご両親は――」
アーバンはそこで呟くとフッと笑った。彼が制止したのも関わらず、アーバンは両手を広げると、時計台の塔の上から自ら身を投げて命を絶った。
「なんて最後まで卑怯な男なんだ! クソッ……!!」
ローゼフは怒りに拳を震わすと、自分の唇を噛み締めながら悔しさを込み上げた。ピノは息絶え絶えになりながら彼の名前を呼んだ。ローゼフはハッとなると急いで傍に駆け寄った。
「ピノ大丈夫か……!?」
「ハァハァ……ロ、ローゼフ……もう終わったの……?」
「ああ、終わった。終わったとも…――」
彼は悲しげな表情でそう話した。
「そう……よかった――」
ピノは横たわった地面の上でホッと安心した顔を見せた。
「さあ、帰ろう……。一緒に……」
ローゼフは胸の奥が押し潰されるほどの酷い悲しみに襲われると、そこで言葉を詰まらせて沈黙した。どうみても助からないのは一目瞭然だった。地面には、少年が流した血が流れ出ていた。どうすることも出来ない無力な自分に、彼はただ溢れる涙を堪えることしか出来なかった。ローゼフは心配させないように気丈に振る舞うと、両手でピノを抱き上げようとした。するとピノは彼の腕の袖口を掴んだ。
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