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出逢い1~sideまさと~
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おれが、亮への想いを捨てきれず、悩んでいた、そんな頃だった。
あの、どう考えてもおれの好みからかけ離れた、あの男に出逢ったのは。
*****
「あらぁ、まーくん、いらっしゃあい」
落ち着いた雰囲気のドアを開けると、迎えてくれたのは、甘ったるい声と恥ずかしい呼び名だった。
「いい加減、その呼び方やめろって何度も言ってるだろ。“オフクロ”」
わざと、こちらもいやがる呼び方で呼ぶ。案の定、カウンターの向こうで身をくねらせて嫌がる。
「やだぁ、ママって呼んでよお」
確かに見た目はママだ。綺麗に結った日本髪に、着物。どこからどう見てもスナックのママだ。店の客からはママさんと呼ばれているのは知っているが、自分にとっては“オフクロ”なのだから仕方がない。
「うるせ、親父のくせに」
一言ぼやいてやると、おしぼりが飛んできた。ちょっと言い過ぎたかもしれないが、目の前の和風美人にも見えなくもない中年は、俺の戸籍上の父親だ、間違ったことは言っていない。
この店の客のほとんどは、“オフクロ”が元男だと知っているのだろう。
俺ではなく、“オフクロ”を質問攻めにしている。
「うそー、じゃあ、この子がウワサの息子さん?」
「えー、ママと似てないよ~!ホントに血繋がってるのぉ?男前じゃん!」
さりげなく、自分が貶されているにも関わらず、おれを誉められると嬉しいらしい。
「自慢の息子よぉ~」
と、その意外とたくましい胸筋に抱きしめられた。
しばらく、うるさいほどの騒ぎだったが、おれに飽きた連中が各々席にバラけていって、静かに飲み始めた頃、ようやくオフクロがおれの隣に座ってきた。
「で?なんかあったんでしょ?」
さすがオフクロ。おれのことなら、お見通しだ。
「いや、ちょっとさ、オヤジに話聞いてもらおうかなって思ってさ」
“オヤジ”は、オフクロのパートナーである、高城雄介さんの愛称だ。
おれは、オヤジを尊敬している。
「ゆうさんなら、奥にいるわよ」
店の奥を示される。
オフクロの店は自宅も兼ねていて、店の奥の部屋は、オヤジの仕事部屋にもなっていた。
「オヤジー、入るよ」
一応、声をかけてから入る。
仕事に集中していると、周りの声が聞こえなくなる人だが、礼儀にはうるさい。おれが変なところで真面目だと周りから言われるのは、この人の影響だろう。
四畳半の部屋の中は、書類や本が散乱している。いつものことだ。
その書類に埋もれるようにこの部屋の主が座っていた。大量の吸い殻が盛られた灰皿を携えて、ノートパソコンの画面を親の仇のように睨み付けている。
「おう、まさとか」
「なんだ、オヤジ煮詰まってんのか」
オヤジが多量にタバコを吸うときは大抵煮詰まっているときだ。
「まあな、今回は売春潜入レポなんだけどな、実際は潜入してないんだから書けるわけないんだよな」
ぼりぼりとボサボサの髪の毛を掻く。
「んで?なんかあったんだろ?」
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