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同僚2
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結局、おれが一人イライラとして仕事をしていただけで、特に問題もなくその日の夜間帯のバイトは終了する。
いつもなら、まっすぐ家に帰るか、そのまま他のバイトに向かうかのどちらかなのだが、今日は違った。
駅前の24時間営業のカフェにいるのだ。しかも夜間帯のシフトの三人で。
誘ってきたのは、バイトの女子からだった。
『鈴木さんにどっかでお茶しようって言われて断れなくて・・・一緒に来てもらえませんか?』と涙目で言われれば、断れなかった。
産みの親と育ての親に、女には優しくしろと幼い頃から躾られてきた。そのおかげでゲイではあるが女にはどこか甘くなる。それがこんなところで裏目に出るとは。
確かに彼女の気持ちもわかる。鈴木に誘われてのこのこ一人で行けば、どうなるかなんて目に見えている。かといってこの少し気の弱そうな女には、鈴木の誘いをピシャッと断ることが出来なかったのだろう。
鈴木は何を勘違いしたのかにやにやとおれの方を窺っているし、笠原と言う名前だったはずのバイト女子は、おれにすがり付くようにピタッとそばにくっついている。
早く帰らせてくれよ。夕方からは体力を使うバイトが入っている。昼過ぎまでは、体を休めたかった。どうでもいいような会話、というよりも鈴木の独演のような話が続く。苦痛でたまらなかった。
笠原がトイレに行くと、途端ににやにや笑いを深くした鈴木が、おれににじり寄ってくる。
「八嶋さぁん、なんだよ、かえでチャン狙ってんのかよ~、言ってくれよ~。ヤバイヤバイ、もうちょっとで八嶋さんとキョウダイになるとこじゃん」
かえで、というのが笠原の下の名前だということはわかった。だが、それ以上は理解するというより、耳にすら入れたくない。
ゲスな奴だとは思っていたが、この最低さは亮のアホ元彼氏より上かもな。そこまで考えて、亮のことも思い出してしまって、場所も考えず胸が苦しくなる。
亮に会いてーな。
その後、気を利かせたらしい鈴木が急に帰ったことで、ようやく訳のわからない会合は終わりを迎えた。
これで帰れる、と思ったら、何故か笠原に引き留められた。
「あの、八嶋さんのこと、好きなんです。付き合っている人いないなら、私と付き合ってくださいっ!」
こういう時が、一番こたえる。
女だから、断る。おれにとっては当たり前のことだけど、それは世間では異端で、断るにしてもその理由を明らかにすることはできないから。
嘘の理由で、真剣な想いを踏みにじるのは、正直ツラかった。
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