アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
暴虐4
-
感情が爆発すると、人間思わぬ力が出るものらしい。
俺は体を押さえつけていた隼人の腕を振り払い、髪の毛を掴んでいた手を引き裂くくらいのつもりで引っ掻いてはね除けて、事態を把握していない二人の男を尻目に、トイレを飛び出していた。
まだ、髪の毛に絡まっていた隼人の指が、俺を掴もうと髪を握りしめてきた。ぶちぶちッと髪がちぎれ、抜ける音がして頭皮に痛みが走ったが、そんなことお構いなしで遁走する。
逃げたい、と強く思ったわけではなかった。
ただ、あのままトイレから連れ出され、隼人のところで繋がれる運命なんてごめんだ、その思いだけで走り出していた。
───冗談じゃない、誰があんな奴に飼われるかよっ、俺は誰かに束縛なんて真っ平ごめんだっ!
だけど、激情に駆られるままに動いた俺の自由は儚く消える運命だったようだ。
トイレから5メートルも離れない内に、唯一身に纏っていたTシャツの裾を掴まれ、引きずり倒される。
さっきトイレの床に叩きつけれた時より激しい痛みが俺を襲った。
地面と擦れて皮膚が破れ、そこが熱を持ったように痛む。
「あうッ」
そのまま引きずられてしまいそうになるのを必死で抵抗する。
地面に爪を立てて、足でもがいて。
俺を引きずるのを諦めたのか、抵抗する俺がムカついたのか、体が浮き上がるほどに蹴りあげられる。
「・・・ッ!」
カハッと息が漏れ、胸の辺りから変な軋むような音が体の中を駆け抜けた。
・・・そのあとは、ただ暴力の嵐に飲み込まれて、いく。
駆けつけたあとの二人からも、殴られ、蹴られ、罵られ。
「くそっ、足にザーメンついちまったじゃねーかよッ!」
「この腐れ淫売がッ!」
痛みも感じなくなり、意識がゆっくりと沈みかけ。
ただ、消えゆく意識の片隅に、落ち着いた低い声が響いた。
「・・・あんたら、そろそろ止めとけ。もう、警察には連絡したから」
かろうじて開いた右目で見えたのは、スマホの画面をヒラヒラと見せながら、近づいてくる一人の男だった。
多分、スマホの通話画面は110という数字が示されていたのだろう、三人が慌てる気配が俺にも伝わる。
「これですんだと思うなよ」
最後におまけと言わんばかりに背中を蹴られ、隼人が捨て台詞を吐いて去っていく。
それを見送った男が、ゆっくりと俺に近づいてきて。
警察はマズイ、見逃して・・・
そう言いたかった口は何も動かず、ただヒューヒューと息を吐いただけで終わった。
「お前・・・」
男が何か尋ねていたが、それ以上を耳に入れることはないまま、俺は意識を手放していた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
35 / 118