アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
覚醒4~sideまさと~
-
おれの狭い部屋を半分近く占拠しているのは、ミイラ男のように包帯まみれの青年。
名も知らぬ相手を部屋にあげることに抵抗を覚えなかったわけではなかったが、この状態でなにか悪さができるわけもない。
考えてみれば、一応名前は知っていたんだったな。じゅん、それが本名かはわからないが。
まぁ、もし何かあれば、あの田中とかいう気に食わない奴に責任を取ってもらえばいいか、と考えれば少しだけ溜飲の下がる思いがした。
炬燵を部屋の真ん中に置いて、じゅんの反対側に自分の布団を敷いて寝起きする。と言ってもおれの体ははほとんど炬燵の中だ。部屋が狭いのだから仕方ないが。
じゅんにはもちろん客用の布団だ。そういえば、あの布団には亮も寝たことあったっけ。そんな過去の記憶が蘇る。
眠りこけているじゅんの顔を見ていると、あの日の亮の様子と重なっていく。
それもそのはずだ。じゅんも眠っていたはずなのに、急に苦しげで悲しそうな今にも泣きそうな顔をしていた。亮のように泣かせたくない、咄嗟にそう思ってしまうと、体が勝手に動いていた。
「おい、大丈夫か?」
包帯のない手首をぐっと掴む。まるで引き寄せるかのように。勝手にそうしておきながら、その細さに思わず力が緩んだ。折れそうだ、と。
その刺激で覚醒したのか、じゅんはゆっくりと大きな瞳を開く。何か言いたげに口をモゴモゴとさせているが声がでないのだろう、とストローを口元に運んでやる。
一気に飲むのか、と思いきや、ほんの僅か口に含んだだけで終わってしまう。
掠れた声で自分の居場所とおれが誰なのか尋ねてくるじゅんに、おれのことを覚えてないのか、と何故か落胆してしまい、そんな自分に眉をひそめる。
おれは何を考えてるんだ、別にこいつがおれのことを覚えてようが覚えていまいが関係ないだろ。
自分のことなのに、わからない。
こんな感覚に戸惑うばかりだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
44 / 118