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平穏2
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食事が終わると、途端に暇になる。
この部屋には娯楽と呼べるものがない。
テレビもないし、雑誌とか漫画もない。
辛うじて置いてあるのは、料理本だけだが、あまりにも専門的過ぎて、読んでも全く面白くない。
ぼんやりとしていると、余計なことを考えそうになる。
気持ちが過去に囚われそうになって、慌てて用意されていた薬を飲んだ。
鎮痛剤が効いてくると、眠気が来るからだ。
眠ってしまえばなにも考えずにすむ・・・
「大丈夫か?」
男が顔を覗き込んでいる。
コイツ、誰だっけ・・・?
見たことあるんだけどな・・・
靄がかかっているような思考力が少しずつ、はっきりしてくる。
ああ、そうか、俺は隼人たちにヤられて、怪我してここにいるんだっけ。
そういえば、とようやく気がつく。
「あんたの名前なんてーの?」
俺がそう尋ねると、一瞬驚いたような顔をした男は、くしゃっと顔を歪めて笑った。初めて見る、その笑顔はなぜか俺をむず痒くさせた。
「やっと聞いたな」
その、人懐っこい笑顔のまま、俺の頭をくしゃりと撫でた。
髪洗ってねーから汚いのに・・・。なんとなく汚れた自分が恥ずかしくなる。
「野性動物手懐けるより難しそうだなって思ってたとこだ・・・おれは、“やしままさと”だ」
さらさらっと、殴り書きでメモに八嶋真聖、と書く男。当て字みたいな名前が似合わなくて、思わず笑いそうになって、慌てて顔を引き締める。そんな俺の様子は完全にバレバレだったらしい。
「別に笑っても気にしねーよ?むかしっからよく変な漢字とか似合わねーとか言われてたからなぁー。自分でも思うし」
ハハッと声に出して笑う。また、笑った・・・
釣られて笑うと、肋骨が痛くて、今度は本気で顔をしかめてしまう。
「お前の名前はじゅん、でいーのか?・・・おれが名前言ったからって、言いたくないことは言わなくていいからな?」
大丈夫かと心配された後に、続けてそんなことを言われると、本当に居心地が悪すぎる。
「じゅんでいいよ。本名だし」
別に名前を知られてもどうってことない。誰がつけたのかもわからない名前だ。貶められようが、悪用されようが傷つく人間もいない。
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