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異変1~sideじゅん~
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体の包帯がほとんど取れてから、一週間後の診察日。
毎回診察にはまさとがバイトの休みを取って付いてきてくれる。
初めのうちは確かに一人で出歩ける状態じゃなかったし、恐怖心もあったから甘えていたが、今は申し訳ない気持ちが強い。
迷惑、かけてるよな・・・
最初に自分が言ったことだが、改めて考えてもとてつもなく負担になっているはずだ、そう思う。
それなのに、まさとはそんなことを気にもしていない様子だ。バイトを休ませたことを詫びると、「おれも働きすぎだからちょーどいいんだよ」と笑うだけで、全く取り合ってくれない。
この分じゃ、出ていくときにお金渡しても受け取って貰えなさそうだな。
俺だって、常識がない訳じゃない。迷惑をかけた詫びと世話になった礼くらいはちゃんとするつもりだ。
だけど、バイトを掛け持ちして金を稼いでる割には、まさとは今のところ俺からの金を一切受け取ってはいない。もしかしたら、田中との間でその辺は決着のついた話なのかもしれなかったが、あの田中が俺のために金を出してるとはあまり思えない。治療費だって、立て替えてるだけで、また上乗せして請求されることだろうし。
心のどこかでは、出ていきたくない、という気持ちが芽生えはじめていた。あれほど居心地が悪いと思っていたのに。
まさとが作る料理はどれも本当に美味しかったし、まさとがバイトから帰ってきて一緒に食事をするのも、家族みたいな食卓は、経験したことのない温かさで、慣れてしまえば手離しがたいものでもあった。
でも、ダメ。
そんなものは、俺が望んじゃいけないものだ。
未練を振り切るように、目の前の白衣の先生に尋ねる。
「ねーえ、センセ?そろそろ俺って一人で生活しても大丈夫な感じ?」
「何かあった?」
「何もないから早く今までの生活に戻りたいなって」
小山先生は何かを感じ取ったのかもしれないが、何も言わなかった。
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