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異変3
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アパートに着くなり、まさとは台所に立って食事の準備を始める。
俺はそれを斜め後ろで眺めている。これは、体が動くようになってからの習慣だ。
特に何もすることがないこの部屋での俺の唯一の娯楽みたいなものだ。
まさとの武骨な手が繊細に動いて、あっという間に料理が完成する。その様子を見ているのが面白かったし、何度見ても飽きなかった。
「見てるくれーなら、お前もやってみりゃあいいのに」
まさとが懲りもせずそう言う。
「何度も言ってるじゃん。俺はまさとが作ってるとこ見てるだけでいーの!どうせ帰ったら絶対しないし」
軽く口を尖らせてそう言えば、まさとは不意に手を止めて、俺の方を真剣な目で見てきた。
その視線に少しだけ心臓が跳ねたけど、なんでもない素振りを見せる。
「ナニ?どしたのさ?」
「純・・・ずっと言おうと思ってたんだけどな?お前、もうちょっとここに住まないか?」
また、心臓が跳ねた。
追い出そうと言う気配は感じなかったが、まさとがそんなことを言い出すなんて思ってもいなかった。
「お前が嫌ならしかたねーけど、ま、考えてみてくれ」
あっさりとそれでその話は終わってしまう。
まさとは、また調理を再開し、俺の方なんかちらっとも見もしない。
俺一人が動揺している、そう感じた。振り回されてる。悔しい。
なんで、あんなこと言うんだよ?
残ってほしいならそう言えよ。
まさとにいいようにあしらわれたような気分がして、悔しくていつもなら最後まで見ているのに、そのまま背を向けて俺の定位置へと向かった。
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